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USB3.0インターフェースが携帯端末に載る日が近づいた

スマートフォンやタブレットなど携帯端末にも最大データレートが5GbpsのUSB3.0インターフェース規格が載るようになる日が近い。米サイプレスセミコンダクタ(Cypress Semiconductor)はUSB3.0インターフェースを載せたICを2機種発表、一つは携帯端末向け、もう一つは汎用向けである。

図1 USB3.0を備えた携帯端末向けチップセットIC 出典:Cypress Semiconductor

図1 USB3.0を備えた携帯端末向けチップセットIC 出典:Cypress Semiconductor


USB3.0チップはルネサスエレクトロニクス(旧NECエレ)が世界に先駆けて出したが、USB3.0とPCI Expressの端子を備え、狙いは明らかにパソコンやコンピュータだった。今回のサイプレスのICは携帯機器や組み込み系を狙ったチップであり、コンピュータ用とは仕様が異なる。

携帯機器向けのWest BrigdeのBeniciaは、USB3.0のインターフェース側と、SDカードやeMMCなどのストレージとのインターフェース側、そしてアプリケーションプロセッサと接続する側、の3つのポートがある。West Bridgeは、パソコンのNorth BridgeやSouth Bridgeになぞらえて、携帯機器向けの周辺チップセットとしてまとめたもの。携帯機器に搭載し、USB3.0を出力インターフェースにつけるとパソコンにつなげることができ、HD1080pの高解像度のビデオファイルをPCやテレビに転送できる。例えば5GBのビデオなら10分でダウンロードできる上、携帯機器のバッテリを充電する場合でも最大900mAを流せるため、1400mAHのバッテリだとUSB2.0なら3時間6分かかるところを1時間44分ですむ。

このチップのメリットは、SDIOストレージ端子からこのチップを通り、パソコンへ直接データ転送できるという点だ。アプリケーションプロセッサの負荷は軽くなるため携帯の機能を損なうことはない。例えば、ゲームや音楽を聴いているときに電話がかかってきたら、ゲームや音楽のデータをいったんストレージに貯め込み避難させる必要がある。この場合、データトラフィックが多いと、貯めるのに時間がかかり電話を受けるのにしばらく待たなければならなくなる。このチップを使えばこのデータ転送が速いため、すぐに電話に出ることができる。

USB2.0 OTG(On-the-go)のバックワード互換性もあり、従来のUSB端子としても機能する。SDIOは2ポートあり、性能は2倍になる。4.6mm×5mmのWL(ウェーハレベル)CSPパッケージに収容している。システムの制御にはARM9プロセッサをコアとして集積している。


図2 汎用のUSB3.0チップ 出典:Cypress Semiconductor

図2 汎用のUSB3.0チップ 出典:Cypress Semiconductor


もう一つは汎用的なEZ-USB FX3である(図2)。West Bridgeチップと同様、出力にはUSB3.0とUSB2.0 OTG端子を設けている。このチップは、出力はUSB3.0であるが、別のポートはGPIF(general purpose interface)IIと呼ばれるプロセッサ用インターフェースと、汎用のデジタルインターフェースを持つ。GPIF IIはマイクロプロセッサやFPGA、ASIC、イメージセンサーなどとのインターフェースであり、100MHzクロックで動作する32ビットのパラレルインターフェースである。さまざまなプロセッサなどと、256個のステートを変えることでプログラムする。他の汎用インターフェースとしては、I2C、SPI、UART、I2Sに対応する。

このチップを開発したのは、従来のUSB2.0ではビデオカメラから1080p、60fps、24ビットカラーの映像データを非圧縮で送るには遅すぎるからである。スキャナ画像を送る場合でも例えば、300dpiの解像度で120ページ/分のスキャナデータを送るにはやはりUSB2.0では遅いという。

チップは0.8mmピッチで121ボールの10mm×10mmのBGAパッケージで入手できる。この汎用チップはユーザーサポートに開発キットも用意しており、チップのサンプルと同時に入手できる。

(2011/07/28)
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