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IDT、ファブレスで身軽になり画像改善IC・低電力タッチスクリーンICを発表

通信用ICや高速RAMなどに注力してきた米IDT(Integrated Device Technology)社が民生分野の強化に乗り出した。このほどテレビ映像を鮮明にするビデオICとタッチパネルコントローラを製品化した。

ビデオICのVHD1900は、テレビの画質向上用のICであり、画面上に斜めになっている物体のギザギザを滑らかにしたり、ランダムノイズを減らしたり、圧縮によるモスキートノイズやブロックノイズを減らしたりする。加えて、SD(standard definition)からHD(high definition)へ拡大するリサイズ技術や、画面上の動きに応じてインターレースからプログレッシブへ変換する回路も集積している。


左は空や海にギザギザが見られるが、除去した右には見られない
左は空や海にギザギザが見られるが、除去した右には見られない


IDTはこのICを「HQV (Hollywood Quality Video) Vidaプロセッサ」と名付けたが、これは昨年買収したSilicon Optix社のHQV技術をベースにノイズ低減アルゴリズムを組み込んだもの。このノイズ低減アルゴリズムは最新のアダプティブ動き検出、見積もり技術などを駆使、画像のノイズを選択的に低減する。原画フィルムの粒上のランダムノイズ削減(TNR)、過度の圧縮によるブロックノイズ削減(BAR)、さらに圧縮損失による対象物のエッジの周囲に見られるモスキートノイズ削減(MNR)という3つのノイズ削減アルゴリズムをICに集積した。

このアルゴリズムはソフトウエアで処理するのではない。このチップにはDSPは集積しておらず、すべてハードワイヤード論理回路でアルゴリズムを実行する。来日した同社ビデオ&ディスプレイオペレーション部門戦略マーケティング担当シニアマネジャーのDerry Murphy氏は、具体的な詳細を明らかにはしないが、1枚のフレーム上をトラッキングしノイズのようなランダムな領域を探すという作業を何度も繰り返すのだと言う。DSPなどでソフトウエア処理すると計算するためのコンピューティングパワーが大きくなりすぎて使えないからだとしている。


ビデオ&ディスプレイオペレーション部門シニアマネジャーのDerry Murphy氏
ビデオ&ディスプレイオペレーション部門シニアマネジャーのDerry Murphy氏


ノイズ削減アルゴリズムに加えて、1080iから1080pへのHDデインターレース機能や、SDからHDへの拡張機能もハードワイヤード論理で実行する。このため、回路規模は大きくなりがちになるためデザインルール65nmと微細なCMOSプロセスで設計した。画面拡張は1920×1200画素のWUXGAまで可能だとしている。


左のSDから右のHDへの拡張変換もできる
左のSDから右のHDへの拡張変換もできる


IDTは完全なファブレスに成りきってはいないが、ほぼファブレスなので65nmCMOS技術は外部のファウンドリを利用して製造する。今回はIBMを利用したが、今後の量産に向けては、それ以外のファウンドリ数社を使う予定だという。チップ面積は明らかにしないが、パッケージは128ピンのTQFPである。1000個購入時の単価は25米ドル。

今回示したもう一つの製品「LDS6100/6120」はアクティブ時の消費電力が最大でも125μWと極めて少ないことが特長だ。今やタッチスクリーンコントローラはさまざまなメーカーが出しているが、2~4.5mWの製品が多い。消費電力を下げられたのは、競合他社と違いマイクロコントローラ方式を使わず、ハードワイヤード論理回路で構成したため。ただし、簡単なカスタマイズができるようにするため、SPIバスやI2Cバスインターフェースを設け、制御論理としてレジスタビットを変えられるようにしている。

基本的には機械式のボタンを置きかえたり、スライダーボリュームのように数値を変化させたり、あるいは360度回転操作できるようにタッチ入力を制御する。最大20個の静電容量センサーをサポートするCDC(キャパシタンスをデジタル信号に変換する回路)はプログラム可能で、消費電力も低い。20個のセンサー入力のうち10個のセンサーを機械式ボタンとしてエミュレートする直接通信モード(DCM)出力として構成できる。これによってシリアルインターフェースバスを通して問い合わせることなく、タッチされるとすぐに直接応答できる。タッチスクリーンからの入力信号は、内蔵のスイッチマトリクスを通り、500kHzのΣ方式のCDCに入り、外部のセンサーアレイの変化を検出する。加えて、静電容量方式でタッチしたところを検出しLEDで見えるようにするためLEDドライバも集積した。


アドバンストユーザーインターフェースグループ担当ゼネラルマネジャーAlvin Wong氏
アドバンストユーザーインターフェースグループ担当ゼネラルマネジャーAlvin Wong氏


タッチスクリーンの制御には、マイコン方式と同様、スキャンニングしており、1本指だけではなく、2本指のタッチも認識できる。また、タッチする部分を認識する面積も変えることができる。デザインルールは0.162μm。同社アドバンストユーザーインターフェースグループ担当ゼネラルマネジャーのAlvin Wong氏は、やはりチップ面積を明らかにしないが、パッケージは4mm角の28ピンTQFNから5mm角の40ピンTQFN(厚さは共に0.75mm)と5.3mm×10.2mmのSSOPを用意する。1万個購入時の単価は0.85米ドル。

マイコンベースのタッチパネルコントローラにしなかったのは、消費電力の低減だけではない。多くのユーザーと話をした結果、マイコン方式には消費電力以外にもBOMコストが高い、プログラミングが複雑という不満もあったためだと、同社アドバンストユーザーインターフェースグループ担当ゼネラルマネジャーのAlvin Wong氏は言う。すでにティア1のミニステレオメーカーとデザインインに入っているとしている。

(2009/10/05)
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