Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 技術分析 » 技術分析(半導体応用)

東芝、手のひらサイズのLiDARで300mまで検出

東芝は自動車の周囲360度をイメージングするLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)の小型化を進めているが、このほど手のひらサイズの小型LiDARを開発した(図1)。目に障害を与えない出力規格である「アイセーフ」に準拠しながら300メートルまでの物体を検出できる。東芝はさらなる小型化を進め、2023年度の実用化を目指している。

図1 手のひらサイズで300mまで検出できるLiDAR 出典:東芝

図1 手のひらサイズで300mまで検出できるLiDAR 出典:東芝


LiDARは自動運転に必要なイメージングデバイスであるが、グーグルカーのルーフ上にも設置されている装置で、回転しながら周囲360度のイメージングを行う。可視光のカメラだと濃霧や吹雪ではよく見えないため検出できないが、LiDARは赤外線を発射して物体に反射するまでの時間から物体との距離を測定し、空間をスキャンしながらイメージを描くことができる。いわゆるToF(Time of Flight)センサの一種である。夜間でも検出できるため、カメラよりもよく見える。

しかしLiDARは、1台数十万円〜数万円と高価だ。小型軽量化で低価格にしなければ自動車には搭載できない。グーグルカーのようにルーフ上で回しながら走るのはデザイン上、あるいは空気抵抗上でも良くない。もっと小型軽量で内部の部品も小型にしなければ低価格化に結び付かない。また、応用面では、自動車に搭載するのではなく、例えば高速道路側に設置して通行する自動車の台数を数えるようなインフラ監視やセキュリティの用途だと、手のひらサイズでも使える。

今回のLiDARは、赤外線を発射する投光器を2台用いて300メートルまで届く試作品で、1台では224メートルしか届かない。2台合成すると理論上、√2倍になるとして今回の300メートルを達成した。当初のグーグルカーに搭載されたVelodyne社のLiDARはレーザーと受光素子をアレイ状に大量に搭載し機械的に360度回転させて像を得ていたが、サイズは小型にできなかった。しかも当初の価格は100万円もした。

そこでポリゴンミラーでレーザー光を360回転させると同時に上下にも広げるようにしてサイズダウンを図ったが、それでも小型には遠い。最終的な小型化にはやはりMEMSを使ったミラー方式で光を曲げ、さらに回転させる必要がある。あるいは、VCSEL(面発光レーザー)技術でレーザーデバイスを多数1チップに集積して空間をスキャンするという方法もある。いわば完全固体化のLiDARである。

東芝が今回採ったのはポリゴンミラーを回転させながら、光路を3次元的に曲げて小型化を達成する方法だ(図2)。これにより従来の体積280cm3から71cm3へと、約1/4に小型化した。


投光器のサイズを280cm3から限界に近い71cm3まで小型化 / 東芝

図2 東芝が開発したLiDARは光路の工夫で小型に 出典:東芝


さらにモータ制御回路を搭載したプリント回路基板の面積を従来の25cm2から10cm2へと削減した。そのために高集積ICを使ったとしている。また2台1組で300メートルまで検出できるようにしたため、ポリゴンミラーを回転させる2台のモータの回転角、回転速度、電流の3重ループに同期を取り、レーザービームを0.02度以内の精度で重ね合せることに成功した。発射光のデバイスを2台に分けても全体のシステムサイズは、206cm3、と昨年の試作品よりも40%削減されたという。

参考資料
1. 「東芝、手のひらサイズのLiDARを開発。世界トップクラスの画質で世界最長計測距離300mを達成」、東芝 (2022/03/18)

ご意見・ご感想