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Qualcommの次世代APU Snapdragon 820が次第に明らかに

Qualcommが次世代スマートフォン向けのアプリケーションプロセッサ(APU) Snapdragon 820の内部回路をこれまで小出しに発表してきたが、このほどCPUに関しても発表した。SnapdragonはCPUだけに負荷を負わせず、ジョブに応じてGPUやDSPなどに振り分けるヘテロジーナスコンピューティングを進めてきた。これもその一環である。

図1 ヘテロジーナスコンピューティング Snapdragonの中身

図1 ヘテロジーナスコンピューティング Snapdragonの中身


Qualcommがスマホ用のアプリケーションプロセッサで特に提供する機能は、仮想現実(バーチャルリアリティ)やコンピュータビジョン、画像処理技術などユーザーエクスペリエンスを高めることである。Snapdragon全体としてみれば「性能」ということになるだろうが、できるだけCPUの負荷をかけずに性能を上げるために、GPUやDSPなどを集積するヘテロジーナス演算方式に力を注いできた。

今回発表したCPUコア(参考資料1)はKryo(クライオと発音)と呼ばれるカスタム仕様の64ビットクワッドコアである。Snapdragon 820には、Kryoに加え、GPU(グラフィックスプロセッサ)のAdreno 530と、DSP(デジタル信号プロセッサ:積和演算専用のマイクロプロセッサ)のHexagon 680、14ビットのISP(イメージ信号プロセッサ)のSpectraなどのIPコアを集積している(図1)。CPUコアをカスタム仕様にしたのは、プロセッサの性能と消費電力を両立させるためだという。Kryoは最大クロック周波数を2.2GHzまで上げられ、前世代のSnapdragon 810と比べ、性能は2倍になっている。消費電力の増加は、14nm FinFETプロセスの製造によって抑えた。

さらに、アプリケーションプロセッサ全体の消費電力を下げるため、Symphony System Managerと呼ぶマネージャー機能を導入した。これはこのシステムLSI全体の機能に合わせて、最適なコアを選び、最小の消費電力で回路を動かすもの。例えば、Hexagon DSPは以前、MP3プレイヤーの再生に使って電池の寿命を2倍に伸ばしたことがある。また、夜に写真を写そうとする場合に輝度を上げながら瞬時に最適な画像を創りだすが、これにはHexagon 680 DSPとSpectra ISPを利用する。この場合は、他の回路をオフにしておけば消費電力を下げられる。これまでのSnapdragonと比べ、消費電力は10%しか使わなくても性能を数倍上げることができるとしている(参考資料2)。

Hexagon DSPはストリーミング音楽や映像の圧縮にも使われるが、ISPコアと一緒に使われることが多そうだ。

また、Adreno 530 GPUは、グラフィックス処理のプロセッサであるが、ビジュアルな処理能力を高めることで次世代のユーザーエクスペリエンスをサポートする(参考資料3)。例えば、コンピュータによる写真処理や、コンピュータビジョン、仮想現実、写真レベルのグラフィックス画像などをGPUで処理する。これらは100Wを超えるデスクトップ型のコンピュータで使われた技術だが、これをモバイル用に使えるほど消費電力を下げた。さらに実際の写真やビデオとも重ね合わせる処理をする場合にはGPUとISP、圧縮・伸長処理用のDSPと組み合わせることがあるかもしれない。Adreno 530は、前世代のAdreno 430と比べ、40%性能が向上し、40%消費電力が下がったという。

さらに今回は、CPUが64ビットデータを扱い、GPUも64ビットの仮想アドレッシングをサポートしているため、仮想メモリを共有することで、CPUのコプロセッサとしてシステムの演算能力を高めることにも使えそうだ。また、Spectra ISPは最大3台のカメラまでサポートし、2500万画素、30fpsのビデオレート、シャッタ遅れゼロという機能を備えている。カメラ3台分をサポートしているため、2台を左右のステレオカメラ、1台を自撮りとして使うことも可能になる。ISPはハイブリッドの自動焦点構造と複数のセンサ信号を合成するアルゴリズムを利用して、次世代のコンピュータ写真をサポートできるという。

さらに、悪質な有害なソフトウエアである、マルウエア対策技術Smart Protectも発表している(参考資料4)。この技術を搭載したSnapdragonは820が初めて。これは、リアルタイムでオンデバイスのマシンラーニング(コグニティブコンピューティングのエンジンを利用)によって、マルウエアの脅威を正確に素早く検出する。従来のシグナチャーベースのマルウエア対策ソリューションを補い、マルウエアをリアルタイムで検出、分類し、問題解析を行うとしている。

参考資料
1. Snapdragon 820 and Kryo CPU: heterogeneous computing and the role of custom Compute (2015/09/02)
2. Snapdragon 820 countdown: new Hexagon 680 DSP (2015/08/24)
3. Qualcomm Introduces Next-Generation GPU Architecture and Image Signal Processor for the Ultimate Graphics and Mobile Camera Experience (2015/08/12)
4. Qualcomm Announces Breakthrough Mobile Anti-Malware Technology Utilizing Cognitive Computing (2015/08/31)

(2015/09/04)

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