セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

スパンション、シリアルNORフラッシュを高速化、66MB/秒の読み出し実現

|

米スパンション(Spansion)社が、もともと高速読み出しを特長とするNORフラッシュを低コストで提供できるシリアル読み出しメモリー製品群を強化している。シリアルメモリーはもともと安くするためピン数を減らす方式だったが、NANDフラッシュよりも高速に読み出せるという特長を発揮できるようになった。スパンションはNANDとは競合しない高速フラッシュを低コストで実現するための分野を狙っている。

図1 スパンションのシリアルNORフラッシュ

図1 スパンションのシリアルNORフラッシュ


NORフラッシュは、NANDと比べ容量は小さいが読み出し書き込み速度が速い。ある意味で並列動作させているからだ。一方でシリアルアクセス動作をさせるということは、直列動作であるため原理的に動作は遅くなる。しかし、ピン数は少なくてすみチップの実装面積は小さくなる。今回のスパンションのNORフラッシュは、SPIインターフェースを通してシリアルにデータを書き込み/読み出ししながら、90nmプロセスとDDRにより読み出し速度を上げ、従来のNORフラッシュよりも低いコストのICを実現というもの。

狙うべき用途はまずクルマ用のインフォテインメント関係。この用途はカーコンピュータ動作そのものであるから、NORフラッシュによってインスタントオン、すなわち電源を入れるとすぐに立ち上がることができる。しかも、クルマは高温動作が求められるため、不揮発性メモリーの強さが生きてくる。105℃まで動作可能だとしている。ドライバに表示する情報を3次元グラフィックで提供するのに1Gビット品だとDRAMが要らないというメリットもある。スマートメータ用途も狙う。ここは屋外に設置されるため、高温・低温動作に加え長期信頼性も要求される上、個人情報となるセキュアであることも求められるため、不揮発性メモリーの利点が生きる。テレビやプリンタなどでは最大256Mビット程度の小容量ですむ上に、インスタントオン特性が必要で、低コストが要求される。こういった用途にピン数が少なく比較的高速のシリアルNORフラッシュが向く。

大容量化ではNANDには及ばないが、それでも1Gビット程度ならMirrorBit 構造のNORフラッシュのメリットが生きる。生まれながらに2ビット/セル構造だからである。今回は8ピンのSOパッケージで4Mビットから128Mビットまで、16ピンSOと24ボールBGAパッケージで最大1Gビットまでの製品を取りそろえ、SONパッケージ品も用意した。


図2 パッケージに合わせて4Mビットから1Gビットまで揃える 出典:Spansion

図2 パッケージに合わせて4Mビットから1Gビットまで揃える 出典:Spansion


今回、シリアルアクセスながら読み出し速度を上げることができたのは、DDR(double data rate)を使ったからである。すなわちクロックパルスの立ち上がりでデータを4ビット分読み出し、降下エッジでさらに4ビット分を読み出すことで、1クロック当たり8ビットデータを読み出せるようになった。この結果、データ転送レートは66MB/秒を実現できた。また、書き込み・消去時間も従来よりも高速にした。これは512バイトのページ書き込みと、256バイトの消去ができるようにしたことによる。

NORフラッシュの応用としてセキュリティを強化する用途がある。ここでは、4種類のデータ保護を導入した。まずブロック書き込み保護において一時保護と永久保護の領域を設けた。一時保護は一時的に電源電圧が落ちた場合に備えるもの。さらに1024バイトのOTP(one-time programmable)プログラミング領域も設けた。この中に128ビットのID領域を設けた。ここに指紋情報など128ビット分のID情報を記憶する。3つ目は永続的なセクターにロックをかけることである。最後にASP(Advanced sector protection)領域を設けた。これはビットマップレベルでロックをかけるもの。この中に、永続的に保護するモード、パスワードによる保護モード、パスワードによる読み出し保護モードなどを用意した。

(2011/10/12)

月別アーカイブ