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米アナログ半導体メーカーがカーエレ市場にトップギアチェンジ(Intersil編)

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アメリカのアナログ半導体メーカーがカーエレクトロニクスに力を入れ始めた。インターシル、リニアテクノロジ、マキシムなどがその戦略鮮明に打ち出した。もともとカーエレクトロニクスにはアナログ半導体を多用する。さらに将来のクルマにはデジタルはもちろんだがアナログ半導体も新分野に使われる。

図1 Intersil社の幹部  左がCEOのDave Bell氏、右はJonpaul Jandu氏

図1 Intersil社の幹部 左がCEOのDave Bell氏、右はJonpaul Jandu氏


先進国ではクルマの所有台数はほぼ飽和した。今は買い替え需要しかない。にもかかわらず、なぜ今カーエレか。その答えをインターシル(Intersil)社CEOのDave Bell氏(図1)はこう述べる。「発展途上国のクルマの数はこれから伸びていく。さらにクルマ1台当たりに使われるシリコンの数や面積も増えていく傾向にある。カーエレ用半導体市場はその掛け算で成長する」と。2011年から2016年までのカーエレ用アナログ半導体の年平均成長率CAGRは9%と高い。2016年には現在の250億ドルから400億ドル市場になると米市場調査会社のDatabeansは予測する。中でもハイブリッドカー/電気自動車(HEV/EV)向け市場は39%/年で成長すると見積もっている。この市場では先進国・発展途上国の区別はなくどちらも39%前後で成長するという。

インターシルが力を入れるのは液晶ディスプレイプロセッサと呼ぶ高集積の映像・画像処理ICだ。カーナビやDVDのディスプレイ用エンジンだけではなく、ゲーム、バックモニター用のディスプレイにも使う。複数のA-Dコンバータやデジタルインターフェースの入力部、ビデオデコーダ、画像拡大・縮小機能、グラフィックスコントローラ、OSD(on-screen display)、マイコン、LEDコントローラ/ドライバ、タッチスクリーンコントローラ、バックライトコントローラなどの機能や回路を搭載した1チップの半導体で、プロセッサと呼ぶのにふさわしいほど高集積のICである(図2)。


図2 Intersilが狙うクルマ用ディスプレイプロセッサ 出典:Intersil

図2 Intersilが狙うクルマ用ディスプレイプロセッサ 出典:Intersil


このICは、Techwell社を昨年買収することでインターシルが手に入れた。Techwell社は日本ではなく米国で起業した日本人小里文宏氏をCEOとする画像処理プロセッサの専門会社だった。米国で起業した後に日本にも事務所を作った文字通りグローバルな会社だった。買収によりTechwellの社員はインターシルに移ったが、自分たちが設計したICが実現できるとして、担当のビジネス開発マネジャーJonpaul Jandu氏(図1の右)はその喜びを表す。

米国の法律(Kids Transportation Safety Act)により2014年までに全ての新車にはバックモニターディスプレイを最低1台以上装着することが義務付けられることになった。すでに高級車や日本のクルマにはバックモニターが装着されているが、これが義務化される。米国以外でも子供の安全を守るという立場からこのような方向に向かうはずだとJandu氏は見ている。

この一つのソリューションとして、インターシルが提案したのは左右のバックミラーに液晶パネルを埋め込むというアイデア(図3)。同氏はバックミラーを見ながら停止したり駐車したりするのはクルマのドライバーとして自然の動きだから、この方式を提案したと語る。現在バックモニター機能を持つクルマでも、カーナビのスクリーンとバックミラーの両方を見ながらバックするため、ドライバーは両方を見るのに首を動かさなければならない。バックミラーに実画面とモニター画面の両方を見ることができればバックの車庫入れなどが楽になる。


図3 バックミラーに組み込んだ液晶パネル バックモニターとして使う

図3 バックミラーに組み込んだ液晶パネル バックモニターとして使う


このICは文字通り1チップで液晶ディスプレイの画像情報を処理できるため外部メモリも要らない。このため内部にラインメモリーを持ち、スキャンしながらビデオ処理を行っているとJandu氏は言う。またPinP(ピクチャインピクチャ)機能にはバッファメモリで十分だとしている。ICを使うパネルメーカー、それを組み込む装置メーカー、最終的なクルマメーカーのすべての業種に日本企業が入っている。数年先には世界中のクルマに搭載されることになろう。

インターシルは純粋なアナログICでもクルマ用製品に力を注ぐ。クルマのディスプレイの輝度を周囲の光によって変えるための制御用センサーIC、ISL76671もリリースした。これは0.01ルクスという人間の目が判別できる明るさ(暗さ)の光にも応答でき、0.01~100ルクスの光を検出する。2.1mm×2.1mmのDFNパッケージ入り。

さらにデュアル出力のDC-DCバックコンバータ(片チャンネル800mA出力)や、バッテリ出力が低下してもレギュレータ電圧が低下しないバックコンバータISL78200(3~40V入力で出力5V、2.5A)も同時にリリースしており、共にカーエレ用の電源レギュレータとして使う。このほか、HEV/EV用のリチウムイオンバッテリモニタリング用のISL78600やD級アンプのD2AudioアンプICも開発している。

(2011/11/07)

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