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ゲインスパン社、ネットワークプロトコルも提供するZigBee/Wi-FiコンビIC

米カリフォルニア州シリコンバレーを拠点とするゲインスパン社は、ネットワークスタックも提供するサービスと、それを組み込むWi-Fi(802.11ベース)と802.15.4ハードウエアを集積した通信用SoCである、GS2000を開発した。用途はHEMSやBEMSなどのスマートハウス(ビル)やIoT(Internet of Things)に向ける。

図1 エコーネットライト準拠のHEMS用の開発ボード  ルネサスがパートナー

図1 エコーネットライト準拠のHEMS用の開発ボード  ルネサスがパートナー


ゲインスパン(GainSpan)社は、2006年にインテルをスピンオフして設立された。これまで日本ではルネサスエレクトロニクスとパートナーシップを結び、HEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building Energy Management System)向けの開発ボード(図1)をスマートハウス産業に提供してきた。これは、ルネサスの16ビットマイコンRL78とゲインスパンのGS1100などを搭載した低消費電力の開発ボードで国内のスマートハウス向けの規格Echonet Rite(エコーネットライト)に準拠する。この規格は経済産業省の主導の元で作られた。ただし、Wi-Fiをベースにしていた。コンセントからどの程度の電力を使っているかを検出するためのスマートプラグ(図2)も開発している。


図2 スマートプラグ

図2 スマートプラグ


新開発のGS2000は、同一IC上にWi-FiとZigBeeを内蔵している。このため用途はもっと広がる。同社CEOのGreg Winner氏(図3)は、Wi-FiとZigBeeをミックスしていることで通信できる距離を数mから数百mまで好きなように変えることができる、と述べる。さらに、IPベースのWi-Fiを使っているため各自のスマートフォンで、センサノードやネットワーク家電を点けたり消したりといった制御ができる。


図3 GainSpan社CEOのGreg Winner氏

図3 GainSpan社CEOのGreg Winner氏


スマートハウスでは、さまざまな電気機器を管理するため、各機器の電力を電流センサという名のセンサで検知しており、その情報をアクセスポイントであるHEMSに届ける。このトポロジー構成はセンサネットワークとよく似ており、プロトコルや周波数などを仕様に合わせればスマートハウスにもセンサネットワークにも使える訳だ。

ハードウエア的にはこのICは、802.11/b/g/nと802.15.4(ZigBee含む)準拠のモデムとRF回路(受信用のLNAと送信用のPA、送受信スイッチも含む)、システム制御用ARM Cortex-M3コアや周辺インターフェースを内蔵した回路と、ネットワーク制御用ARM Cortex-M3コアやROM、SRAM、フラッシュ、周辺、暗号回路エンジン(RSAとWi-Fi用のWPA2)などを集積した回路からなる(図4)。SPI、UARTなどさまざまな標準インターフェースも集積している。このGS2000は65nmのTSMCプロセスで製造している。


図4 GS2000のブロック図 出典:GainSpan

図4 GS2000のブロック図 出典:GainSpan


このハードウエアだけではなく、ソフトウエアスタックも提供するため、応用やユーザをいろいろ広げることができる。例えば、スマートハウスでは、日本だとエコーネットライトという経産省主導の規格に準じたプロトコルを使い、海外だとSmart Energy 2.0の規格を使うが、ユーザがプログラムすればいずれにも対応できる。さらに、Wi-Fiと802.15.4のモデム/RF回路も用意しているため、Wi-Fi上あるいは802.15.4上にエコーネットライトを構成できる。ZigBee IPは6LoWPANのIPv6にも準拠しているため、IoTのような広い範囲のデバイスにつなぐことができる。加えて、ピアーツーピアのWi-Fi Directなども将来に備えて用意している。

ゲインスパン社は、ソフトウエアをサポートするためインドのバンガロールにR&Dオフィスを設置している。ベンチャーキャピタルとしてIntel Capitalはいうまでもなく、New Venture PartnersやSigma Partnersなど8社が出資している。

(2013/03/13)

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