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Cypressのタッチパネルコントローラ、ペンと手のひらを識別

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液晶ディスプレイ上で絵を描いたりサインしたりするような場合、つい手をスクリーン上に置くと誤認識されてしまうことがあるが、手を置きながらスタイラスペンで書いても誤認識しない(図1)。このようなタッチパネルコントローラをCypress Semiconductorが製品化した。

図1 手を載せながらでも文字や絵を描けるタッチコントローラ 出典:Cypress Semiconductor

図1 手を載せながらでも文字や絵を描けるタッチコントローラ 出典:Cypress Semiconductor


Cypressは、静電容量型のタッチパネルコントローラを長年開発してきた。アップルのiPodで使われた丸いホィールをはじめ、iPhoneのマルチフィンガーによるUI(ユーザーインタフェース)で実績がある。これまで累計10億個を超えるタッチパネルコントローラを出荷してきた。

iPhoneやAndroidなどスマホやタブレットのタッチパネルコントローラは競争が激化している。Cypressに加えて、SynapticsやAtmel、Maxim Integrated、SiliconLabs、Texas Instrumentsなど参入企業が多い。だからこそ、特長のある製品ではないと受け入れられない。

タッチパネルは、複数の指とその動きを検出するため、X-Y平面をスキャンしながら指とその時間変化を測定する。iPhone が登場するまでは、タッチパネルはボタン代わりに用いられていたため、X-Y平面での位置さえわかれば簡単に検出できた。しかし、指の動き、複数の指を共に検出するためには時間的にスキャンするコントローラが欠かせない。

今回の新製品TMA568は、44個〜58個のセンスI/Oに対応し、例えば58個のセンスI/Oの製品では、5.3インチスクリーンのスマホやファブレットに3.2mmピッチのセンスI/Oを使う。直径2mmという細いペンにも対応する。手のひらを載せた時の大面積部分を同時にタッチしている状態と、常に細かく動いているスタイラスペンの状態とを自動的に検出する。この検出には自己容量と相互静電容量を共にスキャニングして容量変化を比較する方式を使う。水滴が付いてもタッチしていることかどうかを判断できるため、水が付きやすいプールサイドでも使える。しかもスクリーンを拭いて水滴を取り除くとすぐにリセットされる。


図2 過渡電圧40Vにも耐えられる 出典:Cypress Semiconductor

図2 過渡電圧40Vにも耐えられる 出典:Cypress Semiconductor


従来は、充電中に電源からノイズが入りタッチスクリーンの感度が悪くなったり、安定に動作しなくなったり、反応しなくなったりするという問題もあったという。タッチスクリーンコントローラが電源ノイズに弱く、誤動作することが原因だった。このため、タッチパネルを駆動する周波数を従来の200kHzから500kHzに上げ、しかも拡散スペクトル技術の帯域幅を広げた(図2)。充電器にはスイッチングレギュレータが使われているが、そのスイッチング周波数から遠くへ離すことが狙いである。また、周波数ホッピング方式の拡散スペクトル技術であるため、もし周波数が電源の高次の高調波と一致しても適応性が高いためにほかの周波数へすぐにホップする。その結果、過渡電圧耐性が40Vもあるため、充電中でも誤動作が起きなくなった。これまでは耐圧が5V程度であり、大きくても10V程度しかなかったという。

コントローラにはARM Cortex-M0シリーズの32ビットCPUコアを内蔵(図3)、デジタル回路部を制御している。また、さまざまなガラス材料やデザインパターンなどもサポートしている。OSはAndroidとWindowsに対応するが、アップルはいま独自コントローラを使っているためiOSには対応しない。デジタル制御の出力はI2CとSPIインタフェース。パッケージは、56端子のQFNと70端子のBGAの2種類。それぞれ大きさは、6mm×6mm×0.6mm(厚さ)と、5.5mm×5.5mm×0.6mm(厚さ)がある。I/O数はQFNが44個のみだが、BGAは48個、54個、58個に対応。


図3 TMA568製品の仕様 出典:Cypress Semiconductor

図3 TMA568製品の仕様 出典:Cypress Semiconductor


ストラテジックカスタマを4〜5社持っており、彼らにはサンプルを出荷中である。量産は2013年第4四半期から。

顧客の望むタッチパネルを容易に開発するためのツールTTHE(True Touch Host Emulator)も提供する。このソフトウエアツールを使えば、デザインのコンフィギュレーション、チューニング、デバッグができる。

(2013/10/10)

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