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Bosch、6軸コンボの超小型MEMSセンサでスマホ市場牽引

Sensor Expo 2014が米イリノイ州シカゴ近郊のローズモントで6月24日から開催された。それに向けて、MEMSデバイスのトップメーカーであるドイツBosch Sensortecが超小型の6軸慣性センサを発表した。スマートフォンやタブレット市場向け。製品化の狙いや目的など、同社CEOのStefan Finkbeiner氏(図1)に単独電話インタビューで聞いた。

図1 Bosch Sensortec社CEOのStefan Finkbeiner氏

図1 Bosch Sensortec社CEOのStefan Finkbeiner氏


MEMSの市場調査会社であるYole Developpementによると、Bosch Sensortecは2013年のMEMSメーカーの中でトップの10億1100万ドルを売り上げている(図2)。その前年はSTMicroelectronicsがトップの10億ドルちょうどを計上し、Bosch Sensortecは第2位だった。BoschグループにはMEMSデバイスを手掛ける会社が4社ある。Bosch Sensortecは民生用のMEMS慣性センサを専門に手掛けるその一つ。他には自動車市場向けの圧力センサや加速度センサなどを扱うAutomotive Electronicsや、民生用のMEMSマイクを手掛けるAkustica、そして今年の始めに設立されたIoTやセンサネットワーク用のMEMSセンサを扱うBosch Connected & Devicesがある。


図2 MEMSデバイスの2013年市場ランキング 縦軸の単位は百万ドル。青いバーが2013年、赤いバーが2012年を表示。 出典:Yole Developpement / MEMS Industry Group
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図2 MEMSデバイスの2013年市場ランキング 縦軸の単位は百万ドル。青いバーが2013年、赤いバーが2012年を表示。 出典:Yole Developpement / MEMS Industry Group


Sensor Expo 2014に向けてリリースするMEMSチップは、大きさがわずか2.5mm×3.0mm (厚さは0.8mm)、消費電力が1mW未満の6軸慣性センサBMI160だ(図3)。この慣性センサの中には、3軸の加速度センサと3軸のジャイロセンサを搭載している。特定ユーザーに向けサンプル出荷を開始した。


図3 新製品BMI160 出典:Bosch Sensortec

図3 新製品BMI160 出典:Bosch Sensortec


ここまで小さくする理由は何か。同社CEOのStefan Finkbeiner氏は、「スマホ用は小型化と集積化への要求が強い。MEMSセンサの占める面積が小さいほど、プリント回路基板設計の自由度が増す。加えて回路面積が減れば、バッテリを大きくでき、電池寿命を長く伸ばせる。加えて、消費電力の削減要求も強い」と述べる。加速度センサとジャイロセンサを集積するのは、そのためであり、小型化する理由も同じである。

こういった要求を採り入れたMEMSセンサを使うと、スマホにはどのような機能が追加されるのだろうか。同社は、インドアナビゲーション、AR(仮想現実)、体感するイマーシブ・ゲームなどを想定している。例えば「インドアナビゲーションは、ビル建物内部に入り込むとGPSの電波が届かなくなるため、GPS信号ではなく、加速度センサとジャイロセンサを使って、人が進む方向と曲がる動作を検出し追跡する技術。建物の入り口に入りGPSが使えなくなると、その位置から進む(加速度)、曲がる(ジャイロ)という動作を追跡し建物内部を進む経路を把握する」とFinkbeiner氏は言う。

BMI160の製品名BMIの内、BはBosch、MはMEMS、Iはintegration(集積化)を意味する。MEMSセンサだけではなく、アンプやA-Dコンバータなどの信号処理回路も集積しており、出力はシリアルデジタルのSPIとI2Cインターフェースを持っている。ただし、マイコン方式ではなく、割り込みエンジンとオフセット補償、FIFOバッファなどを集積している。出力は加速度、ジャイロとも16ビットデジタル。

外部の3軸磁気センサをシリアルインターフェースで接続すると、9軸の慣性デバイスとしても動作する。スマホ用途を主体とするため、消費電流は従来の6軸コンボ製品では4mA程度だったが、新製品は950µAしか消費せず1/4以下に削減した。このため常時動作状態でも電池を気にすることがなくなる。加えて、システムレベルでも消費電力を削減している。加速度センサが運動状態にある場合には、ジャイロセンサも素早く立ち上がれるように待機しているが、もしここに割り込み信号が入ると、ジャイロのデューティサイクルを長く伸ばす、というインテリジェントなパワー節約モードに入る。

加速度の検出範囲は、プラスマイナス2g、同4g、同8g、同16gの4種類、ジャイロの角速度検出範囲は、同125度/秒、同250度/秒、同500度/秒、同1000度/秒、同2000度/秒の5種類を用意している。量産は今年の第3四半期から。


図4 MEMSセンサは第3の波時代に入る 出典:Bosch Sensortec

図4 MEMSセンサは第3の波時代に入る 出典:Bosch Sensortec


Boschグループは、もともとMEMSデバイスではトップを行く自動車向けのティア1メーカー。日本のデンソーのような企業である。MEMS技術を様々なアプリケーションに展開するため、4つの会社に分け、これらの出荷累計は2013年に40億個を超えた。今年設立されたIoT向けの新会社は、これからの成長に欠かせない分野をカバーする。Boschは、IoT時代を迎え、MEMSセンサが第3のフェーズに入った(図4)と認識している。

(2014/06/24)

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