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ルネサスがローエンド市場向け統合マイコンを発表、11年度末までに700品種

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ルネサスエレクトロニクスが8/16ビットマイクロコントローラ(マイコン)の統一アーキテクチャであるRL78ファミリを発表、2011年度前半に350品種を発売するとして2011年度末までに700品種を発売する。統合後わずか1年で統一アーキテクチャのマイコンを立ち上げることになる。

図1 2011年末までに統合を完了

図1 2011年度末までに統合を完了


新生ルネサスのマイコンは、旧NECエレクトロニクスの78Kと旧ルネサステクノロジのR8Cを統合したもので、次世代の8ビット/16ビット市場向けのマイコンとなる。この8ビット/16ビットマイコンとは、メモリは512Kバイトまでアドレスできるため、アドレッシングは16ビットで、バスも16ビットであるため、16ビットマイコンではあるが「ルネサスは8ビットと位置付けている」(ルネサスエレクトロニクス執行役員兼MCU事業本部長 水垣重生氏)。マイコンの傾向としてローエンドの8ビットとハイエンドの32ビットに二極化しつつあるが、ローエンド市場を捨てないという強い決意の表れともとれる。これまで生産してきたNECエレクトロニクスの78K0SやルネサスのR8Cそのものは生産し続けるが、新規のデザインは全てRL78シリーズに統合される。

新しいRL78ファミリのRLはRenesas Low powerの略であり、低消費電力のマイコンであることを最大の特長としている。新規設計のマイコンは130nmプロセスで生産する。従来の150nmプロセスで作ったマイコンと比べ、消費電力は半減し動作電流は70μA/MHzと低い。待機電流はリアルタイムクロック方式や低電圧検出技術などを駆使し0.7μAだという。また、コスト対応力も強化したため64Kバイトの150nmフラッシュマイコンと比べ、チップサイズも半減する。

マイコンのコアは旧NECエレクトロニクスの78K0Rを使う。「他のマイコンと比べ、高性能で将来も使えるからである。しかも低消費電力設計を済ませている」と水垣氏は言う。生産工場は熊本と四国の西条である。両工場でクロス生産することによりデリバリのフレキシビリティを上げ、災害などの地政学的リスクを避けることができる。

11年1月からサンプル出荷を始め、ローエンドマイコンを全てRL78ファミリに集約させていく。2011年度末までに700品種の他、2012年度には産業用、民生用、コンピュータ、自動車などの用途、液晶用、その他汎用を含め、品種の拡大を続けていく。


図2 品種拡大に力を注ぐ

図2 品種拡大に力を注ぐ


マイコンでは欠かせないハードウエア、ソフトウエアの開発ツールも積極的にサポートしていく。2011年4月から新しいIDE(統合開発環境)ツールを提供する。周辺回路の生成やそれに応じたドライバの作成、などが簡単に行えるようになる。それまでにソフトウエアを開発したいというユーザーに対しては、NECエレクトロニクス系のIDE「CubeSuite」を薦める。78Kコアを使っているユーザーはCubeSuiteだけではなく新IDEをそのまま使えるという。旧ルネサステクノロジ系のR8Cユーザーから見ると、ツールの操作性はほぼ同じだという。彼らには新しいIDEを使えるようにするため簡単に設定するためのソフトウエアを提供する。

また、多数の設計者が使えるように周辺ドライバを拡大した。最近のマイコンでは命令セットの差よりむしろ、コード効率(少ないソフトウエアで書けるようにすること)や性能向上、消費電力の削減に意味があるとしている。

ハードウエアの開発環境としてのオンチップデバッガやエミュレータ、フラッシュライターは1月から提供する。マイコンのソフト・ハード開発を含めたパートナー企業はローエンドだけの数字は持っていないが、ルネサス全体としては700社にも及ぶとしている。


図3 周辺回路を充実

図3 周辺回路を充実


マイコン内部には多数の周辺回路を用意しただけではなく、使用温度範囲-40〜+85℃内で確度±1%という高精度な発振器を内蔵したため、外部の水晶発振器は要らないという。また、バックアップ機能を簡素化し100万回の書き替えを可能にしたEEPROMも内蔵した。さらにこのマイコンを搭載した電子機器の事故を防ぐため、データや動作を自分でチェックするための欧州家電安全規格IEC60730に対応する機能も集積した。

今回、わずか1年で統合アーキテクチャのマイコンを発表した背景には、前回、日立製作所と三菱電機との統合で生まれたルネサステクノロジでは統合マイコンの開発に3年もかかったという苦い経験に基づくという。異なる2本のアーキテクチャを1社が供給するという世界でも稀な異常な状況を一刻も早く解決しようという決意表明でもある。

(2010/11/22)

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