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NECエレ、5Gbpsと10倍高速のUSB3.0に準拠するチップをサンプル出荷

NECエレクトロニクスは、5Gbpsと高速のUSB3.0に準拠したホストコントローラIC、μPD720200を開発、6月から世界に先駆けてサンプル出荷する。このICは、USB2.0が開発された当時の通信ソフトウエアを流用でき、しかもデータレートは5GbpsとUSB2.0の10倍以上高速。USBバスの本来の用途であるパソコン向けにまず販売していき、周辺のHDDからビデオカメラ、デジタルカメラ、DVDレコーダなどビデオの高速転送用途へと展開していく。

モバイル機器が消費者に定着するのにしたがい、パソコンで使うビデオファイルをストリーミングではなくモバイル機器に転送するといった応用が一般的になってきた。このためにはこれまでのUSB2.0の480Mbpsでは遅い。USB3.0は5Gbpsと10倍以上速いため、ビデオのダウンロードや転送は1/10の時間で済む。

NECエレクトロニクスは、2001年から始まったUSB2.0が2002年から2003年にかけて急成長し、PC搭載率が2003年には80%を超えた経験を持つ。USB3.0搭載率はUSB2.0ほど急成長しないまでも、2010年から立ち上がり、2011年〜2012年にかけて搭載率80%に行くのではないかと予想している。これはPCでは新しい規格が出ると一斉にほとんどすべてのPCに搭載されるからだ、と同社第二SoC事業本部副事業本部長、新津茂夫氏はいう。

これまでUSB3.0は、米Hewlett-Packard、米Intel、米Microsoft、オランダNXP Semiconductor、米Texas Instruments、NECの6社で規格作りに参画していたが、NECエレクトロニクスがNECグループの代表として参加していた。このためUSB3.0規格のRevision1.0が2008年11月12日にリリースされてからわずか半年で最初の製品にこぎつけることができた。

こういった規格は製品を設計・試作すればすぐに製品化できるわけではない。NECはできたチップが正しく動くか、USBボードを作り、ケーブル、コネクタも作る必要がある。測定器メーカーの持つ最高性能の測定器を使ってアイパターンを観測し、誤動作していないことを確認しなければならない。他のUSBポートとの相互運用性テストも必要だ。このため、コネクタメーカー、測定器メーカー、部品メーカー、認証機関など、顧客以外の外部機関とパートナーシップを組み、動作を確認する。オープンな環境で開発を進めなければならないデバイスである。

USB3.0のコネクタは2.0とほぼ同じだが、ミニUSB2.0とはかなり違う。USB3.0はマイクロUSBと呼び、断面が違うだけではなく外形も少し大きめになっている。これはこの小さなコネクタの中に3.0と2.0を共存させているためである。


USB3.0のコネクタ(写真提供:マイコミジャーナル)
写真提供:マイコミジャーナル


一方、NECエレクトロニクスとしてはこれまでUSB2.0で築き上げた技術資産がある。Windowsソフトウエアドライバに必要なUSB2.0ホストスタックやストレージ用ドライバ、さらにUSB2.0/1.1ホスト、ハブ、デバイスなどのIP製品の再利用、USB2.0/1.1用IPだけではなくPCIe用のPHY+Link層IP、SATA用PHY+Link層IPなどの再利用といったさまざまな技術資産を持つ。これをUSB3.0に応用、ホストIPやハブIP、デバイスIPなどやLink層、PHY層のIPなどを設計した。


当社におけるUSB3.0開発の基幹技術


USB3.0 Host Controller 概要


今回のμPD720200ホストコントローラは、USB3.0の2つのポートとUSB2.0の2つのポートから、拡張HCIを経てPCIeの出力へとつなぐことのできるチップである。90nmプロセスで設計した。コネクタはUSB2.0と若干違い、USB3.0の追加端子を利用する。NECエレはノートPC用およびデスクトップPC用の拡張ボードを試作し実証した。今後は、この拡張ボードを製作するパートナーを集める。


パートナー会社との連携


さらに相互運用性テストとして、USB3.0とSTAT-IIブリッジとを結び外部ストレージと接続するためのチップをLucidPort Technology社が開発しているが、このチップとの相互運用性をこれからテストする。LucidPort社に対してもNECはIPを供給し設計を支援した。

今後NECエレクトロニクスは、USB3.0技術資産を利用して、IPを外部へ提供する。ただし、IPライセンスビジネスではなく、USBのようなインターフェースチップはアナログ部分も含むため、USBのIPだけを提供しても半導体メーカーは動作するチップを製造できないかもしれない。そこで、IPの提供と同時にアナログも含めたデザイン関発を行うデザインハウス的なビジネスをこれまで通り行うとしている。USB2.0の規格がUWB(ウルトラワイドバンド)規格を取り込みワイヤレスUSBとしても拡張したが、USB3.0は5Gbpsと高速すぎるためワイヤレス化がそう簡単ではなく、今のところはワイヤレス化は考えていないという。


(2009/05/19 セミコンポータル編集室)

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