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ON Semi、モバイル端末向けのミクストシグナル製品を続々発表

これからも成長が続くと期待されるスマートフォンやタブレット向けに、アナログ技術を得意とする半導体メーカーならではの製品をON Semiconductorが相次いで投入している。ON Semiが買収した旧三洋電機半導体部門は、System Solution Groupに属し、統括するシニアバイスプレジデントのMamoon Rashid氏は日本で指揮をとっているという。

図1 モバイル端末に使われるさまざまな半導体IC 出典:ON Semiconductor

図1 モバイル端末に使われるさまざまな半導体IC 出典:ON Semiconductor


もともとMotorolaからスピンアウトしたON SemiconductorとFreescale Semiconductor。Freescaleがマイクロプロセッサや比較的高度な通信用SoCを中心に製品を開発してきたのに対して、ON Semiはディスクリートから出発した。ディスクリートは汎用部品が多いため、差別化できる製品とはなりにくい。このため、ON Semiは、狙うべき市場を定め、自動車、コンピューティング、民生、通信、工業・医療に分け、それらの市場に向けてアナログやミクストシグナル製品を提供してきた。三洋を買収したのは、パワー関係を強化するためだった。製品ポートフォリオが揃ってきたON Semiの統一標語は、「高効率エネルギーへのイノベーション」としている。

国内半導体メーカーのエンジニアやアナリストの中には、スマホやタブレットのようなモバイル端末向けの半導体は、クアルコムやメディアテックにかなわないからその市場は狙うべきではない、と簡単に言い放つ人たちがいる。しかし、モバイル端末向けの半導体はアプリケーションプロセッサやモデム、NANDフラッシュだけではない。アナログ半導体が山のように使われている。ON Semiが手掛けるモバイル端末向け半導体ICは、図1の緑色の部分である。むしろ、モバイル端末市場は宝の山である。


図2 今回の新製品を発表したON SemiconductorのSystem Solution Groupの Intelligent Power Solution事業部長の川崎郁也氏

図2 今回の新製品を発表したON SemiconductorのSystem Solution Groupの Intelligent Power Solution事業部長の川崎郁也氏


このほどON Semiが投入したモバイル市場向けの新製品は、カメラのオートフォーカス(AF)処理用のチップと、リチウムイオンバッテリ用の保護IC。いずれもこれから使われるであろうと期待されるICである。これらを統括するのは、System Solution Groupに属するIntelligent Power Solution事業部を牽引する事業部長の川崎郁也氏。

AF用半導体では、これまで主流の開ループ方式よりも高精度、低消費電力が得られる閉ループ方式を開発した。しかし従来の閉ループ方式では、ある一定のスペースを必要とし、コストが高くついていた。今回のチップはこれまでの閉ループの欠点を克服し、高精度・低消費電力・省スペース・低コストを実現する。また、従来の開ループ方式では、光センサ信号を受け取り、バネ式アクチュエータを動かしてレンズの位置を決定していた(図3)。しかし、バネを動かすための電力が大きく、とどまっていても電力を消費していた。また精度は光センサで決まっていた。


図3 二つのオートフォーカスシステム 出典:ON Semiconductor

図3 二つのオートフォーカスシステム 出典:ON Semiconductor


これに対し、開発した新しい閉ループ方式では、受け取った光センサ信号をフィルタ処理し、レンズユニットに取り付けられた永久磁石とICからのコイル(アクチュエータ)によってレンズを動かす。その位置を決める場合、ホール素子を使ってレンズユニットの位置(永久磁石の磁界)を検出した後、AF処理回路にフィードバックをかけ最適な位置になるようにコイルの磁界を再度調整する。いわばフィードバックループを使い、位置精度を上げている。レンズユニットを転がして動かすのはバネではなくボールである。このボールがとどまっているときの電力はゼロであり、このシステムの消費電力は少ない。しかし、パラメータ調整用のEEPROMや、磁気検出用ホール素子が必要で、部品点数は多くなる。そこでON SemiはAF処理ICにEEPROMとホール素子も集積し、スペースとコストの問題を解決した。

もう一つの製品、バッテリの保護IC、LC05111CMTでは、保護回路が消費する電力を減らし、温度上昇を減らすことにより、充電時間を短くできるようにした。従来は抵抗で電流を検出していた。抵抗方式は精度が高いものの、電流そのものを無駄に消費していた。そこで、MOS FETのオン抵抗を検出に使った。しかし従来のFET抵抗は抵抗値が低いものの、そのバラつきは大きかった。


図4 リチウムイオン電池保護IC 出典:ON Semiconductor

図4 リチウムイオン電池保護IC 出典:ON Semiconductor


今回は、MOSFETのオン抵抗のバラつきを測り、ポリシリコンヒューズでトリミングし、各MOSFETのオン抵抗を合わせ込んだ。このヒューズによる抵抗トリミング法は、組み立てパッケージ後に外部からの通信によって、電流を流しヒューズでポリシリコン抵抗の一部をカットすることでその値を調整する。ICごとにトリミングするため、IC間のバラつきは減り、またFETの検出回路で消費する電力は減るため、検出器の温度上昇は従来の55℃から16℃に減少した。

(2014/07/22)

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