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米アナログ半導体メーカーがカーエレ市場にトップギアチェンジ(リニア編)

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自動車用のアナログICとしてこれまで実績の多い米リニアテクノロジー(Linear Technology)社(通称LTC)は、次の大きな市場としての電気自動車(EV)市場に早くから入り込み、例えばリチウムイオン電池の充放電を管理するバッテリマネジメントICは第2世代を迎えた。またEVではDC-DCコンバータも改めて大きな市場となる。

LTCが製品化している自動車用システムは多い。例えば以下のようなシステムで使われている;
・インフォテイメント
  カーナビゲーションとテレマティクス
  オーディオ&ビデオ
  ダッシュボード、ヘッドアップディスプレイ
・安全性
  衝突防止システム
  アクティブ駐車支援システム
  レーン検出警報
  リアおよびサイドのカメラシステム
・エンジン回り
  バッテリマネジメントシステム(BMS)
  アイドリングストップ
  ECUの電源
  X-by-wireシステム(ハンドル、スロットル、ブレーキ向け)
  直噴システム
  電気式ポンプ
・LED照明
  エクステリア:ヘッドランプ、日中走行ランプ、ブレーキランプ
  インテリア:ドーム、マップ、指示計、ドア、装飾、計装全体、液晶バックライト
・エミッション制御
  ノイズキャンセラ
  EMC対策

カーエレでは、特に電圧範囲が広く、ノイズ低減はマストである。温度範囲は、設置場所によっては、-40〜+85℃、125℃のグレードだけではなく、 -40〜+140℃あるいは+150℃といったHグレードの仕様もある。上に述べた幅広い自動車用エレクトロニクスの中から電気自動車(EV)時代に大きな市場となりそうな2つのICを紹介しよう。


図1 LTCの第2世代のバッテリマネジメントシステム 出典:Linear Technology

図1 LTCの第2世代のバッテリマネジメントシステム 出典:Linear Technology


一つは第2世代のBMSである。自動車は3.6Vのリチウムイオンセルから330〜340Vに昇圧するため、直列に100本近く接続する(図1)。初期性能として電池容量のバラつきを少なく選別して設置したとしても、使っている内に充放電を繰り返すことによって、直列接続されたセル間のバラつきが大きくなってくる。一つのセルは満充電されていても別のセルはまだ充電されていないという状態が起きる。これを防ぐためにセル1個ずつの充電状態を管理し揃えるという仕事を行う。2年前に発売された第1世代のBMSチップLTC6801は1チップで12個のバッテリを管理したが、第2世代チップLTC6803も同様に12個のバッテリを管理する。

LTCが2年前に第1世代のBMSチップLTC6801を出荷した後、デンソーや米マキシム社などのメーカーもBMSチップを開発しており、今やアナログメーカーが競い合っている市場となっている。2010年の中国上海万国博覧会で走ったハイブリッドバスにも使われたとしている。

第2世代チップLTC6803は第1世代と同様、12個のバッテリを管理する。さらに、使い勝手を重視、セル同士をデイジーチェーンでつなぐためのシリアルインターフェースを内蔵すると共に、遮断時における消費電流を12μAに下げた。各セルの充電状態をモニターするのは、内部電圧と電流、セル温度であり、これまでの履歴情報もレジスタに記憶しておく。セル温度をこれまで以上に正確に測定するため外部の温度センサ端子に加え入力近くにも温度センサを集積した。電圧、電流、温度は常に測定しておく。分解能12ビットのσ方式のA-Dコンバータを集積しているのは第1世代と同じだが、今回はノイズフィルタもA-Dコンバータに内蔵してあり、ノイズによる誤動作を防いだ。A-Dコンバータは分解能が高くなればなるほどノイズに感じやすくなるため、ノイズフィルタを集積した。加えて、BIST(built-in self test)機能も内蔵し、ICそのもののテストも可能になっている。


図2 第2世代BMSチップの応用例 出典:Linear Technology

図2 第2世代BMSチップの応用例 出典:Linear Technology


動作としては、各セルの電圧を内蔵のMOSFETスイッチとマルチプレクサによって切り替え、12ビットのσA-Dコンバータでデジタルに変換、制御すると同時にレジスタにも記録する。このチップはアナログというよりもアナログデジタルのミクストシグナルICという位置付けになる。制御信号、データ信号共デジタルであり、測定系の回路はアナログである。また、このICは、構造や材料などさまざまなリチウムイオンバッテリとスーパーキャパシタにも対応するという。

もう一つのICは、DC-DCバックコンバータである。これは、決まった出力のリチウムイオン電池から、さまざまなICを動作させるためのさまざまな電圧を作り出す必要が出てくることに対応するものである。DC-DCコンバータは今のカーエレ以上にEVでは大市場となる。ここでは2A出力の同期型バック・ブーストコンバータを新製品として採り上げる。これは、出力が5Vなり一定で入力範囲が大きい電圧を特徴とする。ただし、出力電圧は2.7Vから20Vまで選択できる。

この新製品LTC3115-1は、入力電圧よりも高い電圧も、低い電圧も作り出すことができる。入力電圧は2.7Vから40Vまでこのチップ1個で対応できる。DC-DCコンバータは一般に、昇圧する回路と降圧する回路が全く違うため、入力電圧が高いか低いかを判断し、どちらかの回路へとつなげる。このため出力の電流容量は降圧だと2Aだが、昇圧だと1Aになる。この電源ICはMOSFETを使った整流方式であり、同期させる周波数を外付け抵抗で変えることができる。その可変範囲は100kHz〜2MHz。自動車向けを考慮して出力のリップルノイズは、12V入力で出力5V、1Aの時5mVp-pと小さい。


図3 昇圧・降圧両用のDC-DCコンバータ 出典:Linear Technology

図3 昇圧・降圧両用のDC-DCコンバータ 出典:Linear Technology


エンジン制御用に、SEPIC方式(single ended primary inductance converter:1つの回路で入力電圧よりも高くも低くもできる方式)DC-DCコンバータと、6種類のリニアコンバータ(5V出力で電流容量が150mAから500mAまで揃えている)を1個のICに集積したマルチチップモジュールとしてのμモジュールLTM8008も新製品としてリリースしている。ICのサイズが15mm×15mm×2.82mmと小さなLGAパッケージに収容されている。

カーエレクトロニクスでは機械部品をできるだけシリコンに置き換えようとする動きがある。例えば、力を発揮する機能は従来油圧方式で行われていたが、これをモータ方式に替えようとする。EVではますますその傾向が強く、低速時のハンドルを軽くするパワーステアリングや、スロットル操作、ブレーキ操作にモータを利用する、Steering-by-wireやThrottle-by-wire、Brake-by-wire、オイルポンプなどに使われるようになる。電流をさらに精密に測定して、制御や診断、安全性なども重要になるという。そのための電流センサによるモータ制御ICであるLT1999もある。

(2011/11/25)

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