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NXP、クルマ用ECU開発の共通化プラットフォームを提案

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NXP Semiconductorがクルマ用ECUの開発を容易にする新しいプラットフォームを提案した。これは、ハードウエアをできるだけ共通化し、ソフトウエアをリユースしやすい形で保存するという考え方に基づく。従来のツギハギだらけのクルマのECUのファブリックを階層構造に変えていく。低コストで機能追加に対応できる新しいクルマ向けアーキテクチャといえそうだ。

図1 NXP Semiconductor社Automotive Microcontrollers and Processors部門マーケティング&ディストリビューション担当副社長のRoss McOuat氏

図1 NXP Semiconductor社Automotive Microcontrollers and Processors部門マーケティング&ディストリビューション担当副社長のRoss McOuat氏


従来のクルマのECU(電子制御ユニット)は、機能が追加されるごとに設計し、ネットワークでつないでいくというツギハギ方式だった、と同社Automotive Microcontrollers and Processors部門マーケティング&ディストリビューション担当副社長のRoss McOuat氏(図1)は述べる。クルマは今後の自動運転に向けADAS系のレーダーやカメラに加えLIDARがセンサとして搭載され、センサデータを融合しさらに高度な判断を提供する。さらにインフォテインメント系や車両制御系なども改良が進む。機能が追加されても、ハードウエアをできる限り変えずに、ソフトウエアだけで対応したい。そのソフトウエアもできる限り再利用したい。NXPが提案した新しいアーキテクチャS32xは、クルマのECUとネットワークシステムを根本から見直したもの。

クルマの機能をまずいくつかのドメインに分けた(図2)。有線/無線のコネクティビティドメイン、自動運転向けのセンサを含むフュージョンドメイン、パワートレイン系のパワートレインドメイン、ボディ制御系のボディドメイン、そしてインフォテインメントドメインである。それぞれのドメインがその下にある複数のECUを制御する。それぞれのドメインにおいても共通部分と専用部分を持ち、しかも命令とデータをできる限り共有する。


図2 クルマの機能を5つのドメインに分けて考える 出典:NXP Semiconductor

図2 クルマの機能を5つのドメインに分けて考える 出典:NXP Semiconductor


こうするとティア1サプライヤやOEM(クルマメーカー)は、研究開発のリソースをアプリケーションに集中させることができるとMcOuat氏は言う。

具体的なハードウエアであるマイクロプロセッサ(MPU)やマイクロコントローラ(マイコン)をどのように設計するか。McOuat氏は図3のようなアーキテクチャを提案している。各マイコンやMPUでは、薄いブルーがすべての共通回路であり、濃いブルーの回路がカスタム化する回路である。それぞれの用途によってパワートレイン系のマイコンや、レーダー用のMPU、ビジョンMPUなどの回路を構成する。


図3 クルマの各マイコンやMPUは共通部分をできるだけ増やす 出典:NXP Semiconductor

図3 クルマの各マイコンやMPUは共通部分をできるだけ増やす 出典:NXP Semiconductor


できるだけ共通部分を利用することで開発の負荷を軽くし、コストを下げることができる。クルマ用のシステムでは特に機能安全レベルをASIL-Dに統一し、セキュリティエンジンを集積する。これらは共通の回路として、すべてのマイコンやMPUに集積する。しかも、今後のコネクテッドカーを想定し、無線通信を経由してソフトウエアを更新するOTA(Over-the -air)機能にも対応する。

この中でARM Compute ComplexはARMのCPUコアを使い分ける部分であり、MPUやマイコンによって異なる。また、各チップのアイランド(Island)は専用回路そのものである。一口にARMといっても安全性のなるリアルタイム動作にはCortex-Rシリーズ、マイコン用にはCortex-Mシリーズ、高性能化にはCortex-Aシリーズとさまざまあるが、異なるこれらを使う場合でもアーキテクチャの共通化を図るとしている。

このデザインで重要なカギを握る部分がコヒーレンシファブリックだ。ここでは共通となる命令やデータのコンシステンシ(矛盾がなく一貫していること)を揃えるコンシステンシファブリックと呼ぶ回路となる。ここで、各マイコンやMPUで使った命令やデータを共通化し、ソフトウエアのリユースを可能にする。追加のサブセットができれば拡張することになるとしている。

こういった考え方に立つと、ソフトウエア開発の労力は同じドメイン内なら90%削減され、ドメイン間でさえ40%削減されるとしている。このS32xアーキテクチャは、ドアの開閉制御から自動走行まで同じ開発キットを使うことになるため、開発効率は極めて高くなる。それでもソフトウエア開発のためのエコシステムは欠かせない。

(2017/10/17)

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