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マキシム、高集積 ICでユーザの低コスト化と性能向上を訴求

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米アナログ/ミクストシグナル半導体大手のマキシム・インテグレーテッド(Maxim Integrated)がミクストシグナルICの高集積化によって売り上げを伸ばしていることを9月に伝えたが(参考資料1)、集積度を上げてもコストはそれほど上がらないという彼らの考え方が明らかになった。

米国PR会社のGlobalPress Connectionが主催するEuroAsia2012において、半導体ユーザは各成長分野での高集積化を望んでいることに気がついたとマキシムは述べた。ユーザにアンケート調査を行った結果、この要望をつかむことができた。そこで、無線の小型基地局や、基地局内の光通信モジュールや40Gbpsのサブシステム、自動車車内通信ネットワーク処理用のSerDes(シリアライザ/デシリアライザ)やバッテリ管理システム(BMS)、あるいはスマートフォン向けのパワーマネジメントIC、などの高集積化を進めている。

ユーザのシステムを理解できれば高集積化は決して高くならない、とマキシムのエンジニアやマネジャーは考えている。例えばリファレンス(基準電圧)回路を使うオペアンプやコンパレータなどを複数使う回路では、リファレンスがそのオペレータやコンパレータの数だけ必要になる。これらを1チップに集積すれば、リファレンス回路は1個で済ませられる。クロック発生器も同様だ。個々のICでシステムを組めば重複する回路が出来てしまうが、共通のオーバーヘッドを減らすことで部品コストは下がることになる。加えて、高集積化すると信号配線が短くなり、その性能は上がる。

高集積ICの価格の絶対値はもちろん低集積ICの価格よりも高い。ICチップそのものに付加価値を与えているからである。例えば、100円の低集積ICだと単価5円の外付け部品が100個必要だとしよう。集積度を上げて200円のICにすると5円の外付け部品が20個で済むなら、トータルコストは600円から300円に安くなる。ユーザにとっては、トータルシステムのコストを下げられるため、高集積化のメリットは大きい。メーカ側はその価格を敢えて下げる必要はない。


図1 マキシムが採っている戦略の三つの戦術;イノベーションと集積化、バランス

図1 マキシムが採っている戦略の三つの戦術;イノベーションと集積化、バランス


マキシムの戦術として、システムに使う半導体をすぐに高集積にする訳ではない。まず新しい技術を導入しシステムを改善し(イノベーション)、機能が完全動作することを確認してから高集積化(インテグレーション)に持っていく(図1)。彼らは設計とプロセス技術以外にもWLP(ウェーハレベルパッケージ)技術も持っている。設計技術のノウハウに加え、ソフトウエア技術にも長けている。このためバランスの良い半導体チップを開発することができる。彼らの高集積ICは純粋なアナログICではなく、小型プロセッサコアも搭載されデジタル回路もふんだんに含めたミクストシグナルSoCである。

最近、パッシブ部品の集積化を検討し始めた。独自の設計手法と組み合わせ、すでにその効果を得ているという。例えば、スピーカー駆動用のチャージポンプ回路にキャパシタを積み、昇圧回路を集積した例があるとしている。パッシブも集積した半導体チップは数年先には製品になると見ている。

パワーマネジメント(PM)ICの売り上げもこれから期待できるとしている。というのは、サムスンのスマホには同社のPMICが搭載されているが、アップルのiPhoneにはまだ入っていないからだ。PMICにはDC-DCコンバータに加え、バッテリマネジメント回路や外部からマイコンで制御するための通信バスなども集積しており、アプリケーションプロセッサやモデムなどの動作状況を外部の温度センサからの情報を元に制御する。この結果、アプリケーションプロセッサの消費電力を下げることができる。

参考資料
1. マキシム、アナログの高集積化で成長を加速 (2012/09/25)

(2012/11/06)

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