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小型・低価格の磁気センサ式モータ制御を狙うams

オーストリアのIDM半導体メーカー、amsが光学式ロータリエンコーダ並みの精度を持つ磁気角度センサICを開発、サンプル出荷を始めた。1分間に7000回転での誤差は±0.08°、同14,500回転での誤差が±0.17°と小さく、製品AS5047DおよびAS5147が14ピンのTSSOPパッケージ、AS5247がMLF-40と7mm×7mmのパッケージに封止されている。

図1 オーストリアams社シニアグローバルマーケティングマネジャーのHeinz Oyrer氏

図1 オーストリアams社シニアグローバルマーケティングマネジャーのHeinz Oyrer氏


モータの角度制御をきめ細かく行うことで、産業機械や自動車の機械的な位置を精度良く制御できる。産業用ロボット、手術用ロボット、セキュリティロボット、ヒューマノイドロボットなどのロボットや、工場の自動化に必要な機械の位置制御やエンコーダモジュール、さらには3Dプリンタの制御、車載モータなどもターゲットとしている。しかも光学式ロータリエンコーダと違い、半導体式なので小型になるため、モータに直接実装できる。光学式だと、発光素子と受光素子が必要で、それらの間に回転子の一部などを挟んでおく必要があるため、小型化は難しい。半導体式はコスト的にも有利だ。同社オートモーティブユニット部門シニアグローバルマーケティングマネージャーのHeinz Oyrer氏(図1)によると、「(ザクッとした比較だが、)光学式エンコーダと比べると価格は1/5だろう」という。

このICは、回転体からの磁界を検出する磁気センサであるが、センサ(ホール素子)だけではなく、角度補正回路も集積しているため、誤差を補正するためのマイコンやDSPなどの外部回路が要らない。角度を動作中にダイナミックに補正するため、DAEC(Dynamic Angle Error Compensation)と呼ぶ技術を使った(図2)。これは、回転速度の変化に自動的に対応するアルゴリズムを開発し、伝搬遅延によって生じる誤差を抑えた技術。この伝播遅延とは、ホールセンサから磁界を検出したアナログ電圧信号から、それを増幅・フィルタリングしデジタルに変換し、さらにデジタルのCORDIC(coordinate rotating digital computer)で磁界ベクトルの大きさと角度を計算し出力する、までの遅延時間を指す。この遅延が大きければ、検出した角度と計算出力する角度がずれてしまうため、誤差は大きくなった。そこで、この遅延を予め予想するアルゴリズムを開発した。


図2 amsの補正回路内蔵の角度センサIC 出典ams

図2 amsの補正回路内蔵の角度センサIC 出典ams


内部のA-Dコンバータ(図3)は14ビットの分解能を持ち、SPI(Serial Peripheral Interface)インターフェースを通じレジスタを外部からも読むことができる。さらにABI(Application Binary Interface)出力端子を使って、1回転当たり32〜2048ステップの分解能を設定することができる。


図3 AS5047D内部の回路ブロック 出典:ams

図3 AS5047D内部の回路ブロック 出典:ams


加えて、差動検出回路を基本としているため、浮遊磁界の影響は少なく、電磁ノイズの多い環境でもシールドなしでデバイスをモータに組み込むことができる。図4の太い配線を使う場合に発生する浮遊磁界に対してもプリント基板側にシールドは必要ないという。


図4 ロータリエンコーダ基板にICを搭載、モータの回転子に近づけて磁気を検出する

図4 ロータリエンコーダ基板にICを搭載、モータの回転子に近づけて磁気を検出する


今回発表された製品には産業機器用とだけではなく、車載向けのICもある。クルマには摩耗によるモータ回転子の劣化を嫌い、ブラシレスモータを好む傾向がある。1台のクルマには、ワイパーの動作やウィンドウの開閉、シートの移動など約35個のブラシレスモータが使われているとOyrer氏は言う。もちろん、最新のABS(Anti-Braking System)やEPS(Electric Power Steering)のアクチュエータ、発電機(オールタネータ)やスタータなどにもモータ、それもブラシレスモータが使われている。これらが精度を保ったまま小型になれば、クルマの軽量化、低燃費化、居住空間の広がりなどにつながりメリットは多い。

AS5247は、1パッケージに2チップ収容し、冗長性を上げた製品だ。自動車の安全要求AEC Q100を満足している。電動パワステ(EPS)にはハンドルの角度センサ、ステアリング軸のトルクセンサ、タイヤの向きを制御するためのモータのロータ位置センサなどたくさん使う。Oyrer氏は、2020年までに8割のクルマが磁気センシングのEPSを搭載し、年率15%で伸びていくと見ている。

(2014/08/20)

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