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シリコンラボ、24ビットデュアルコアDSPを集積したD級アンプで新興市場狙う

米国の中堅半導体ファブレスメーカーであるシリコンラボラトリーズ(SiLabs)社は、ローコストアンプ市場を狙ったデジタルD級ステレオアンプICを開発した。EMIノイズ対策を内蔵しているため外付けのノイズ対策回路がいらない。AM/FMラジオチューナを近づけられるため、携帯音楽プレーヤーのドッキングステーション設計の自由度が上がる。

図1 シリコンラボの高集積のD級アンプ

図1 シリコンラボの高集積のD級アンプ


デジタルアンプともいわれるD級アンプは、デジタルによるノイズを出すため、アナログのAM/FMラジオを近づけられないとか、高調波歪み成分が大きいなど、これまではアンプの設計が簡単ではなかった。デジタルアンプとしての最大の特長である電力効率の高さから、小さなICパッケージに収めることができる上に、アンプ自身も小さくできるというメリットはあったものの、ノイズ対策は欠かせなかった。このためBOM(bill of materials:全ての部品コスト)コストがかさ張り、高コストで回路基板の面積はバカにならなかった。

今回のSiLabsの製品Si270xはドッキングステーションに応用する場合、BOM分析をしてみたところ、部品コストは20~30%削減され、部品点数は50~60点減った、と同社オーディオアンプ製品担当ディレクタのリック・ビール氏は述べた。すなわちSi270xの狙う市場は新興国や低コストの汎用市場である。これまでD級アンプが使われてこなかったマスマーケットはコストに敏感であり、ノイズ対策にコストが掛かるためほとんど使われてこなかった。

新製品Si270xは、さまざまな回路を1チップに集積することにより、D級アンプの基板コストを下げようというもので、高集積化の狙いはハイエンドではなくD級アンプの普及版にある。このためにまず、AM/FMラジオのチューナーもそばに配置できるようにD級のデジタル回路からのノイズを削減する回路を設けた。


図2 ノイズ対策とサウンドの豊かさを集積したブロック図

図2 ノイズ対策とサウンドの豊かさを集積したブロック図


特に、高周波スイッチングによるシャープなスペクトラムを持つノイズ成分を減らすため、拡がり拡散技術(Spread PWM)を用いた。ここではPWM変調しているためそのピークがノイズとして現れる。キャリヤ波に乗ったノイズであるため、帯域を広げることでノイズを25dB低減させた。従来よく使われたジッタリングや周波数ホッピングで広げる訳ではないとビール氏は語る。さらに、高周波ピークノイズだけではなく、AMラジオが受信する周波数帯域外のバックグラウンドノイズも抑えるため、受信したいAM放送の周波数に合わせてノッチフィルタを使い受信帯域付近のノイズも減らした。デジタルスイッチングパルスの立ち上がり波形をソフトにしてスルーレート(slew rate)も抑え、FM受信を可能にした。フィードバック回路による電源ノイズも減らしている。

こういった対策は高価なフィルタやシールド部品を使わなくても済むため、ドッキングステーションの設計者は安く設計できるというメリットがある。

さらに、24ビットのデュアルコアDSPを内蔵することによって、イコライザやコンプレッサ、3Dサラウンドなどの音質を豊かにする機能も集積している。このDSPのプログラミングが極めて簡単で、C言語や機械語でのプログラムは全く必要ない。設定やカスタマイズはプルダウンメニューで誰でも簡単にできる。


図3 開発ツールプ

図3 開発ツール


開発するためのハードウエア、ソフトウエアのツールも販売しており、全機能をカスタマイズ、調整するためのフル装備の評価キットは325ドルと安い。

(2010/09/30)

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