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クルマ用に簡単なグラフィックスなら安価なマイコンで

クルマのダッシュボードの2次元や、簡単な3次元グラフィックスならマイコンで十分。ダッシュボードやセンタースクリーンでも演算を主としない応用には安価なマイコンで行けそうだ。Spansionの日本部門のスパンションイノベイツ(旧富士通セミコンダクターの一部門)はARM Cortex-R5 MPコアをベースにした32ビットマイコンをリリースした。

図1 スパンションがリリースしたマイコンTraveo 出典:Spansion

図1 スパンションがリリースしたマイコンTraveo 出典:Spansion


同社の狙う自動車用マイコンは、クルマのフロントパネルを従来のメカニカルスイッチから液晶パネルを利用するグラフィクススイッチに置き換え、モータ制御を主体とするボディ制御システムへの応用を目指す。Traveoファミリと呼ばれるこのマイコンは、グラフィックスコアに、フラッシュメモリ、アナログ、セキュリティ回路、ネットワーク、周辺回路を集積している(図1)。演算命令リッチなCortex-Aほどの演算能力はないが、比較的安価で制御命令を主体としながらも、ちょっとしたグラフィックス機能までも集積している。

Cortex-Rシリーズは、リアルタイムOSで走るプロセッサコアで、マルチコアをサポートしている。制御アプリに必要なリアルタイム処理として、予測可能な割り込み応答や分岐予測などをサポートしている。しかもCortex-R5 MPには、マルチコアのデバグとトレース機能も行える。

クルマ用に使う場合は、例えば、回生ブレーキとモータ駆動用のデュアルモータを利用する場合にデュアルコア構成のマイコンと、エアコン制御用マイコン、そしてダッシュボードのグラフィックス制御用のTreveoという使い方ができる(図2)。スパンションはエアコン用には、例えば、車内全体の制御、前2席と後方座席の2ゾーン制御、さらには4人別々の4ゾーン制御なども考えている。つまり、それぞれの座席で最適な温度の空気を供給する。


図2 ARM Cortex-R5は車載制御にモータ制御、エアコン、HMIインターフェースに使える 出典:Spansion

図2 ARM Cortex-R5は車載制御にモータ制御、エアコン、HMIインターフェースに使える 出典:Spansion


タッチパネルを基本の操作盤とする前方液晶画面のインターフェースには、グラフィックスクラスタシステムを構成する(図3)。ここでは、2Dと3D効果の高速レンダリングとベクトル制御などを行う。Warp on-the flyでは、ヘッドアップディスプレイに表示する画像の歪を補正し、フォトレンダリング機能を使う。また、3次元画像に関しては、描画エンジンで3D表示した後に表示エンジンへ受け渡す場合には、外部のRAMを使わずに、集積している内部RAMを利用する。


図3 クラスタシステムの概要 出典:Spansion

図3 クラスタシステムの概要 出典:Spansion


スパンションがマイコンにこだわるのは、あくまでもコスト。制御系に特化したリアルタイム処理を行うデバイスが主体であり、汎用GPU(グラフィックスプロセッサ)やそれを組み込んだSoCにしてしまうと価格が高くなる。だからこそ、機能を限定したグラフィックスをマイコンで実現するのである。このTraveoグラフィックスマイコンが実際のクルマに搭載されるのは2017年ごろになると見ている。

ARMとしては、リアルタイム制御のマイコンの需要は、Cortex-R5向けのコンパイラとして、例えばGreenHills Software社の最新コンパイラを使えば、性能は従来より30%向上し、マイコンはもっとコスト効率が良くなると見る。

もっと演算能力が欲しい場合には、ARMは64ビットアーキテクチャのARMv8-Rも用意している。ソフトウエアのコード行数が最大1億行になっても走らせることができるとしている。誤動作を防ぐ安全性と、セキュリティのイベントを高い信頼性で管理しなければならないが、このコアは可能だとしている。

(2015/04/28)

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