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レーダー/LIDAR、開発ツールでクルマの安全技術を磨くNXP

NXP Semiconductorsは、2015年12月にFreescale Semiconductorと合併し、クルマ用半導体メーカーのトップになったようだが、ADAS(先進ドライバ支援システム)をはじめとする安全技術の腕を磨いている。将来の自動運転車につながるからだ。特に、レーダー、V2X通信に続き、ハードウエア開発ツールBlueboxをこのほどデモした。

図1 切手サイズのレーダーシステム 出典:NXP Semiconductors

図1 切手サイズのレーダーシステム 出典:NXP Semiconductors


かつて、FreescaleはSiGeのレーダー用送信機を発表したが、NXP傘下に入り切手サイズのレーダーシステム(送受信機)を開発した(図1)。今、Googleがこのレーダーシステムを使ってフィールドテストをしている、と同社Automotive Sales & Marketing DivisionのDirectorであるKurt Sievers氏はいう。

Sievers氏は、クルマ向けのレーダーシステムには三つのトレンドがあると語る。一つはレーダーを搭載するクルマが増えること、もう一つはクルマ1台当たりのレーダー搭載数が増えること、三つ目は測距センサとしてジェスチャー制御などの新しい応用が登場すること、である。Googleが開発しているクルマにはレーダーシステムが搭載され、将来15〜20個が1台に搭載されると期待している。

レーダーシステムは大きく分けて、高周波の送受信機(トランシーバ)と、演算部からなる。送受信機は77GHzなど直進性の強いミリ波を発信し、その反射波を受信する。演算部ではミリ波パルスの時間的な遅れ(位相)から物体までの距離を計算する。Freescaleを合併させたNXPは、このトランシーバと演算するプロセッサを持っているため、このレーダー市場への期待は大きい。

クルマの安全には目に見えるレーダーシステムやカメラだけではなく、視界内にないクルマへの通知も必要となる。クルマから常に電波を発し、数十メートル先の横丁などからの飛び出してくるクルマにも知らせることで衝突を避けるV2Xシステムである。クルマ同士の通信ならV2V(vehicle to vehicle)で、クルマと交差点脇などの路上(X)との間の通信はV2Xとなる。NXPは802.11pというクルマ用のWi-Fi規格を使ってV2Xシステムの実験を行ってきた。最近では、Audiに搭載した実証試験でレイテンシが5ms以下だったことを確認している。

グーグルカーでは、常に近くの物体との距離を測定しながら走行するLIDARシステムを備えているが、ここでも周囲をスキャンしながらレーダーや赤外線レーザーからの反射をモニターしながら周辺との距離を演算する。カメラからの映像も人、クルマ、自転車などを検出し対象物を枠で囲むなどの可視化も行う。

また、クルマが車外と無線でつながるにつれ、サイバー攻撃を回避しなければならないが、クルマのセキュリティに関しても、NXPは自信を持つ。Sievers氏は、クルマでは4レイヤーのセキュリティが必要だという。車外との無線通信インタフェースをレベル1とすると、車内ゲートウェイではレベル2、さらに車内ネットワークをレベル3、プロセッシング部分をレベル4とする。最もセキュアにしているのが、レベル1だという。Bluetoothやイモビライザ、GSMなどのモバイルネットワークとのインタフェースのレベル1で最も強力なハードウエアセキュリティをかけている。ここでは、NXPがこれまでクレジットカードで培ってきたセキュリティ技術を活かし、登録しておいたデータの送り手かどうかは、チップレベルで認証している。


図2 ADASシステム開発ツールのBlueBox

図2 ADASシステム開発ツールのBlueBox


こういったセキュリティの演算が増えてくればクルマは、頭脳となるコンピュータも強力にする必要がある。このほどBlueBoxと呼ぶクルマ用の高性能コンピュータを開発(図2)、イーサネットやCAN、FlexRayなどの端子を備え、レーダーやLIDAR、カメラなどセンサからの情報を処理するセンサフュージョン(あるいはセンサハブ)だけではなく、アルゴリズムを演算・実行するコンピュータとしての役割も持つ。つまり、図3のようにセンサから、考え・計算する頭脳となるBlueBoxであり、このコンピュータがさらにインスツルメントクラスタに表示させるディスプレイドライバやエンジンやブレーキなどを駆動するアクチュエータを動かす。


図3 BlueBoxはカーコンピュータのように使える 出典:NXP Semiconductors

図3 BlueBoxはカーコンピュータのように使える 出典:NXP Semiconductors


ただし、クルマでは少しでも軽量化が求められるため、例えばEthernetケーブルはオフィスで使われるタイプではなく、ツイステッドペア(より対線)を使う米国のBroadcom社が推進するBroadR-Reachを使うことになるだろう。このコンピュータはこのままクルマに使うハードウエアではなく、このコンピュータを使って新しいECUを開発するためのハードウエア開発ツールと考えるべきである。性能は高く、消費電力が400W未満で性能は90,000 DMIPSと高い。また、コンピュータ部分には多数決ロジックを用いたフォールトトレラントな冗長構成を採用している。

BlueBoxは基本的に演算リッチなプロセッサLS2088Aを組み込みプロセッサボードと、機能安全規格ISO26262に完全準拠したS32V2ビジョンプロセッサのボードで出来ている。LS2088Aは、旧FreescleのQorIQシリーズの組み込み向けプロセッサで、ARM Cortex-A72の8コア構成にして2GHzで動作する高性能なプロセッサだ。また、S32V2プロセッサにはさまざまなセンサからのインタフェースを持ちセンサ信号処理を行うセンサフュージョン機能と、映像処理プロセッサを搭載している。CPUはARM Cortex-A53コアをベースにしているようだ。

このBlueBoxは米国で開催されたNXP FTF Technology Forumで公開された。サーバーと同様な筐体だが、実際のクルマに搭載される場合はEthernetも考慮して、もっと小さなECUになり、ビデオ伝送にはより対線のEthernetを使うことになろう。

(2016/05/26)

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