セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

マイクロチューンがソフトウエア無線に対応するデジタルチューナICを製品化

|

シリコンチューナ大手の米マイクロチューン(Microtune)社がテレビ用、ラジオ用のICを相次いで発売した。共にRFアナログ回路から周波数変換して中間周波数に落とし、さらにデジタル変換・出力するところまでシングルチップで構成している。デジタル出力の後からはソフトウエア無線によって世界中の放送方式に対応できる。

シリコンチューナとはワイヤレス機器に使われる高周波回路(RF回路)とその周辺を1チップのシリコンに集積したチューナ回路を指す。従来ならモノリシックに集積することが難しかったチューナ回路は微細化とともにトランジスタの遮断周波数fTや最大発振周波数fMAXなどが数十〜数百GHzへと上がってきたため、モノリシックに集積することは難しくなくなった。


Microtune社CEOのJames A. Fontaine氏
Microtune社CEOのJames A. Fontaine氏


テレビ用のシリコンチューナがこれからも増えていく要因は2つある、と同社創業者でありCEOでもあるJames A. Fontaine氏は言う。一つはシリコンチューナのコストが従来のキャンチューナ(メタルでシールドしているディスクリートのチューナ)のコスト並みに安く製造できるようになった。もう一つはシリコンチューナのノイズやスプリアス、干渉なども含めた性能が上がってきたためだ。シリコンチューナのメリットは多い。小型、軽量になるばかりではなく、調整が要らないため組み立てコストは安い。放送方式が変わってもキャンチューナよりは簡単に対応できる。デジタル化への対応が簡単。こういったメリットがこれからも生きていくことは容易に想像がつく。

今回一般のテレビやチューナのメーカー向けに発売するテレビ用チューナMT3141は大きさが6mm角の40ピンQFPパッケージに入り、量産時の単価は2ドルと安価で、しかもユーザーが使ってみることができる評価ボードも供給する。MT3141には従来のアナログテレビ方式(NTSC、PAL、SECAM)の復調器を内蔵しているうえ、デジタル変調ICを接続すれば世界中のテレビチューナが小さな基板で作れる。つまりこのチップとデジタル変調(米国のATSC、欧州やアジアのDTMB、DMB-T、日本やブラジルのISDB-T、ケーブルテレビのQAM、DVB-C、NorDig 2など)ICとを組み合わせた回路なら世界中に同じテレビチューナあるいはテレビ製品を出荷できる。仕様帯域は44MHz~1GHz。ビデオS/N比は60dB以上。アナログ復調回路を内蔵したのはアナログテレビが全世界で2018年まで続くと見ているから。

同社はもう一つ、車載向けのデジタルラジオ用チューナIC、MT3511も発売した。これも世界中のFM/AM放送、HDラジオ、DRM、ウェザーバンドをカバーしており、RF回路からIF、さらにADコンバータまで集積しており、デジタル信号とアナログ信号を出力する。さらにアダプティブなAGC(自動ゲイン制御)も内蔵しており、最適な信号レベルを調整する。キャリブレーションは完全自動。デジタル信号の誤り訂正回路も内蔵する。

このチップとDSPなどソフトウエア無線チップを組み合わせて放送受信機だけではなく、Bluetoothやカーナビも受信できるようにプログラムできる構成を推奨する。同社はデジタル復調器の設計会社Auvitek社を秋に買収したばかり。今後の製品にRFからソフトウエア無線機までシングルチップで構成する製品を出してくることについて、Fontaine氏は明確な回答は避けたが、シングルチップ製品を出してくる可能性は容易に想像できる。ソフトウエア無線プロセッサは市販のDSPでできるとする。

同社はファブレスだが、使用したプロセスは90nmのSiGeプロセス。SiGeバイポーラトランジスタを使ったBiCMOSプロセスで、そのプロセスを使った理由は、ピュアCMOSなら同じ性能を得るのにチップ面積が増えるからだという。シリコンのダイ面積については明らかにしない。製造ファウンドリはIBMやJazzなどを利用していると述べた。

(2009/12/18)

月別アーカイブ