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AIアプリを簡単に作成、チップ評価もできる開発ツール、フィックスターズ開発

AIのアプリケーションソフトウエアをチップ上に焼き付けるための開発ツールを使って、自分の行いたい機械学習などのAIを簡単に実行できるようになる。ソフトウエア開発会社のフィックスターズは、SaaSのソフトウエアからAIチップにソフトを焼き付け機械学習させる開発ツールをリリースした。これまでは機械学習をチップに組み込み、実行させることはそれほど簡単ではなかった。

これまで例えば、AIを使った自動外観検査装置では、カメラからの映像を撮り、キズや欠陥を認識し、自動的に良品と不良品を分ける。しかしどのようなキズが不良品なのか、現場でなければわからない。このため、現場とAIエンジニアとの間には深いギャップがあり、プログラミングの知識がなければ外観検査を自動的に行うソフトウエアを書けなかった。

フィックスターズが最近開発したツール「Genesis」を使えば、コーディングしなくても現場が望むようなアプリケーションを作成できる。しかもAIのアルゴリズムを実行するCPUやGPU、FPGA、AI専用チップなどを使ってどのデバイスを使えば最もコストパフォーマンスや電力効率が良いのかを評価することもできる。ニューラルネットワークは、もともと行列演算に向いた計算を行うため、精度の低い積和演算回路を多数集積したGPUがニューラルネットワークの演算に最も向いている。しかし、コストパフォーマンスや消費電力などの点で、現場でやりたい外観検査に向くデバイスかどうかを評価できなかった。

元々、フィックスターズは、顧客の書いたアプリケーションソフトを預かり、それを顧客の要望に沿ってチューニングし、高速化することで顧客に納入する、というサービスを得意としていた。この経験をAIソフト制作にも活かす。つまり、開発ツールのテンプレートにあるコンピュータビジョンAIに必要な処理を選び、ビルディングブック(後述)から現場の外観検査をするのに適した機能を組み合わせて、アプリケーションを作成してくれる。最適化するコンパイラといえる。

この開発ソフトを使うことによって、開発効率は10倍に上がるという。すなわち、従来5日かかっていた作業が半日でできることになる(図1)。


図1 AIのアプリケーションを作成する時間を短縮できる 出典:フィックスターズ

図1 AIのアプリケーションを作成する時間を短縮できる 出典:フィックスターズ


この開発ツールGenesisは、コンピュータビジョンや画像認識などに適用するツールであり、例えば大勢の人が歩いている街の映像から人の数を数えたり、クルマのナンバープレートを認識したりするような応用に使う。物体認証のアプリケーションを作る場合には、図2に示すような手順で行う。


図2 開発ツールに内蔵している各種のテンプレートやビルディングブロックからユーザーの作製したいアプリをコーディングなして作成する 出典:フィックスターズ

図2 開発ツールに内蔵している各種のテンプレートやビルディングブロックからユーザーの作製したいアプリをコーディングなして作成する 出典:フィックスターズ


まず、テンプレートの中から自分が行いたいAI処理や画像処理を選び、そして各種フィルタ処理や物体認識、深度測定などの機能単位で多数用意されているビルディングブロックを汲み合わせて、ビジュアルプログラミングのようにしてアプリケーションを作成する。

実際に、カメラから映像を撮り、物体検出機能を通してディスプレイで見る、という作業を行う場合、カメラのRGBの解像度などを含む前処理をしてデータ形式を変換し、物体検出回路に通す。この回路を出た後はデータ形式を元に戻してディスプレイで移るように変換する。

Genesisのもう一つのサービスは、個々のアプリがどのように動くのかを評価するというレポート機能もある。レポート機能を使ってCPUやGPU、FPGA、あるいは汎用AIチップなどで複数のデバイスにインプリメントすると、アプリケーションの実行時間、消費電力、スループット(フレーム/秒)などを一覧できる。この結果。自分が作るべきAIのアプリケーションと半導体ICを選択できる(図3)。


図3 どの半導体チップが効率高いのかを評価できる 出典:フィックスターズ

図3 どの半導体チップが効率高いのかを評価できる 出典:フィックスターズ


今のところ、NvidiaのGPUボードやIntelのCPUボード、XilinxのFPGA、GoogleのTPUチップボードなどを選択できるが、今後順次、選択できるAIボードを増やしていく計画である。また物体検出のビルディングブロックは今後、モデルを更新していくという。

また、フィックスターズは今回のコンピュータビジョンを想定したAI開発だけではなく、医療画像診断支援装置やAIコードレビューなどAIに関するビジネスに加え、量子アニーリング向けの事業も計画している。


(2021/01/28)

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