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65nmNORフラッシュから4G NAND、省ピンSPIまで攻めに転じるスパンション

業績回復から攻めに転じ始めたスパンション社が従来の90nmおよび110nmのGLシリーズから65nmプロセスのGL-Sシリーズへと製品を転換していく。このほど都内で記者会見を開き、NANDと比べて高速動作が可能なNOR型フラッシュメモリーの製品をすべて65nmラインに替えていく旨を発表した。

図1 ゲーム機と民生が大きな市場

図1 ゲーム機と民生が大きな市場


スパンションが開発してきたMirrorBit技術は、MNOS(metal nitride oxide semiconductor)構造を利用しセル内の2ヵ所に電荷を貯める方式のフラッシュメモリーであり、生まれながらに2ビット/セルという特長を持っている。この技術の基本構造を発明したイスラエルのサイファンセミコンダクタ(Saifun Semiconductor)社はNROM構造と名付けていたが、このサイファンを買収したスパンションはセル構造やプロセス技術を改良し、MirrorBit技術と名前を変えた。

NOR型フラッシュはメモリーセルが並列接続しているため書き込み・読み出し共にNANDよりも高速で、NANDフラッシュでは速度的に太刀打ちできない分野に使われている。最も古くからある応用はコンピュータや組み込みシステム向けのBIOSである。何回か書き直す必要がある上に携帯電話などの組み込みシステムやコンピュータの立ち上げを速くしたいため、マスクROMやNANDでは実現が難しい。最近ではゲーム(日本ではパチンコと言われている)分野にも大容量の1Gビット、2Gビットの製品が使われるようになってきた。

ゲーム応用は小容量の時代にはマスクROMが主体だったが、ゲームに美しいグラフィックスを採り入れたり、長いストーリーを収容したりするなどによって大容量化が求められるようになってきた(図1)。大容量ゆえにバグが入る確率が高くなり書き直す必要に迫られるほか、ゲームの試作サンプルを一部市場に出し様子をみてからプログラムし直す、ということで書き換え可能なメモリーとしてNORフラッシュが求められるようになっているようだ。もちろんNANDと違ってランダムアクセスが可能ということもNORを使う理由となっている。

NORフラッシュは高速な上に、信頼性が高いことも特長だとしている。NANDフラッシュは大容量が最大のメリットであるため、メモリーを読み出すのにECC(誤り訂正回路)を駆使してビットエラーを抑えている。容量が大きくなるにつれ、ECCに使うメモリービット数も増えてしまう。また1ビットエラーだと訂正しやすいが2ビットエラーが同時に起きるとECCではエラー訂正は難しい。加えてマルチビット/セルは難しい。1、0の高レベル・低レベルを2ビット/セルなら4つのレベル、3ビット/セルだと8レベルに分割しなければならず、電圧マージンが狭くなる。例えば3ビット/セルなら0V〜3Vを8分割するのである。ちょっとしたノイズが加わると電圧が揺らいだり、レベル検出を間違えたりしやすくなるためECCは欠かせない。

今回65nmプロセスによりゲーム以外の用途も増えてきたため、64Mビット未満から64M、128M、256M、512M、1G、2Gといった製品のラインアップを揃える(図2)。さらに大容量を求める用途に対しても2011年中に3Dグラフィックスゲーム用に4Gビット品を導入する計画だ。

図2 ピン互換性を保ち性能を上げる

図2 ピン互換性を保ち性能を上げる


低容量の用途は中国におけるワイヤレス市場だ。エントリーレベルの携帯電話にGL-Sシリーズを使い64M未満から256Mビット品まで揃えていく。

GL-Sシリーズは、電源電圧は3V単一で動作し、性能的には高速ページ読みだし速度が98.5Mバイト/秒と競合他社よりも45%速いとしている。書き込みのプログラム時間も1.2Mバイト/秒と前世代のGLシリーズよりも6倍速く、消去時間は655Kバイト/秒という。チップのセキュリティを守るため、OTP(1回しか書き込めないROM)によるシグネチャー(電子サイン)機能として1Kビット分を確保している。新シリーズは、BGAパッケージで9mm×9mmと43%小型化したが、ボールピッチやボールマトリクス、ボール径、高さは全く変えていない。このため、これまでGLシリーズを使っていたボード上のNORフラッシュをそっくりそのまま取り替えることができる。

スパンションは、エルピーダと提携しNANDフラッシュも手掛ける。それも残存者利益を採りに行く。同社マーケティング担当バイスプレジデントのアボ・カナジアン(Avo Kanadjian)氏によると、サムスンが生産を中止した1ビット/セル構造の4GビットNANDフラッシュにはまだニーズがあり、低容量・高品質の応用を狙っていく。顧客サーベイによって組み込み系ユーザー向けにNANDフラッシュの用途があることを見つけた。この市場にはエルピーダの広島工場をファウンドリとして、43nmプロセスを使い生産していく。同氏は、もしエルピーダ1社で賄いきれない場合には他のファウンドリも使う予定だとしている。

スパンションはデジタルテレビや車載ダッシュボードなどの用途に、シリアルアクセスのSPI(serial peripheral interface)モードの製品にも力を入れる。これはシリアルアクセスするようなストリーミングデータを少ないピン数で読み出すのに適している。同氏によると、自動車分野では高集積なSPIインターフェースを求めるという。リコールがあったときにエンジンの状態などストリームデータをSSDに読み込むのに使うとする。かつてのシリアルアクセスモードのメモリーは少容量だったが、最近では自動車や産業用、医療用などの分野が高集積なSPIインターフェースのNORフラッシュを求めるとしている。

65nmプロセスを使ったGL-Sシリーズの製品は、米国テキサス州オースチンのFab25 200mmラインと、中国SMICの300mm武漢工場で生産する。

同氏によると、NANDフラッシュを推進するサムスンやマイクロンはコモディティ製品であり、顧客対応は気にしないが、スパンションは顧客との関係を重視し、予測可能な製品需要を捉えることができるため、収益性は高いという。

(2011/02/25)

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