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財務基盤を強固に、攻めに転じるAnalog Devices

リーマンショックの影響を受けても2009年に黒字を確保したAnalog Devices。安定した財務基盤を築くことができたとして、高性能アナログ信号技術におけるソリューションプロバイダーとなる方針を発表した。2018年度に向けて10%のCAGR(年平均成長率)を目指す。

図1 アナログ・デバイセズ代表取締役社長 馬渡修氏

図1 アナログ・デバイセズ代表取締役社長 馬渡修氏


同社は、直近の四半期である2014年度第1四半期(2014年2月1日終了)も6億2800万ドルの売上額に対して総利益率65.1%、営業利益率29%と高い収益率を得ている。2013年度には市場から自社株を買い戻し、強固な財務体制を確立、これからは攻めに転じる。同社の強みは、A-D/D-Aのデータコンバータだ。この得意な分野をさらに強めていく。このためのR&D(研究開発)投資に、売り上げの20%前後を割き、ミクストシグナルだけではなく高周波のRF回路/プロセスやSiPパッケージ、医療機器向けの低消費電力化技術、さらにタッチセンサやMEMS信号などの最先端アルゴリズムの開発などに力を注ぐ。

2014年度の日本は、デザインセンターを強化する、とアナログ・デバイセズの代表取締役社長の馬渡修氏(図1)は述べる。過去5年、センサとアクチュエータ技術の開発人員を20%増やしてきたが、今後5年も継続的に20%増員していくという。そのためにMEMSや高耐圧CMOS技術を顧客と密に開発する。ここでは自動車、産業分野、医療、民生といった分野を狙う。

日本法人にはAnalog Devices本社をリードするような専門家も抱えているため、日本語で日本の顧客と議論できることが他の外資に対して強みとなるという。独自IPに関しては本国と共同で設計・開発・運用する。

顧客のユーザーエクスペリンスを実現するために、デジタル部分はサードパーティとエコシステムを作っている。例えばデジタル部分のモジュールはFPGAメーカーと協力する。サンプルICを望む顧客から、ソリューションを望むユーザーまで、あらゆるレベルの顧客をサポートするため、開発ツールを充実していく。さらに、顧客がまだコンセプトしか持っていない段階から直接訪問サポートすることで顧客との関係強化を図る。また、代理店チャンネルやオンラインチャンネルも積極的に利用する。

日本法人が国内市場に力を入れる一方で、米国本社は世界的な展開に力を入れている。ADIの出荷地域別の売上額では本社のある米国が15%程度しかなく、欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域が30%程度と最も多い。また、デザインイン別売り上げでも米国では40%程度でEMEAが同数、と海外売上比率の方が高い。日本はどちらの売上とも10%強。日本のOEM(電機メーカー)が民生から工業用に軸足を移していることに呼応して、特に産業、通信インフラ、自動車、ヘルスケアの各用途の売り上げはここ数年毎年増加している。

技術的には、高周波のRFIC技術にも力を入れる。高周波技術は、通信インフラだけではなく、ADIが得意な防衛システム、さらにはRF測定器にも欠かせない。同社には高周波用の技術、65nmCMOS、SiGeのBiCMOS、RF ICやMMIC、GaAsパワーアンプなどのプロセス技術や、マイクロ波用のパッケージ、SiP、高速クロックIPコアや高速DSPなどのテクノロジーがある。

RFトランシーバをプログラマブルに
こういった高周波技術の一つとして70MHz〜6GHzと広帯域のRF送受信機AD9364を開発、スモールセルの基地局に向けに最近、量産出荷を始めた。このRFトランシーバ(送受信機)はプログラマブルなICチップ(図2)であり、周波数帯域を制御するフィルタや周波数をプログラマブルに変えることができる。加えて、ローノイズアンプをフロントエンドに集積しているためアンテナに直結できる。


図2 RFトランシーバの基本回路と性能 出典:Analog Devices

図2 RFトランシーバの基本回路と性能 出典:Analog Devices


このチップが狙う用途は、まず通信インフラの基地局の周りの電波状況を補うためのフェムトセルやピコセルなどと呼ばれるスモールセル、さらに防衛システムに欠かせない無線通信機器、RF性能そのものを測る測定器など。同社は同様なプログラマブルRFトランシーバIC、「AD9361」をすでに製品化しているが、この製品は2×2MIMO仕様を狙ったものであり、MIMOを使うセルラー基地局用途であった。今回の製品は、セルラー基地局よりも少し小さな通信基地向けになっている。

ADIはソフトウエア無線(SDR:software defined radio)に対応しているというが、SDRはモデム(変復調)技術に使われることが多い。ソフトウエアを変えることでモデムの仕様を変える技術である。ここでは、RF部分もプログラマブルに変えて世界各地の基地局仕様に対応するということでSDRという言葉を使っている。要は、一つのハードウエアプラットフォームを作り、顧客に応じてプログラムを変えてRF特性をチューニングする。少なくとも70MHzから6GHzまでの周波数帯域のRF回路ならハードは一つでよい。顧客に応じてカスタムRF ICを設計する必要はない。

RF回路を顧客の仕様に変えるためには、フィルタ技術が欠かせない。他の周波数成分の電波を遮断したいからだ。このICは図2に示すように、LNA(ローノイズアンプ)、ミキサ、局部発振器、PLL、1/N型シンセサイザ、12ビット相当のA-D/D-Aコンバータ、フィルタ、デジタルインタフェースなどを集積している。PLLや周波数シンセサイザによって、顧客の望む周波数を局部発振器から作り出す。フィルタはアナログ方式を主体に、微調整としてデジタルフィルタを一部使うとしている。Q、Iのデジタルデータ(シンボル)を出力する。

顧客ごとに変える場合にはモデムも同時に調整しなければならないため、デジタルモデムの開発にはFPGAを利用する。このための開発ボードを用意している。RFチューナ部分はFMC(FPGA mezzanine card)と呼ばれる入出力仕様のドータカード(図3)を開発しており、その入出力はFMCソケットで出来ているため、FPGAが搭載された開発キットのマザーボードに直結できる。FPGAのプログラムを含めてPC上で操作する。


図3 ADIのRFトランシーバ開発キットのFMCカード(青いボード)とFPGA(ファンの下)プログラムボード(緑色のマザーボード)

図3 ADIのRFトランシーバ開発キットのFMCカード(青いボード)とFPGA(ファンの下)プログラムボード(緑色のマザーボード)


ADIはこのRFチップだけを売るビジネスは難しくなっていることを認識しているため、このICの周辺をサポートしてもらうサードパーティや仲間(フォーラム)などのコミュニティを充実することにも力を入れている。特にオンラインを使ったフォーラムでは、広帯域RFトランシーバコミュニティやFPGAリファレンスデザインコミュニティ、Linux&マイクロコントローラ・デバイスドライバコミュニティなどがある。

(2014/03/12)

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