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電池不要ワイヤレス送受信機の標準化に力を入れる欧州のエンオーシャン

自然エネルギーを利用する電池の要らない無線回路を特長とするエネルギーハーベスティングの標準化団体である欧州エンオーシャンアライアンス(EnOcean Alliance)が日本市場で積極的に活動し始めた。電池を使わないワイヤレスのリモコンや自動的にビルの伝統を点滅消去するセンサー装置などを開発したドイツのエンオーシャン社がワイヤレスジャパン2010で開発キットを展示した。

電池不要のスイッチ(左手前)、ホテルのキー(右手前)、調光器のLEDランプ

電池不要のスイッチ(左手前)、ホテルのキー(右手前)、調光器のLEDランプ


エネルギーハーベスティングは自然界にあるエネルギーを使ってワイヤレスでデータを飛ばし、さまざまな装置を制御する。電池を使わずに無線回路を動かすことが特長だ。今回、デモンストレーションで示した製品は機械的なスイッチと太陽電池、ペルチェ発電素子の三つを利用して電圧を発生させるもの。

最初の製品でもあったスイッチは、スイッチを押すという指の力でコイルのインダクタンスを変え起電力すなわち電圧を発生させることで、短い時間だがその電圧で回路を動かし、無線を飛ばすという操作を行う。デモでは、受信機側に電灯をつける回路や調光回路を形成しておき、スイッチを押すと電灯が付いたり消えたりする。調光回路では、1回押すとやや暗く光り、2回、3回と押すたびに電灯が明るくなるというもの。


送受信開発キット(右2つのボード) パソコン横の黒い有線部品はペルチェ素子

送受信開発キット(右2つのボード) パソコン横の黒い有線部品はペルチェ素子


太陽電池とペルチェ素子に関しては送信機と受信機の開発キットを展示した。太陽電池を使う送信回路は、光が当たっている間は回路が動作するため双方向の受送信ができる。ペルチェ素子は単に出力電圧端子を開発キットのコネクタに差すだけの簡単なもの。これらの特長は、「その場でプログラム可能で、双方向のやり取りができる。しかもバッテリは使わない」とエンオーシャンCEOのMarkus Brehler氏は述べる。


エンオーシャンCEOのMarkus Brehler氏

エンオーシャンCEOのMarkus Brehler氏


ペルチェ素子を使う応用では、ペルチェ素子が発電する20〜30mVの電圧を昇圧して電子回路に供給しなければならないが、30mVを3Vに昇圧するICが入手可能になっている。ただし、リニアテクノロジーの製品ではないという。

使う周波数は、868MHzあるいは315MHzである。315MHzの微弱電波は日本では無免許で使えるため、このまま開発キットを使ってカスタマイズすることで自分のシステムを作ることができる。送信するデータレートは125kbpsとそれほど速くはないため、制御用に適した応用が可能である。しかも315MHzは他に使われている周波数が少ないため、干渉が少ないという。ただし、自動車用のキーレスエントリやタイヤの圧力検出などでは使われている。欧州では868MHzを使うが、北米、中国、日本では315MHzが使いやすいと見ている。

こういったエネルギーハーベスティングを利用する電子機器やセンサー、リモコンは送受信の周波数や、変復調方式、ソフトウエアプロトコルなどを揃えておくと、さまざまな機器を制御できるようになる。このため標準化が欠かせない。エンオーシャン社の技術に基づくワイヤレス送受信回路を誰もが作れるようにするため、「物理層、データ層、リンク層など全ての階層の仕様を標準化して統一している」とBrehler氏は言う。このためエンオーシャンアライアンスを2008年に立ち上げ、エコシステムを形成してきた。2010年はじめに150社が加盟しており、日本でも村田製作所と三洋電機がメンバーになっているが、日本での普及活動は始まったばかりで、この開発キットを日本で公開したのはこれが初めてだとしている。

メンバーの60%が欧州企業で、残りの40%は北米企業がほとんどだとしている。欧州や米国ではすでに10万のビルディングに温度モニターとして設置されているほか、すでに500種類もの製品が使われているという。例えば、ホテルのキーも押す力を利用するスイッチが使われており、電池の要らないスイッチとしてメンテナンス上のメリットが大きいとしている。

(2010/07/16)

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