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Freescale、内燃エンジン、ハイブリッド共に使えるバッテリモニターIC

ガソリンエンジン車でもハイブリッド車に近い燃費を実現し、アイドリングストップ機能や回生ブレーキなどによって、排ガス減少も同時に達成しようという動きが世界的にある。このために使われる14VのLiイオンバッテリ向けの制御用IC(図1)をFreescale Semiconductorが製品化した。

図1 Freescaleが製品化したバッテリモニターIC 出典:Freescale Semiconductor


このICはバッテリの充電状況、劣化状況などを把握するバッテリモニターである。Liイオンセルを4個直列接続して14Vのバッテリシステムを構成する場合、各バッテリの状況をCANあるいはLINでメータや他のECUに伝える。FreescaleはIBS(Intelligent Battery Sensor)と呼んでおり、今後、年平均成長率25%で伸びていくという予想がある(図2)。


図2 インテリジェントバッテリセンサ市場 出典:Freescale Semiconductor

図2 インテリジェントバッテリセンサ市場 出典:Freescale Semiconductor


バッテリの状況をできるだけ正確にとらえるため、このICでは4つのセルの各電圧と、バッテリに流れるトータルの電流、そして温度を測定し、そのデータを出力する(図3)。この新製品MM9Z1638には、16ビットのΔΣ型A-Dコンバータを3個とLINのPHY層、16ビットマイコンのS12Z、CANコントローラを内蔵している。


図3 インテリジェントバッテリセンサの仕組み 出典:Freescale Semiconductor

図3 インテリジェントバッテリセンサの仕組み 出典:Freescale Semiconductor


電圧と電流、温度という3つのパラメータを独立に測定するため、3個の16ビットA-Dコンバータを集積させている。BiCMOSプロセスを使いA-DコンバータとLIN PHY層回路の耐圧は52Vと高い。CANのPHY層は外付けにした(図4)。これはコストを下げるためだとしている。このICでは1点の温度しか測定できないが、その理由は、ハイブリッド車のような大きなバッテリシステムでもバッテリパックに1個の温度センサしか測定に用いないことに基づいているとしている。


図4 CANバスに出力する場合にはPHYチップを外付けする必要がある 出典:Freescale Semiconductor

図4 CANバスに出力する場合にはPHYチップを外付けする必要がある 出典:Freescale Semiconductor


ただし、このICは2チップ構成で、図3の赤い枠で囲んだアナログチップと、青い枠で囲んだマイコンのデジタルチップを内蔵している。デジタルからのクロックノイズをアナログチップが影響を受けにくくするためだ。このようにして集積化したため、BOMコストが下がり面積が小さくなったという。わずか7mm角のQFNパッケージに封止されている。

マイコンは、I/Oデータバスが16ビットだが、内部のデータバスやALUのデータ幅などは32ビット構成である。アドレス空間は16Mバイト(24ビット)である。加えて、32ビット×32ビットの乗算器やレベルシフタ、MAC、FPUを集積しており、32ビットを基本としている。またメモリは8KバイトRAMや96K/128Kバイトのフラッシュメモリも内蔵している。

Freescaleは開発期間を短縮し、ユーザーがプログラムするための開発ツールも用意している。ハードウエアのリファレンスデザインも用意した。LIN/CANインタフェース付き12V鉛蓄電池用、LIN/CANインタフェース付き14V/4セルのLiイオンバッテリ用のボードがある。

(2014/04/16)
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