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Spansion、333MB/sと高速のシリアルバスを提案、フラッシュNOR製品発売

Spansionが最大333MB/sと高速のデータレートで読み出せる新しいメモリインタフェースバスHyperBusを提案、このインタフェースを組み込んだ高速のNORフラッシュ製品HyperFlashの第1弾をリリースした。ピン数はわずか12ピンで読み出せるため、省スペースのクルマなどに向く。

図1 新しいHyperBusは12ピンだが333MB/sと高速 出典:Spansion

図1 新しいHyperBusは12ピンだが333MB/sと高速 出典:Spansion


フラッシュメモリにはメモリセルが直列接続されたNANDと並列接続のNORのタイプが市場に出ているが、それぞれ一長一短がある。NANDフラッシュは大容量のストレージ用の不揮発性メモリでは圧倒的に強い。ビデオや音声、高精細画像などを保存するという用途に向く。しかし、データアクセス速度は遅いため、ページ読み出し、ブロック読み出しといった使い方をする。

一方、NORフラッシュはメモリ容量ではNANDにかなわないものの、原理的に並列動作のため読み出しスピードは速い。しかし、並列に読み出せるということはピン数が多いという弱点にもつながる。Spansionが推進するNORフラッシュは、セルは並列ながらチップの外からは直列に読み出せるようにしてピン数を減らす製品を展開してきた。Spansionが狙う市場は、高速の不揮発性メモリ分野である。それも出来るだけピン数を減らしながら(低コストを意味)、高速化へと向かってきた(図1)。SPI(Serial Peripheral Interface)バスだとわずか4ピンですむが、10MB/sと遅い。このため、読み出し方を工夫したQuad DDR方式のSPIにして80MB/sへと速めてきている。

今回、Spansionが提案する高速インタフェースHyperBusを採り入れた製品HyperFlashは、12ピンながら最大333MB/sと極めて高速だ。これまで高速のDDR Quad SPIバス仕様の製品では6ピンが、HyperBusでは12ピンとピン数はやや増えるものの、読み出し速度は4倍も速い。

HyperFlash製品のピン配置(12ピン)は、チップセレクト(CS)、差動クロック(CLKと、CLKの上にバー)、ホストプロセッサからデータを正確に捕捉するためのRDS(Read Data Strobe)、そして8ビットのI/Oバスからなる(図2)。スループットを上げるため最大166MHzのクロックの立ち上がりと降下エッジの2カ所で読み出すため、333MB/sとなる。


図2 高速8ビットバスと制御用ピンで12端子のフラッシュNOR CLK上のバーをCLK#と表現している 出典:Spansion

図2 高速8ビットバスと制御用ピンで12端子のフラッシュNOR CLK上のバーをCLK#と表現している 出典:Spansion


Spansionが今回リリースする製品は、128Mビット、256Mビット、512Mビットの3製品。全て8mm×6mmの24ピンBGAパッケージに実装している。これは従来のSPI NORフラッシュメモリとパッケージに互換性があり、シングルのQuad SPI NORとダブルのQuad SPI NORフラッシュを一つのパッケージで共用できる(図3)。いわばユニバーサルなフットプリントを持つ拡張性の高いパッケージである。プロセスは65nmで、1セルに2ビットを元々持つMirrorBit技術を使う。テキサス州のオースチン工場で生産する。


図3 共通のBGAパッケージで容易にアップグレード 出典:Spansion

図3 共通のBGAパッケージで容易にアップグレード 出典:Spansion


Spansionは、この新しい高速のNORフラッシュの主な用途として、スイッチをオンしてからディスプレイが反応する時間が1秒以内の「インスタントオン」、およびリアルタイム性が求められるインタラクティブなGUI(グラフィカルユーザインタフェース)などを想定している。特にクルマ用のダッシュボードを機械式のメータから液晶ディスプレイに変えようとすると、クルマのドライバーから見た応答が遅ければ話にならない。NORフラッシュはこの応答速度を上げることができる。同社が示した例(図4)では、最初の起動から画面表示までの時間がわずか0.7秒ですむ。これに対して従来のQuad SPIバスで最高速度の50MB/sでも4.2秒かかってしまう。ましてやNANDフラッシュはさらに遅いため、この用途には使えない。


図4 高速の起動が可能 出典:Spansion

図4 高速の起動が可能 出典:Spansion


Spansionは、高解像度の画像を拡大して読み出す場合においても、鮮明な画像が得られるというデモも行っている。これは、高速のHyperBusを用いることによって、圧縮率を最小限にとどめることができるという特長によるもの。従来の低速メモリバスの場合は、圧縮率を上げざるを得ないため、拡大すると不鮮明な画像になってしまっていた。

(2014/02/21)

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