セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

Arm、IoT端末やゲートウェイをますます簡単に作れるソリューションを提供

ArmはIoTや組み込みシステムを短期間に開発できるソリューション「Total Solutions for IoT」(図1)を拡充すると発表した。これは、最初からCPUコアを搭載したSoCモデルである「Corstone」を使いSoCを設計することを前提とし、クラウドベースで開発するツール「Arm Virtual Hardware」を提供する。さらに再利用可能なソフトウエアをいろいろなハードで使えるように標準化するProject Centauriも進展させている。

Total Solutions for IoT / Arm

図1 IoT開発に必要なソリューション「Total Solutions for IoT」 出典:Arm


これまで、半導体メーカーやシステムメーカーがSoCを設計する場合、ArmのCPUコアや他社のIPコアを購入して組み合わせ、自分で独自に設計していた。しかし開発時間が数年かかる場合がありとても長くかかった。そこで、最初から必要なIPをまとめてSoCを作りやすくしておこう、というサブシステムがCorstoneである(図2)。


Introducing Corstone-310 / Arm

図2 ArmのCPUコアをベースにさまざまなIPを搭載したCorstone(Corstone-310の例) 出典:Arm


Corstoneには最初からArmのCortex-MやCortex-Aシリーズのコアが集積されており、さらにニューラルネットワークモデルによるAIコアやその他物理IP、AMBA AXI配線バス、高速インターフェイスIPなども集積されている。システムLSIを構成するモデルとしてこのCorstoneを利用すれば、シリコンに焼き付けてもすでに動作は確認されているIPばかりで確認工程が省ける。SoCの一つのモデルを提供するわけだ。

IoT端末を設計する場合にある程度決まった機能を埋め込むのに都合がよい。ここに搭載できるCPUコアには、マイコン向けのCortex-Mシリーズと演算性能が優れたCortex-Aシリーズなどがある。しかもたいていのIoTデバイスは端末にせよ、ゲートウェイにせよ少量多品種製品そのものであり、顧客ごとに対応しなければならず、半導体メーカーがSoCを設計・製造するにはそう安くできない。

昨年10月に発表された最初のCorstoneではCortex-M55しかサポートしていなかったが、今回のCorstoneではもっとハイエンドのCortex-M85やCortex-A32などもサポートするようになった。例えばCorstne-1000ではCortex-A32とCortex-Mシリーズ、そしてCorstone-310ではCortex-M85とEthos-U55とAVH機能をサポートする。今後は全てのCPUコアをサポートし、ローエンドからミッドレンジ、ハイエンドまで全てをカバーしていく。ちなみに、Cortex-M85は今回発表した最強のマイコン用CPUコアであり、機械学習のワークロードもサポートする。セキュリティも従来のTrustZonenに加え、PACBTI(Pointer Authentication and Branch Target Identification)も追加してよりセキュアにした。

用途に応じて異なるCorstoneが用意されている(図3)。Corstone-1000を採用したのは「Arm Tota Solution for Cloud Native Edge Devices」であり、Corstone-310を採用したのが「Total Solution for Voice Recognition」である。前者はクラウド上で使うことを前提としており、後者は音声認識用途むけになっている。


An Expanding Library of Technology for Building IoT Solutions / Arm

図3 用途に応じてさまざまなCorstoneを用意していく 出典:Arm


開発ツールのArm Virtual Hardwareは、クラウドベースで、既存のIoTデバイスで数十億個の実績があるCortex-Mシリーズ(M0/M0+/M3/M4/M7/M23/M33など)を仮想的に使うことができ、さらに開発ツールや開発環境も統合している。また、実際に使われてきた第三者のマイコンも仮想的に使えるようにしている。例えばNXP Semiconductorのi.MXマイコンボードやSTMicroelectronicsのSTM32U5シリーズのマイコンボード、さらにはラズベリーパイ4の仮想化モデルも提供する。

さまざまな顧客が使えるようにCortex-Mシリーズのソフトウエアエコシステムでは、ソフトウエアの移植性と再利用を提供しようとしている。コンピュータシステムでは、基本的に共通のハードウエアを作り、ソフトウエアでカスタマイズを実現するが、ソフトウエアでさえもカスタムごとに作成することは大変な作業になる。そこで、Armは、IoT開発のソフトウエアをできるだけ標準化し、多数のメニューを用意することでカスタム化に対応できるようにしている。これがProject Centauri(ケンタウルスの星座から命名)である。このプロジェクトで提供するOpen-CMSIS-Packは9500のマイコンと440種類のボードをサポートしている。また、今回、Cortex-Mエコシステム向けのCDI(共通デバイスインターフェイス)を定義する新たなソフトウエア標準Open-CMSIS-CDIをリリースした。このプロジェクトにはシリコンパートナーやクラウドサービスプロバイダなど主要8社が参加しているという。

(2022/05/13)

月別アーカイブ