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マシンビジョンデータを遅延なくTSNで通信可能なSOMをAMD/Xilinxが提供

産業用ロボットに使うマシンビジョンに向け、AMD/XilinxはCPU内蔵のFPGAであるSoC、「Ultrascale+」チップを搭載したカメラモジュールに力を入れている。いわゆるフレームグラバーと言われる画像処理ボードを、手のひらに4台のカメラが載るほど小さくした。カメラを賢く小型にすると工場の生産性がぐんと上がる。そのロードマップを明らかにした。

AMD AEC Group(旧Xilinx)DirectorのChetan Khona氏 / 井之上パブリックリレーションズ

図1 AMD AEC Group(旧Xilinx)DirectorのChetan Khona氏 出典:井之上パブリックリレーションズ


さまざまな工場での外観検査試験は未だに人間の目によるチェックが多い。例えば、工場において、適切な量が製品に入っているか、ラベルにインク汚れがないか、製品外観に傷や欠けはないかなど、品質基準を満たしているかどうかをカメラが判定できれば省力化は進む。マシンビジョンは様々な工場で簡単なラベルの読み取りなどに使われてきたが、もっと賢く、もっと人間の目と脳に近づけることで省力化できる。

旧XilinxでISM 担当ディレクタのChetan Khona氏(図1)は、こういったISM(Industrial, Scientific and Medical:産業、科学、医療)市場向けロボットのマシンビジョンを賢く、しかももっと高速に処理するためROS(Robot Operating System) 2を搭載した小型ボード「Kria SOM(System on Module)」製品の将来像について語った。Xilinxは最近AMDに買収され、AEC (Adaptive, Embed, Computing)Groupという部門になり、その部門長が旧XilinxのCEOであったVictor Peng氏である。ここではわかりやすくするため、Xilinxという社名で統一する。

ISM市場での産業向け、医療向け、サイエンス(組み込み)向けはTime to Market(T2M)が長く、5〜6年かかることが多い。T2Mの短縮化を狙い2021年4月にアプリケーションを格納し、リリースした。さらに10月にはドイツのシュトゥットガルトで開かれたマシンビジョンのトレードショーにおいてマシンビジョン用4種類の小型カメラを展示した。


創造とイノベーションの過去と未来 / AMD/Xilinx

図2 ロボットのインテリジェンス化に向かうロードマップ 出典:AMD/Xilinx


このISM市場の中でも特にロボット市場に的を絞るようになった。ロボット市場はインテリジェンスが強く求められるからだ。このため、オープンソースの自律システムからモジュール式の汎用ハードウエア(今回のKria SOM)、VR/ARを使ったリアルタイムシミュレーション(すなわちメタバース)、AIメソッドなどへと進化の計画が見えている(図2)。こういった進化を通して、予知保全を行えるようなテクノロジーへとつながっていく。ロボット用のOSであるROS 1ではリアルタイムを持ったソフトウエアスタックが少なかったが、ROS 2ではすべてのソフトウエア部品がリアルタイム性を持つようになった。

Xilinxが用意するKria K26 SOMモジュール(図3)は、ROS 2を搭載した小型ボードであり、KRS(Kria Robotic Software Stack)を介してXilinxのアダプティブコンピューティングを利用することでカスタム化が図れ、差別化できるようになる。


KRS: 産業用ロボティクス向けにハードウェアでROS2を高速化/ AMD/Xilinx

図3 ROS 2を搭載した小型ボードKria K26でロボットのインテリジェント化を目指す 出典:AMD/Xilinx


さらにこれからの工場内のネットワークでは、リアルタイムで制御するシステムが強く求められている。TSN(Time Sensitive Network)は、工場内の機械同士をつなぐネットワークにEthernetを使い、遅延なくリアルタイムで機械内部のセンサとアクチュエータ間や、機械同士を通信できるようにする技術である。「TSNは未来工場で使われる重要な技術」とKhona氏は位置付けている。

それだけではない。工場内ではTSNのような有線ではなく無線によるフレキシビリティも求められている。いわゆるローカル5Gがそれである。無線でつなぐ方が通信は便利で、しかもスケーラビリティが必要な場合にはローカル5Gの無線ネットワークで工場内の機械同士や、作業員のモバイル端末と機械との通信などには有効な手段となる。


5GでのTSNの実装/ AMD/Xilinx

図4 ローカル5GとTSNを通信できるようにするIPを開発中 出典:AMD/Xilinx

そこで、Xilinxは5GとTSNをつなげるようにするため、5G-TSNブリッジと呼ぶトランスレータを開発中である(図4)。有線と無線とでは最下層の物理層にそれぞれのチップが位置するが、その上のレイヤーにトランスレータを置く。TSNのシステムでは、データリンク層内でパケットストリームへのメンバーユーザーを識別し、その結果トラフィックタイプの違いを区別する。この識別を遅延や変動なく行うにはパケット1個ずつ指定された方法で解析する必要があるとしている。年内にはそのIPコア開発を終え製品化したい、とKhona氏は述べている。

(2022/02/25)

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