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オーストリアマイクロ、液晶テレビ用LEDドライバの低コスト技術を発表

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より均一に、より低い消費電力で、より低コストで、という液晶テレビ用LEDバックライトICがさらなる低コスト化を進めている。欧州のオーストリアマイクロシステムズ(austriamicrosystems)社は、5年以上も前からLEDバックライトドライバを手掛けてきたが、問題は常に低コスト化だった。

図1 欧州austriamicrosystems社が発表した第3世代液晶テレビ用LEDドライバ

図1 欧州austriamicrosystems社が発表した第3世代液晶テレビ用LEDドライバ


この10月に第3世代のバックライト用LEDドライバを発表した(図1)が、その狙いはひたすら低コスト化である。LEDバックライトは輝度のムラが少しでも現れると、ディスプレイ全体で目立つため、きめ細かい制御が求められる。このためには均一性が優れていなければならない。この均一性を確保した上で低コスト化を図ることになる。いかにしてコストダウンを図るか。最初は外付けのパワーMOSFETの数を減らした。さらに、直列に接続するLEDチップの数を減らした。それを駆動するパワーMOSFETをコストのかかる高耐圧にしなければならないからだ。各LEDストリングにパワーMOSFETは1個しかつなげず、しかも耐圧を高くしない。

一方、LEDバックライトには液晶の背面からLEDを直接照らす直下型と従来の蛍光管方式のようなエッジライト型があるが、LEDの数はエッジライト型の方が少なくてすむため、この方式へ移行しつつあるという。

今回、第3世代と呼ぶ8チャンネルと6チャンネル分のLEDドライバICを発表したが、少し前に発表した16チャンネルと12チャンネルのドライバICと完全な互換性を保つ。液晶テレビのスクリーンサイズに応じて、6チャンネルから16チャンネルまでの製品を選択できる。LEDバックライトを利用した液晶テレビはこれから立ちあがると米市場調査会社のiSuppliは予測している(図2)。


図2 液晶テレビのLEDバックライト市場 出典:iSuppliとaustriamicrosystems

図2 液晶テレビのLEDバックライト市場 出典:iSuppliとaustriamicrosystems


これらの製品には隣接するLEDストリング列がもし電気的にショートすると残りの正常なストリング列の光量が変わってくるため、それをどの程度まで許容するかを予め決めておく必要がある。それによって切れたというアラームを出すようにするという。ドライバの制御はSPIインターフェースを通して外部からのソフトウエアで制御する。この第3世代のチップAS3820(16チャンネル)とAS3821(12チャンネル)、AS3822(8チャンネル)、AS3823(6チャンネル)は量産立ち上げているところだとしている。ICの価格は1000個購入する場合、AS3820が2.0ドル、AS3821は1.8ドルである(参考資料1)。

同社パネル照明の製品ラインディレクタのHerbert Truppe氏は、次の第4世代のLEDドライバのシステムアーキテクチャについても語った。LEDストリング列にはそれぞれMOSFETと、定電流にするための電流シンク回路をつなぐが、各ストリングによってLEDのトータルのVF(順方向電圧の合計)が違う。このため理想的には、各ストリング列に1個の電源が必要となるが、それではコストがかかりすぎる。一方で、1個のDC-DCコンバータ電源で全てのストリング列に電流を供給すれば、消費電力が大きくなりすぎる。

そこで、同社が今取り組んでいるのは、各ストリングへの電源をスキャニングしながら供給するという技術だ。電源電圧をスキャンしながらシンク電流が一定になるように常にフィードバックしベストの電圧を送り出す。液晶画面を通してその光を見る人間の目にはちらつきが見える恐れがあるが、Truppe氏は高速でスキャニングすると人間の目は視覚的についていけないため、ちらつきを感じないと言う。

この方式は複雑な制御が求められるが、LEDメーカーにとってはメリットが大きい。LEDの特性を揃えなくて済むからだ。現在は大手顧客と共同でこの技術を開発中で、2013年には量産へ持っていきたいとしている。

LEDストリング列の制御には、輝度が常に一定になるように制御する訳だが、光の輝度は電流で見るよりも輝度そのもので検出する方が人間の目には自然に感じるようになる。このためには光のセンサが必要になる。センサ製品を持っていないオーストリアマイクロシステムズは、米国テキサスにあるTAOS(Texas Advanced Optoelectronic Solutions)社を今年買収した。TAOSはもともとTexas Instruments(TI)からスピンオフして生まれたセンサメーカー。光の明るさを検出する照度センサだけではなく、色温度を検出するカラーセンサ、赤外線を検出する近接センサなどを持っている。

こういったセンサとLED照明を組み合わせると、新しい応用がいろいろ開けてくる。例えば、近接センサを利用してスマートフォンを耳に当てるとディスプレイのバックライトが消える、ノートパソコンの前にいる人がいなくなるとバックライトが消える、テレビのリモコンに手を近づけるとテレビがオンする、というような応用が出てくる。赤外の近接センサで距離を測り、その距離に応じて何かさせるといった応用が今後出てこよう。

参考資料
1. Austriamaicrosystems社のLighting Management製品一覧ウェブ

(2011/11/09)

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