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BoschのCMOSセンサハブ、自社設計によりIoT競争力を上げる

Bosch Sensortecは、センサビジネスが単体からスマートシステムへ移行している、と4月下旬に東京・両国で開かれたMEMS Engineer Forum 2015で述べた。スマートシステムはセンサ情報がインターネットとつながり、新しい競争力を生む。これがIoTの本質である。

Bosch SensortecのCTOであるUdo-Martin Gomez氏は、「IoT(Internet of Things)とはインターネットとつながったスマートシステムのことを指す」と定義した。単にモノがインターネットつながったことを言うのではない。センサ単体がインターネットとつながっていても、さほど賢いことはできないが、さまざまなセンサとさまざまな情報が集まると、考えもしなかった相関関係を見出すことがある。だからこそ、IoTセンサに求められる技術は集積化と制御技術になる。


図1 今後は集積化センサでスマートシステムへ 出典:Bosch Sensortec

図1 今後は集積化センサでスマートシステムへ 出典:Bosch Sensortec


例えば、従来の振動や力を検知するセンサは、加速度センサやジャイロセンサ、磁気センサなどそれぞれのセンサを利用するための3軸センサがせいぜいだった。これが現在では電子コンパスや慣性センサモジュールと呼ばれるような6軸センサに集積度が上がった。これからは9軸センサの時代が来る(図1)。直線方向の加速度センサと、回転方向のジャイロセンサ、地磁気の大きさと向きを捉える磁気センサをそれぞれ3軸ずつ、合計9軸の動きを知ることができる。

これによって、相対位置ではなく絶対位置を知ることができる。衛星を使ったGPSのような位置情報検出システムもあるが、地下に潜ったり、建物の中に入ってしまったりすると衛星からの電波を受信できない。衛星電波は直進性が強いSHFないし準ミリ波を利用しているからだ。米国の衛星GPSはわざと精度を落としているが、これに代わり高精度なGNSS(Global Navigation Satellite System)システムを作ろうとする動きは日本や欧州にある。しかし、9軸センサなら、GPSと同様、絶対位置を測定できるようになる。GSNNと組み合わせれば、その精度は一層増す。

こういったスマートシステムをインターネットとつなげると、侵入者を検出する賢いスマートホームや、建物内でのナビゲーションシステムを実現できるようになる。ジャイロや加速度、磁気、圧力、温度、ガス、湿度などさまざまなセンサを使って、個人の動きから周囲の状況などを把握し、さらに認識するためには、センサに加え、信号処理プロセッサとソフトウエアが必要である。

図2 CMOSセンサハブに6軸慣性センサを1パッケージに集積 出典:Bosch Sensortec

図2 CMOSセンサハブに6軸慣性センサを1パッケージに集積 出典:Bosch Sensortec


このシステムには、センサからの情報をプロセッサに渡す前に、情報を整理するセンサハブLSIも必要だ。BoschはCMOSセンサハブを自社開発し、おまけに6軸慣性センサも集積したBHI160をリリースした(図2)。センサハブを通すとアプリケーションプロセッサに直結できる。集積化によって、システムの消費電力を減らしている。

センサハブは、消費電力の削減に加え、専用のアルゴリズムも搭載できるRAMも備え、データ転送と起動のためのFIFOメモリや、サードパーティのインタフェースも集積し、これらの動きから発展させて歩数計も加えることができる(図3)。慣性センサIMUの消費電力は1mA以下と小さく、さまざまなIoTアプリケーションに備えている。


図3 BHI160に集積された機能 出典:Bosch Sensortec

図3 BHI160に集積された機能 出典:Bosch Sensortec


このセンサハブは自社設計のバルクCMOSLSIであり、FPGAのようなハードウエアプログラマビリティと、マイコンのようなソフトウエアプログラマビリティを備えている、とGomez氏は筆者に語った。

センサハブを含めたコネクテッドスマートシステムあるいはIoTでやろうとしていることは、動きを検出し、活動量の測定を元に、コンテキストアウェアネス(活動の流れを読むこと)、最終的にはインテントプレディクション(意図するものを予測すること)である。コンテキストアウェアネスでは、建物内のナビゲーションや仮想現実(Augmented Reality)、そしてインテントプレディクションでは、建物内を移動している買い物客へのサービスや推奨情報を提供する、といった応用がある。

(2015/05/01)

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