IDTのフレーム速度変換ICは動き検出・補正・フレーム補間のアルゴリズムがカギ
先週、キヤノンが全額出資子会社のSEDを9月30日に解散することを発表したが、電界放射ディスプレイや有機ELディスプレイの存在意義が今一つ損なわれる動きがはっきりしてきた。液晶ディスプレイは応答速度が遅いというのはこれらのディスプレイの存在意義の一つだった。しかし、液晶が遅くても半導体チップでそれをカバーできる。米IDT社は240Hzまでのフレームレートに対応できるコンバータICの性能を明らかにした。
図1 動く物体の周りがボケるハロー効果(上)(あり:左、除去:右)、カメラを斜めに動かす時の繰り返しパターンのギザギザ(下)(あり:左、除去:右)
今回IDTが液晶テレビに組み込んでデモンストレーションしたのが、フレームレートを120Hzあるいは240Hzに上げてもギザギザのノイズを除去するというもの。従来、フレームレートコンバータはレート(速度)を上げる場合に、通常30枚/秒のフレームを60枚/秒なら60枚のフレームすなわち2枚に1枚追加することで、60枚/秒のように見せかける技術である。素早い動きの物体を追いかけるシーンでは、物体が残像のように残ってしまうが、高速のフレームレートはこの残像を消してくれる。この結果、素早く動く物体があってもその物体をきれいに見せることができる。
図2 繰り返しパターンの映像のギザギザ(上)(あり:左、除去:右)、ケーデンスと呼ばれるフレームレートの違いとインターレース方式/プログレッシブとの違いによるブレ(下)(ケーデンス検出不良:左、ケーデンス適切処理:右)
ところが、ただ単にフレームを補間するだけでは、動く物体の残像や格子状の物体(窓が並んだマンションやビル、縞のワイシャツなど)のギザギザは消えない。IDTの新製品は、フレームを補間するときに、このギザギザのノイズをとってしまおうというもの。ギザギザを除去してからフレームを挿入すると、高速に動く物体を追いかけたり、カメラを動かしてもギザギザは入らない。きれいな画面として人間の眼には見える。
このICに焼きこまれているギザギザ除去のアルゴリズムでは、以下のようなメリットが得られるとしている。
1.画素ごとに可動物体をアダプティブに検出し補正する
2.高速に動く物体を正確にトラッキングする
3.高速に動く物体の周囲の画像が歪むハロー効果を抑える
4.動き検出範囲が広い
5.水平方向だけではなく垂直、対角線の方向にカメラを動かしてもギザギザを抑える
6.格子や階段、縞の服などの繰り返しパターンでもぶれない
IDTは、繰り返すフレームがある場合にフレームレートを変換する前に、ブレや歪みを検出・補正してから、補間フレームを挟むという手法を使う。そのために、例えば二つの入力画像信号(フレーム2枚)から、動き検出と動き補正を行ったあとで、HQV(Hollywood Quality Video)処理によりフレーム補間処理でフレームを増やしていく。その後、色処理を経てから4フレームを出力する。
先月発表したこのフレームレートコンバータVHD1200は120HzまでVHD2400は240Hzまでフレームレートを上げられる。それぞれに必要なDRAMはDDR2とDDR3だとしている。DRAM容量はHD画素そのものなので、それほど大きなメモリー容量は必要はない。
今回のチップは3次元画像もサポートしている。3次元画像では、サポートできる最大のフレームレートは右目、左目でそれぞれある時間内に処理しなければならないため、120Hz製品だとそれぞれ60Hz、240Hz製品は120Hzと半減する。