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ナショセミが外付けコイルの要らないDC-DCコンのモジュールとツールを発表

半導体メーカーが単なるチップの提供だけではなく、モジュールや開発ツールの提供などを含めたソリューションとして半導体ビジネスを拡張している。コンピュータ・通信機メーカーが単なるコンピュータや通信機器のハードやソフトを売るのではなく、顧客が望むシステムを提案するというソリューションビジネスへと広げてきたやり方と同じだ。米ナショナルセミコンダクターは電源回路のパワーモジュールと開発ツールを提供し始めた。

7ピンの標準パッケージに収納したDC-DCコンのモジュール

7ピンの標準パッケージに収納したDC-DCコンのモジュール


ナショセミコンが今回、出荷を始めた電源回路用のパワーモジュールSimple Switcherはステップダウンコンバータであり、入力電圧が24Vや12V、あるいは5V/3.3Vといった標準電圧からもっと低い電圧を発生させるDC-DCコンバータである。最小の出力電圧は0.8V。出力の負荷電流は3Aあるいは4Aである。

同期整流のスイッチング電源方式を使っているが、スイッチング電源はノイズを多量に発生するため、使い勝手が悪い。一方、電源回路を使う電子機器エンジニアは、電源回路でつまずきたくはない。本来のシステム回路の開発に集中したい。単純で使いやすく、しかも安い電源回路が欲しい。

今回、ナショセミが発表したパワーモジュールは、そのような電子機器エンジニアが本来の回路設計に専念できるように、ノイズを減らし、使い勝手を良くした電源回路である。これまでは米国のリニアテクノロジーも同様なμモジュールと呼んでいる製品を出している。この製品も電子機器エンジニアの評判は良いようだ。

しかし、μモジュールのパッケージはLGA(ランドグリッドアレイ)で配線を接続しているため、実装スキルが必要とされる。また、LGAは何か不具合がある時に、ハンダ付けしているチップを外すことが簡単ではない。

ナショセミのSimple Switcherパワーモジュールファミリーは、銅板をパッケージの底に設けた7ピンのTO-263パッケージ(10.16mm×13.77mm×4.57mm)であり、ハンダ付けも取り外しも簡単にできる。銅板があるために熱抵抗がこれまでの他社のパッケージよりも小さく、放熱フィンなしで周囲まで放出するという状態での熱抵抗θJAは20℃/Wと低いため最大4Aまで流すことができる。このため出力の負荷電流が1〜3Aの範囲で95%以上の効率をキープする。しかも、最終段にパワーMOSFETを内蔵しているために実装面積の低減が図れる。最大出力電力は20Wと大きい。

効率を上げるためにパワーMOSFETのオン抵抗を減らすと同時に、スイッチング周波数と効率とのバランスを考え、1MHz以下という周波数を選んだ。

加えて、スイッチング電源で問題となっていたEMIノイズは、EMI試験規格EN55022 クラスBに準拠しており、ノイズ放出量は30dBμV/m以下。ノイズを下げることができたのは、二つの方策をとったためだという。一つは、相補構成の二つのパワーMOSFETの中点と次段のインダクタをできるだけ近づけてリード線を短くしたことであり、もう一つはそのインダクタをパッケージ内に集積し、そのインダクタの周りをシールドしてしまったことである。このインダクタは外部から購入したものであり、高品質のインダクタメーカーとパートナーシップを組み、アナログ回路の設計とパッケージングに丸2年かかった、と同社高性能パワー製品ライン部門のビジネスユニットリーダーのアレックス・チン氏は語る。

今回製品ラインアップを揃えたものは、最大入力42V・出力電流3AのLMZ14203、最大入力20V・出力電流3AのLMZ12003、最大入力5.5V・出力電流4AのLMZ10504の3品種である。全て同一パッケージで提供される。さらに4品種の計画がある。

電子機器システムの電源の設計を簡単にする開発ツールWebench Power Architectも発表した。これはユーザーが望む入力電圧や出力電流、電圧などを入力すると、出力の負荷電流対効率のグラフなどを画面に出力する。さらにICから放出される熱のシミュレーションもビジュアルに見られるようになっている。このオンラインツールは、110社が提供する2万1000点の部品、300種類のパワーIC、25種類のトポロジーなどがライブラリとしてサポートされている。多電源のシステムにおいても回路図を出力し、例えば低電圧大電流で動作するFPGAなどのロジックによく使うPOL(point of load)電源の設計もWebenchで設計できる。


電源回路を設計しやすいオンラインツール
電源回路を設計しやすいオンラインツール


しかもこのツールはオンラインでサービス提供できるため、今回のパワーICはもちろんのこと、将来のパワーICもライブラリにナショセミ側が登録し、アップデートする。このためユーザーは最新のICや部品を使って電源回路が得られる。

(2010/01/26)

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