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クルマ用バッテリのアクティブセルバランス方式を簡略化したams

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オーストリアの半導体メーカーamsは、Liイオンセルを自律的にバランスさせるICを製品化した。電気自動車やプラグインハイブリッドカーでは、Li電池セルを直列に100個程度接続したバッテリスタックが動力エネルギーとなる。このICは、セル間のバラつきを自律的にかつ簡単に減らそうというもの。

モーターで走るクルマでは、バッテリ内のセル同士がバラつくと、バッテリをフルに使うことができなくなる。この結果、走行距離が短くなるという問題が出てくる。セル同士が大きくバラつくと、先に満充電になったセルに合わせて充電をやめなければならない。満充電を超えて充電すると発火の危険性が高まるためだ。バラつきが大きければ大きいほど、満充電のセルに合わせなければならない。例えば本来なら90%まで充電できるのに75%でやめなければならないとなると、クルマのシステムでは75%をフル充電と判断する。バラつきが少なく全てのセルが90%まで充電したクルマよりも走行距離は短くなる。

Liイオン電池セルのバラつきを減らすことは走行距離を延ばすことにもつながる。電圧特性を合わせたセルを選び、直列に接続するとしても、充放電を繰り返すうちにセル同士の電圧がバラついてくる。このため、セルごとに電圧を検出して、電圧を揃えることが行われてきた。そのやり方には、パッシブ方式とアクティブ方式の二通りがある。これまではパッシブ方式が多かった。

パッシブセルバランス方式では、セル間で充電が早く進むものと遅いものが出てくると、先にフル充電に達したセルの電荷を、外部抵抗を使って捨て、まだ充電に満たないセルに合わせる。そして既定の値(85〜90%)まで合わせる。100%にしないのは電荷の安全マージンを考えてのこと。

一方のアクティブセルバランス方式では、バッテリ全体を充電していくうちに先に90%まで充電したものとまだ70%しか充電していないものがあれば、その差を検出し、電荷の多いセルから少ないセルへと電荷を移動させる。そして両者の差がなくなったら、再び充電する。また差が出てきたら、同様に電荷の多いセルから少ないセルへ移し、最終的な規定値に達したら、満充電と定義する。電荷が無駄にならず消費電力が減少するため、アクティブ方式の方が効率は高い。ただし、複雑になる分、価格は高くなる。


図1 ハードワイヤード方式のアクティブ/パッシブ充電IC 出典:ams

図1 ハードワイヤード方式のアクティブ/パッシブ充電IC 出典:ams


今回amsが開発した製品AS8501は、アクティブ方式とパッシブ方式を兼ね備えたチップである。セル間が充電されているかどうかを判断する回路を内蔵しているため、外部にMCUなどのコントローラを設ける必要はない。外部のマイクロコントローラを使う場合には、大電流で充電するため、外部ノイズの影響を受けやすく誤動作しやすくなる。また、従来のアクティブ方式では、セルを順番に監視していくため、全体の電圧値を表示するための複雑な補正アルゴリズムが必要とされている。


図2 セルバランスの評価ボード

図2 セルバランスの評価ボード


今回の製品では、パッシブ方式かアクティブ方式かを選ぶことができ、それは外部のコントローラからデジタル制御信号でSPIインタフェースを通じて選択できる。充放電の大電流のやり取りはボード内で行われるため、ノイズの影響を受けにくい。また、セル全体を同時に測定するため、補正アルゴリズムは必要ない。同社は、セルバランスの評価ボードも提供しており(図2)、ここではパッシブ方式とアクティブ方式の2種類を用意している。

(2013/10/16)

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