ナショナルセミ、プログラム可能なセンサー信号処理ICを開発ツールと共に提供
アナログ分野に注力してきた米ナショナルセミコンダクター社は、ICチップの設計製造からソリューション提供ベンダーへと脱皮し始めている。温度センサーとそのコントローラで定評のある同社は、異なるセンサーにも対応し、設定をユーザーがプログラムできる1チップ信号処理ICを開発、その開発ツールも遅れずに提供する。

図1 圧力センサー、温度センサーからの信号処理ICをプラットフォーム化
今回、ナショセミが発表したソリューションは、ICチップ2種類と、回路構成をカスタマイズできるソフトウエアツールのWEBENCH Sensor AFE Designer、ハードウエア開発ツールの評価ボードである。
一つのICは、圧力センサーなどの抵抗ブリッジ方式のセンサーからの信号を処理しデジタル出力を備えたマルチチャンネルのセンサー用AFE(アナログフロントエンド)ICのLMP90100であり、もう一つは化学ガスセンサーからの信号処理するLMP91000である。
LMP90100は、熱電対やサーミスタ、RTD(resistance temperature detector)などの温度センサーと、抵抗ブリッジ方式の圧力センサーやロードセル、力センサーなどからの入力信号をマルチプレクサで切り替え、PGA(プログラマブルゲインアンプ)や、24ビットの変調方式のADコンバータを通してデジタル信号に変換し、マイコンと直結するためのSPIおよびI2Cインターフェースを設けたチップである。センサーによってゲインや電流電圧範囲を変えることができる。PGAの増幅率は1〜128倍にプログラムできる。
このICは、センサーの近くで使うため、長時間使っている内にゲインエラーや入力のオフセットドリフトが起きた時に自動的にそれらを打ち消す、バックグラウンドキャリブレーション機能を搭載している。加えて、センサーの診断モニター機能も付いているが、信号パス上にはこの機能を置かないため、信号を邪魔することなく正しい値を診断できるという。
センサーネットワークや工場内のFA、プロセス自動化などに使うため、例えば圧力ゲージなどの応用にも対応する、標準的な4~20mAの電流出力が得られる。また、消費電力が小さく、消費電流は出力のデータレートと関係しており、1.68サンプル/秒〜214.65サンプル/秒の範囲で0.4mAから1.7mA。電源電圧は3〜5.5V。待機時の消費電力は9μWという。測定する温度センサーを外付けしたい場合にも、それをドライブするための定電流源を2個内蔵している。
図2 ガスセンサー用の信号処理ICで10種類以上の毒ガスに対応
もう一つのガスセンサー用ICは、毒性の強いガスを検知するためのガスセンサーからの信号を処理するLMP91000である。検出できるガスにはCO2、メタン、硫化水素、二酸化硫黄、アンモニア、オゾン、エチレンオキサイド、塩化水素、水素、シアン化水素、酸化窒素、二酸化窒素、塩素、ホスフィンなどがある。それぞれのガスに対して印加するバイアス電圧は違っているため、ガスごとにボードを作らざるを得なかった。このためディスクリートで組むことが多かった。ガスセンサーソリューションごとにボードを組まなくてはならず、コストと時間がかかっていた。このICではバイアス電圧とTIA(トランスインピーダンスアンプ)のゲインはソフトウエア開発WEBENCHを使って変えることができる。
ガスセンサーはポータブル使用が多いため、バッテリ動作できるように消費電力を減らしている。電源電圧2.7〜5.25V、電源電流は10μA以下、基準電圧バイアス電流は-40〜+85℃の範囲に渡って900pA以下と小さい。
図3 使い勝手の良いオンライン開発ツール
WEBENCHはオンラインのプログラマブルな開発ツールであり、測定したいセンサーの種類を増やすことも簡単なので、ユーザーは常に最新のセンサーを選択できる。ユーザーはセンサーを選び、デバイスを構成し、性能を最適化できる。ゲインやサンプリングレートを変えると、消費電力やノイズの状況をただちに見ることができる。
また、センサーとこのAFE ICを搭載したハードウエア評価ボードを使い、パソコンとつないで性能を解析したり、ヒストグラムを観測したりすることができる。SPIO4インターフェースを持ったデータキャプチャーボードを、USBインターフェースを通してパソコンにつなぎ、さらにWEBENCHのようなデザインソフトウエアを使うことでノイズレベルなどを評価できる。