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Infineon、ソーラーと蓄電システムにSiC市場を拡大

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SiのIGBTよりも価格が1桁高く、市場調査会社の予測は毎年後送りになるほど外れてきたSiCパワーMOSFETだが、蓄電池との組み合わせでソーラーパネルのDC-DC/DC-ACコンバータなどでじわじわと広がり始めた(図1)。SiCのメリットは高耐圧、高周波であり、装置の小型化のメリットが最も大きい。なぜソーラーのような大きな設備でも小型化が必要なのか。

A look back to 2019 - PV, EV and UPS penetrated by SiC, but other use cases on the top

図1 Infineonが注力する6つの分野 出典:Infineon Technologies


実は、住宅向け蓄電池に使うパワーコンディショナーにSiC MOSFETを使う事例が増えている。オムロンソーシャルソリューションズは、1994年以来ソーラー発電システムのパワーコンディショナーを手掛けてきた。これは直流出力の太陽電池(電池といっても電気を貯めない)で発電した直流電力を交流に変換して架線に戻すという機能を持つもので、電力会社に電力を戻すために欠かせない。累計で125万台以上を出荷してきたが、2015年からはソーラー発電による電力を貯める蓄電システムも手掛け、累計で6万台以上を出荷してきた。これらのソーラーパワコンや蓄電システムにSiC MOSFETを使うのである。

ソーラーパワーコンディショナーの小型化への要求は極めて強く、輸送や装置の設置の点から体積も重量も共に小さくしたい。SiCのショットキーダイオードやMOSFETを使うことで、電子と正孔の両キャリアを使うIGBTの欠点だった少数キャリアの蓄積時間がないためシステムを高速化・高周波化ができる。その結果、電荷を貯めるコイルとコンデンサを小さくできるため、システムを小型にできる。

ただし、現在のMOSFETは移動度がSiよりも1桁程度小さいため、オン抵抗が大きい。このため、導通損失が大きく、スイッチング損失が少なくてもシステム全体のメリットはさほど大きくない。しかし、電源の整流ダイオードの代わりに同期整流でMOSFETを使うと0Vから電流が流れるため導通損失は小さくなり、IGBTと比べ電力損失は半分以下になった、という結果をオムロンは示した。

SiC MOSFETを設計・製造しているInfineon Technologiesは、6分野でのSiC MOSFETの応用を狙っている。ソーラーシステム、電気自動車(EV)、EV用充電器/充電ステーション、電車、UPS(無停電電源)、モータ駆動、である。EV応用は期待が先行しているが、ソーラーシステムは意外な応用であった。現実には、ソーラーのFIT(Feed in Tariff)をはじめとする補助金が切れ始めると同時に、電力会社も発電源として認識し始めると、ソーラーシステムの効率化が問題視され始めた。ここにSiC MOSFETの新市場となった。

電源は系統のように大電力を伝送する場合には、電圧を上げることが常識だ。このためソーラーシステムでもDC-DCコンバータで昇圧し、最後にDC-ACコンバータで交流に直し送電する。と同時に昼間は蓄電システムにも貯める。夜間などでは蓄電システムの電力を使い、使用電力の平準化を図ることで、昼間しか発電しないソーラー電力をできる限り平滑制御する。高電圧ではSiC半導体が威力を発揮する。今後ソーラーシステムは1000Vから1500Vへと高電圧化することで電力源としての地位を確立することになる。2024年には1500V系のソーラー電力は126GWに達するという予測もある(図2)。


One of the major trends is the change from 1000 V to 1500 V in utility-scale PV/solar projects

図2 ソーラーは1000Vから1500Vへ 本格的な電力源に 出典:Infineon Technologies


高耐圧半導体だと部品点数を削減でき、BOM(Bill of Materials:部品コスト)コストを削減できる。

また、最近はデータセンターでも電力容量の大型化が求められており、電源はより小型で大容量が求められる。すなわち高効率化が必須となる。データセンターのコンピュータを冷却するエアコンを設置することを考えると、ランニングコストに比べ、初期の電源自体の価格が多少上がっても、コストメリットは大きいとInfineonは見る。効率の高い電源を使えば、発熱が少なく、冷却システムが簡単になるためコストメリットはさらに大きい。このため、データセンターに限らず、さまざまな電源にSiCやGaNの半導体が使われるようになっている。


(2020/10/27)

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