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フリースケールがARMアーキテクチャもマイコンシリーズに追加

米フリースケール・セミコンダクタはARMのプロセッサコアの一つ、Cortex-M4をコアとするマイクロコントローラ(マイコン)を製品シリーズに加えると発表した。これまで同社独自のColdFireコアとPowerコアに加え、業界標準のコアを追加することでマイコンの製品ポートフォリオを広げ、巻き返しを狙っている。

図1 フリースケールのマイコン さまざまなアーキテクチャがある

図1 フリースケールのマイコン さまざまなアーキテクチャがある


1社が複数のアーキテクチャを持つマイコン企業の新しいビジネスモデルは、ルネサスエレクトロニクスが旧NECエレクトロニクスと旧ルネサステクノロジとの合併によって図らずも始めた。しかし、フリースケールは、製品のポートフォリオを拡大するために自社のアーキテクチャに業界標準のARMアーキテクチャを加えるという方法を選択した。独自アーキテクチャへのこだわりが強すぎると広い業界から取り残されるという危機感の表れではないかとみえる。

フリースケールは産業用などの市場に向けて、8ビット、16ビットにおいて独自アーキテクチャのマイコンを持っているが、32ビットアーキテクチャでは、ローエンドにColdFireとColdFire+を用意する予定である(図1)。ハイエンド製品ではIBMとの共同開発のPowerアーキテクチャを今回発表し、ミッドレンジにARM Cortex-M4アーキテクチャのKinetisシリーズを持ってきた。Kinetisは、50〜200MIPSの性能と32kB〜1MBのメモリー容量をカバーする。自動車市場の32ビット製品には従来通りのi.MXアーキテクチャとPowerアーキテクチャを用意する。

今回、フリースケールが発表したARM Cortex-M4アーキテクチャの製品としてはK10ファミリからK70ファミリまで合計200品種を用意する見込み(図2)。今回はK50そのものと、K30の単相電力でのスマートメーター用マイコンのリファレンスデザインなどを発表した。


図2 ARM Cortex-M4ベースのMCUシリーズ 200品種揃えていく

図2 ARM Cortex-M4ベースのMCUシリーズ 200品種揃えていく


K50は、工業用を意識してEthernetやUSBインターフェースを設けている。また、図2にはないが、アナログ回路を豊富に揃えていることも大きな特長で、工業用ではいろいろなセンサーを付けてセンサーからのアナログ信号を処理するために必要だからである。他のシリーズと同様、AD/DAコンバータやPGA(プログラマブルゲインアンプ)やコンパレータ、タッチセンサーインターフェースなどは共通だが、それに加えて多数のオペアンプやトライアンプ、信号フィルタリングなどのアナログ回路を用意している。

ARMアーキテクチャの最も大きなメリットは、性能や低消費電力といった性能指数だけではなく、業界標準となっていること、さらにARMの開発ツールやエコシステムを使えることなども大きい。例えばARMエコシステムが進めるマイコンソフトウエアインターフェース規格であるCMSISにも準拠しているため、サードパーティが参加しやすく開発しやすい。フリースケール側にとってはソフトウエアを再利用しやすいため、新しいソフトを作る場合でもプログラムを追加する形ですむ。

K50にはDSPや最大512KBのフラッシュ容量、最大256KBのEEPROM、1.25DMIPS/MHzの性能に加え、暗号処理インターフェースCryptoやIEEE1588タイマー、産業用Ethernetインターフェースなど工業用途に向けた回路を集積している(図3)。


図3 K50のブロック図

図3 K50のブロック図

(2011/03/04)

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