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モバイル用途で最大2mの測距チップ技術をIntersilが明らかに

米Intersilが発表した、ToF(Time of Flight)法を利用した測距センサの詳細を同社が明らかにした。ToFは基本的に光を対象物に当て、その反射してくる時間から距離を測定するという技術。モバイル用途に特化しながら、最大2mまでの距離を測定できる。このほどその内容を明らかにした。

図1 距離を最大200cm±2cmで測定できるToFチップ 大きさは4mm×5mmの24リードのTQFNパッケージ 出典:Intersil

図1 距離を最大200cm±2cmで測定できるToFチップ 大きさは4mm×5mmの24リードのTQFNパッケージ 出典:Intersil


Intersilがリリースした製品は、ISL29501という製品名で、光を検出する方法に工夫がある。ToF法は、元々、光の速度が3×10の10乗cm/秒という一定であることを利用して、反射光が検出されるまでの時間を測定することで距離を知ることができる(図2)。ところが、従来の方法では、周囲の光が過度に明るい場合や、赤外線リモコンなどの使用などによって確度(accuracy)が得られないという欠点があった。


図2 発光信号と反射光信号との位相差で検出するToF 出典:Intersil

図2 発光信号と反射光信号との位相差で検出するToF 出典:Intersil


外光によって、受ける光の振幅が変化し、発光と反射光との位相差がぼやけてくるためである。本来なら、発光パルスと受光パルスの時間的ズレ、すなわち位相差によって光が移動した距離から物体との距離を測定できるはず。しかし、周囲の光も加わると、光の振幅が弱くなると同時に他の光までも加わるため、位相差がぼやけてくることになる。

Intersilが採った方法では、光のパルスを対象物に当て、光の発射角度を例えば±3度に絞り(角度はプログラマブル)、その角度内で届いた対象物からの反射光を集め、届いたパルス信号の位相差に重みづけして平均化する(図3)。パルスの周波数は4.5MHzで、パルス幅やデューティ比をプログラムできる。サンプリング時間と積分時間も制御可能で、連続パルスが動作している期間が積分時間、パルスの休止時間を合計した時間がサンプリング時間と定義している。連続モードと単発モードを選択できる。


図3 周波数4.5MHzの連続パルスを積分する 位相差を平均化し重みづけする所にノウハウがある 出典:Intersil

図3 周波数4.5MHzの連続パルスを積分する 位相差を平均化し重みづけする所にノウハウがある 出典:Intersil


測定可能な最大距離は、平面対象物で最大2m、3次元形状の物体があれば最大1.2~1.5m程度にとどまる。測定可能な距離を最大2mに設定したのは、安価なLEDを使い、低消費電力は20mW+プログラム電流と小さくするためである。光源にレーザーを使えばもっと長い距離を測定できるが、消費電力が増加する。LEDの場合でも周囲の光が最大2万ルクスまで測定可能。

この製品は、低い消費電力で1m程度の比較的短い距離を測定するためのチップである(図4)。このため、「ルンバ」のような掃除ロボットやドローンなどの応用を想定している。例えばドローンに使えば、他のドローンとの衝突防止に加え、軟着陸が簡単にできるようになる。今のドローンは制御不能になって首相官邸の屋根に落ちた例もあり、人間の操縦テクニックに強く依存している。このチップを使えば、周囲の物体との距離を測りながら自動的に軟着陸させることができるようになる。


図4 他社製品との比較 出典:Intersil

図4 他社製品との比較 出典:Intersil


さらに、自動販売機内のジュースなどの商品をカウントする在庫管理や、スマートフォンのオートフォーカス、ゲーム機の前に人が来るとスイッチが入るといった消費電力の削減などに加え、ウェアラブルやヘルスケア関係のユーザーエクスペリエンスを高めるような用途にも使えそうだ。


図5 Intersilのデザインキット チップは左のボードの中央に近いやや右上にある

図5 Intersilのデザインキット チップは左のボードの中央に近いやや右上にある


Intersilはデザインキット「Sand Tiger」(図5)を用意しており、USBケーブル、GUIソフトウエア、取扱説明書なども付いて250ドルで提供する。

(2015/10/16)
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