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起業からわずか6年間で8品種を立て続けに出荷する米ベンチャーAmbarella社

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2004年に起業し、HDビデオ圧縮技術と画像処理技術を売り物にし、矢継ぎ早に8品種も製品を出してきたベンチャー企業アンバレラ(Ambarella)がシーテック(CEATEC)に合わせてユーザー説明会を開いた。同社はファブレス半導体メーカーの集まりであるGSA(グローバル半導体アライアンス)から、2008年、2009年と立て続けに賞を受賞した。

同社の製品をビデオカメラ、ビデオ内蔵デジタルカメラなどの大手メーカーが世界中で多数採用しているという。加えて放送機器にも食い込んでおり、2005年に放送機器向けに出荷した最初のH.264エンコーダーチップA1は2008年には1万個に達したとしている。このA1から8品種、A7まで(A2はA2とA2sの2品種)出荷したことになる。この2010年9月末に出荷したのがA7であり、シーテックでデモンストレーションした。

現在でさえわずか350名程度の社員のベンチャー企業が創業から6年間に8品種もの驚異的なハイペースで半導体SoCチップを出荷できるのには訳がある。一つの共通なプラットフォームを使い、新しいソフトウエアをチップに焼き込んでいくのである。システム制御コア1個とDSPコア2個を持つマルチコアSoCである。システム全体はARM11コア(ARM1136J-S)をCPUとして制御用に使い、画像処理用のDSPと、ビデオ処理用のDSPにソフトウエアでプログラムする。イメージ処理用DSPにはイメージセンサからの信号をパイプライン処理したり、拡大縮小、OSD(on-screen display)処理などを受け持ち、ビデオ処理用DSPではH.264やMotion JPEGなどの圧縮アルゴリズムを入れたり、デュアルストリーム制御やレート制御などを行う。


プラットフォーム戦略で矢継ぎ早に8品種もの製品を出す

図1 プラットフォーム戦略で矢継ぎ早に8品種もの製品を出す


新製品A7は、デジタルビデオカメラとデジタルスチルカメラのハイブリッドが可能なSoCチップであり、高速のイメージセンサインタフェースを備え、500M画素/秒という高速性能を持つ。これによって例えば8M画素(800万画素)のスクリーンで60フレーム/秒というスローモーション映像(スポーツなどに有効)をスムースに出力できる。さらに連写応用も可能になる。もちろん、フルHDの1920×1080p60のH.264映像だけではなく、4Mp30(2560×1600)のH.264映像も見ることができる。変わった応用では、フルHDを見ながら、モバイルビデオを映し出したり100万画素級の写真を見せたりすることもできる。


A7を使えばフルHDビデオを貯めながらYouTubeに送ることも可能に

図2 A7を使えばフルHDビデオを貯めながらYouTubeに送ることも可能に


ビデオの応用として、この性能を使えば、フルHDでビデオを撮りそのデータをSSD(半導体ディスク)などに貯めながら、もう一つのビデオをインターネットを通してYouTubeに直接上げてしまう、ということも可能だ。シーテック会場近くのホテルでは、簡単な試作ボードにイメージセンサを取り付けただけのYouTubeビデオカメラをデモした。カメラで撮った映像をボタン一つでインターネットに上げ、数秒後にYouTubeでその映像を見るというデモである。すなわち、このSoCでは802.11nのWi-Fiや3G/4Gネットワーク対応のインタフェースも集積しており、さまざまな応用に使えるように設計している。

加えて、ノイズ処理が優れているため暗い状況でも明るい画面が撮れ、ISO1600、ISO3200、ISO6400相当の明るさまで鮮明な画像が撮れる。またCMOSセンサからのシャッター補正や手ぶれ防止などもカバーしている他、120倍のデジタルズーム機能も集積している。

これまでの8品種を合わせて、2010年中に累積出荷数は1000万個に達すると見積もっている。

(2010/10/19)

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