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NFCやRFIDに注力してきたNXP、さらに勢いを増しチップを年末量産へ

オランダのNXP SemiconductorはNFC(near field communication)やRFID用半導体を100種類以上も展開しているが、自動認識展2011においても非接触のRFIDカードから、10m程度までの通信を可能にするUHF帯通信RFIDカード、そしてNFCなど新しい市場を狙ったIC製品群を発表した。

RFIDチップは、RFトランシーバとメモリなどを内蔵したICで、外部からの電波をRF受信回路で受け、電源回路を起動すると同時に、メモリにある固有情報を読みだしRF送信回路から外部のリーダー(読み取り機)に送るという動作を行う。電池は不要で、外部からのRF信号を整流して電源電流を作り出す。ここでは、ICを取り付ける製品の固有情報すなわちID(identification)情報を読みとるのが主な仕事である。このRFIDチップは文字通り身分証明書や製品のIDなどに使う。ICタグを洋書やDVD/CD/ブルーレイディスク、やや高価な宝飾品、あるいは電子機器、包装段ボールに取り付けたり、米国の大型スーパーマーケットWallmartや衣料品のGAPではジーンズにタグを取り付けている。偽造防止、万引き防止、生産管理、物流管理などに使われている。図書館の書籍に付けて自動返却ボックスを使えるように書籍管理に利用することもある。リーダーから発射する電波には3種類あり、HFの13.56MHz、アマチュア無線の433MHz帯、UHFの900MHz帯を利用する。


図1 トランプに装着したRFIDを読みとるアンテナ

図1 トランプに装着したRFIDを読みとるアンテナ


今回NXPが力を入れているRFIDは、13.56MHzのICで、製品名I・CODE ILTと呼び、このチップをカードに入れておくとカードが数十枚重なっていても識別できる(図1)。最大70枚程度まで可能だという。従来は2〜3枚程度しか読めなかった。今回、アンテナコイルの共振点を高くするため、静電容量をできるだけ小さくした。

データをやり取りする速度は848kビット/秒と高速で、700タグ/秒の処理ができる。今年決まったISO/IEC18000-3 Mode3規格に準拠した最初の製品となった。この規格は無線のプロトコルをノイズに対して強くし、チューニングを容易にしたものだという。

自動認識展2011で数多くの展示があった、医薬品の管理にはこのタグが向く。数十個の小さなガラス管の一つ一つにタグを設けていれば医療ミスを減らすことができる。薬品や造影剤、血液などを保存し管理する小さなガラス管の底にコイルとチップを埋め込んでおくような応用では一括でガラス管を識別でき、医療ミスを減らすことができる。


図2 RFIDにI2Cインターフェースを付けマイコンで制御しやすくした

図2 RFIDにI2Cインターフェースを付けマイコンで制御しやすくした


自動認識展で展示した、もう一つ力を入れている製品はUHF帯を利用したRFIDチップUCODE I2Cであり、タグを付けた商品情報を、マイコンを使ってデータログできるようにしている。このため非接触インターフェース部分からI2Cインターフェースを使ってマイコンと接続し(図2)、マイコンからの制御信号によりデータを保存したり制御したりする。例えば、温度や湿度、圧力などのセンサーからの情報をモニター、記録することで、食品や薬品の消費期限を管理することができる。商品の陳列棚に価格情報を表示する小型液晶ディスプレイに価格や割引情報を更新することは簡単にできる。

このチップは、チップとアンテナだけで使うような従来のタグ的な用途ではなく、小さな電子機器に組み込んで使う。3kビットのメモリを内蔵しリーダーから書き換えることができる。電源は機器側の電池などから供給する。開発ボードも用意している。これら2種類のチップとも今年の末から量産を開始する予定である。

携帯電話をリーダーに使う
NFC技術は、2011年5月に米グーグルが携帯端末にNFCチップを標準装備することを発表して以来、注目を集めている。決済機能も集積したNFCチップを携帯端末に入れると、FeliCaと同じ「おサイフケータイ」になる。NFCはもともとオランダのフィリップス社が開発してきたMIFAREという規格と、ソニーが開発してきたFeliCa規格を統合した、上位の概念となっている。ここではデータを書き替えるという作業も伴う。


図3 携帯電話がリーダーになる

図3 携帯電話がリーダーになる


このNFCリーダーチップを読みこむことで、URLなど少ないタグ情報を読みとり、携帯電話やスマホがインターネットにアクセスし、より詳細な情報を画面に表示する。例えばバス停にパッシブなNFCチップを埋め込んでいれば、バスの運行状況をウェブから読みとることができる。美術館や博物館でも美術品や骨とう品などの展示物の前にNFCチップを埋め込んでおけば展示品に関する情報を自分のスマホでウェブから見ることができる。

(2011/09/07)

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