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SiLabsがプログラマブルな1チップ多クロック生成ICでタイミング製品市場へ

米シリコン・ラボラトリーズ社は、あらゆるシステムのクロック発生・調整を行うタイミング市場を強化し始めた。これまでも700MHzといったハイエンドのクロックジェネレータを製品として持ってはいたが、ミッドレンジからローエンドまで製品ポートフォリオを広げていく。1チップで複数のクロックを生成、しかもプログラマブルなLSIを製品化した。

図1 1チップで複数のクロックを作り出す 出典:Silicon Laboratories

図1 1チップで複数のクロックを作り出す 出典:Silicon Laboratories


水晶振動子などの共振器1個を使い、複数のクロック信号を発生させるLSIを、ハイエンドからミッドレンジまでカバーするために持っている。この1チップのLSIを使って、マイクロプロセッサやイーサーネット制御、FPGAなどへのクロックなどを供給する(図1)。従来だと、水晶振動子とICのモジュールを複数用意して複数のクロックジェネレータを作製してきたが、この1チップLSIを使えばBOM(部品)コストが下がると同時にプリント基板の面積も半減するという。しかもプログラム可能で顧客の欲しいクロック周波数にカスタマイズできる。

とはいえ、1チップだけでプリント基板上のLSIのクロック信号を供給する場合には、特に高周波だとクロックスキューや遅延が生じた場合に使えなくなる恐れがある。そのような場合、プログラム可能であるという強みを生かして基板実装後も調整できる。立ち上がり時間や降下時間の調整も実装後に行えるため、問題が生じればクロック周波数を変えたり、波形を調整したりする。後で述べるが、調整して2週間以内に製品を届けることができるという。


図2 シリコン・ラボラトリーズ 日本法人代表取締役社長 大久保義司氏

図2 シリコン・ラボラトリーズ 日本法人代表取締役社長 大久保義司氏


また量産型ローエンド市場ではMEMSを使ったソリューションを開発中で、昨年MEMSを手掛ける米Silicon Clocks社を買収した。これに関する詳細はまだ発表できないとしているが、来年にはCMOSLSIとMEMS発振器を集積したLSIを製品化する予定だ、と同社日本法人代表取締役社長の大久保義司氏は言う。ただし、MEMSといえどもローエンドだけではなくミッドレンジからハイエンドへも展開していくことになるだろうとしている。

シリコンラボズのタイミング市場における製品戦略は、高集積のミクストシグナルLSIを使い、任意の周波数で複数のクロック信号を作りだすだけではない。ウェブサイトを通して顧客から要求される任意の周波数のクロック信号を調整し、2週間以内に出荷できるという短いリードタイムも特長とする。納期短縮のために、制御レジスタを1チップ上に集積しておき、これをファームウエアとしてシリコンラボズ側が切り替えるだけで、顧客の望む周波数にプログラムする。


図3 シリコンラボズの1チップソリューション 出典:Silicon Laboratories

図3 シリコンラボズの1チップソリューション 出典:Silicon Laboratories


同社がDSPLLと同社が呼ぶ技術(図3)では、入力周波数を持つ信号がA-D変換された後、DSPのデジタルフィルタを経て、基準となる水晶振動子の信号と組み合わされてDVCOによって微調整される。さらにPLL分周回路を通して新しい周波数のクロック信号が出力される、という訳だ。このチップには電圧レギュレータも内蔵しているため電源ノイズの影響を抑えており、電源のフィルタリング回路が簡単にできる。

同社の基本戦略は、高周波CMOS技術を核にして、RF/ベースバンドのGSM携帯用チップからパワーアンプや、ラジオ・テレビ用シリコンチューナのソリューションを提供し、さらにクロックジェネレータへとやってきた。今後も成長できる新しい製品分野へ展開する。

(2011/06/02)

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