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Synapticsの新製品、ルネサス子会社買収の成果

ルネサスSPドライバを買収したSynapticsがタッチセンサコントロールとディスプレイドライバを1チップに集積したコンビ製品ClearPad 4300をサンプル出荷し始めた。これまでタッチセンサコントロールが得意だったSynapticsが、ディスプレイドライバが得意だったRSP社を買収した成果の第一弾となった。

図1 タッチコントローラとディスプレイドライバの集積化への道 出典:Synaptics

図1 タッチコントローラとディスプレイドライバの集積化への道 出典:Synaptics


これまで、タッチセンサはタッチセンサ部とドライバ部をそれぞれ独立に制御していることが多かった(図1)。それらをまとめる方式として、液晶TFT基板の配線層の上にタッチセンサ層を設けるオンセル方式とTFT基板の中に一体化するインセル方式がある。タッチセンサコントローラとディスプレイドライバはそれぞれ必要とされた。今回は、タッチコントローラもドライバも1チップに集積した。コスト的には最も安くできる、と同社Smart Display部門のゼネラルマネージャー兼シニアVPのKevin Barber氏(図2)は言う。


図2 Synaptics社Smart Display部門GM兼シニアVPのKevin Barber氏

図2 Synaptics社Smart Display部門GM兼シニアVPのKevin Barber氏


今後、完全独立に制御するディスクリート方式をやめる訳ではない。ディスクリート方式、オンセル/インセル方式、集積方式、それぞれ利害得失があり、用途に応じて使い分けていく。ディスクリート方式は、ドライバ、タッチコントローラをそれぞれ独立に最適化できるため、性能は最も高くできる。しかし、2チップ方式では、チップの供給を含むサプライチェーンが複雑になり、ドライバ、タッチコントローラをそれぞれの業者から購入しなければならなかった。

今回の集積方式だと、システムコストはサプライチェーンを含め、最も低くなる。オンセル/インセル方式はそれらの中間になる。

1チップの製品ClearPad 4300では、タッチ回路とドライバ回路を一つのシリコンに共存させているため、ガラス上にマイクロプロセッサを持ち、ここでローカルな処理をしているため、ホストプロセッサを起こす(ウェークアップ)必要がない、と集積化のメリットをBarber氏は主張する。その結果、消費電力を下げることができる。

ただ、1チップにディスプレイドライバとタッチセンサコントローラを共存させることは簡単ではなかった。特にノイズの問題がある。ドライバはディスプレイ上の画素をドライブするためにパルス電流をドッと流れる結果、ノイズを発生する。これに対してタッチセンサは容量変化という微少な電圧あるいは電流の変化を検出するため、ノイズの影響を受けやすい。同時に動作させると、ノイズの発生と信号受信が同時に行われるため最悪で、タッチセンサは検出不可能になる(図3)。


図3 ドライバとタッチコントローラをただ集積するだけではノイズと区別できない(上図) TDsyncを使うとドライバのノイズは消える(下図) 出典:Synoptics

図3 ドライバとタッチコントローラをただ集積するだけではノイズと区別できない(上図) TDsyncを使うとドライバのノイズは消える(下図) 出典:Synoptics


そこで、同社はTDsyncと呼ぶ特許取得技術を開発、「インテリジェントな方法で共存させている」とBarber氏は言う。同期をとりながら二つの回路を動作させているため、ノイズのない時にタッチを検出するような方式を採っているようだ。詳しいことは話したがらないが、TDsync技術を使えば、ノイズのないタッチ信号を検出できる(図3の下)。

キーカスタマにサンプルを出荷しており、実際のスマホに搭載されるのは評価後になる。評価ボードも提供している。さらに、東京中野区にデザインセンターを開設、350名を超える従業員がいる。またルネサスの子会社RSPから買収した後も従業員の97%がそのまま移り働いている。今回のICを開発したことにより、ドライバだけではなくタッチセンサもわかるエンジニアを今後採用したいという。

参考資料
1. Synapticsがルネサス子会社を買収するメリットは大きい (2014/06/16)

(2015/07/16)

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