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スマートビルディングの予知保全でダウンタイムゼロを目指すInfineon

Industry 4.0をオフィスビルなどに適用するとスマートビルディングになる。スマートビルにIoTシステムを適用することで予知保全が可能になり、故障前に部品を交換することでダウンタイムゼロのビルができる。Infineon Technologiesがスマートビル市場に狙いを定めた。センサ、制御マイコン、パワー半導体、セキュアマイコン。これらが市場攻略のカギを握る。

図1 スマートビルには空調・電力・照明・入退出セキュリティが共通にある 出典:Infineon Technologies

図1 スマートビルには空調・電力・照明・入退出セキュリティが共通にある 出典:Infineon Technologies


Infineonがなぜスマートビルディングへのソリューションを提供するか。スマートビルは、Industry 4.0をそのまま適用できる応用の一つであるからだ。しかも半導体メーカーから見れば、一般にIndustry 4.0などのIoT応用は究極の少量多品種ビジネスであり、AI同様コンサルティングしながら相手の要求を満たす仕様でICやモジュールを設計しなければならない。しかし、スマートビルなら少量多品種ではなく、共通のシステムが多い。空調設備(HVAC)、電力変換設備(Power Supplies)、照明器具(Lighting)、入退出セキュリティ(Access Control)、エレベータなどはほとんどのビルで共通の設備である(図1)。これらに向けたチップセットであれば、カスタマイズはゼロではないが、共通部分はかなり多い。

加えて、ビルで求められる省エネ、デジタル化はこれからのビルの効率化には欠かせない。例えば、欧州で排出されるCO2の36%がビルからであり、EU全体のエネルギー消費の40%がビルからだという。ビルは都市化には欠かせない設備であり、2050年までには世界の人口の68%が都市に住むという統計があるという。こういった状況から、スマートビル技術は次世代のエネルギー問題解決と快適な職場・居住の場として大きなトレンドであると見ることができる。


Overall market for connected equipment in Smart Builsings

図2 スマートビルはCAGR15.7%で成長 出典:Infineon Technologies, IHS Markit, Smart Building Report


Industry 4.0では無線や有線のコネクテッド技術が欠かせない。市場調査会社のIHS MarkitとSmart Building Reportは、スマートビルのコネクティビティ技術の年率平均成長率CAGRが2022年まで15.7%で成長すると予測している(図2)。そこで、スマートビルとは、さまざまなインテリジェントなデバイスが接続されている商業ビルやオフィスビルだと定義できる。そして、さまざまなデバイスからデータを収集・処理し、情報に変換し可視化すると同時に、データに基づき快適になるように自律的に設備を制御する。エネルギー効率を上げるだけではなく快適さも両立させるのである。

ビル内の設備を4つのドメインで定義すると、1) 機械系では、空調やエレベータ、エスカレータ、自動ドアや室内へのアクセス、2) 電気系では、照明、火災検知器、配電系、セキュリティとアラーム、ITインフラ(例えばPoE: Power over Ethernet)、3) エネルギー系では、電力供給やインフラ、4) 配管インフラでは水道管やバルブ、などを想定している。これらの組み合わせによって、スマートビルは時代と共に進化していく。

その進化の仕方は自律運転のレベルと同様に次のようになる。ティア1は、BMS(ビル管理システム)プラットフォームとの接続によってデータ収集と解析を行うための準備段階。ティア2では2つ以上のドメインでBMSとつなぎ、例えばエネルギーと照明を制御する。さらにドメインを増やしながら、コマンド制御のティア3、セキュリティを加えた4へと進化する。ティア5まで行くと、データ解析による予知保全ができるようにする。

ただ、Infineonは半導体チップメーカーであるため、モジュールやボード、システムインテグレータなどのバリューチェーンでパートナーとのエコシステムを作る必要がある。クラウドプロバイダー、ビル建設会社、ビル管理会社などとエコシステムを築き、さまざまなサプライヤーのバリューを上げていく。


図3 Infineonが提供するセンサからレーダー、ToF、RFコネクティビティ、マイコン、セキュリティ、パワーマネジメントなどの製品群 出典:Infineon Technologies

図3 Infineonが提供するセンサからレーダー、ToF、RFコネクティビティ、マイコン、セキュリティ、パワーマネジメントなどの製品群 出典:Infineon Technologies


ビルシステム全体のシステムから、さまざまな設備を効率良く動かすための半導体チップをInfineonは揃えている(図3)。例えば、センサでは、マイクロフォンや圧力センサ、CO2センサ、においセンサ、イメージセンサなどを持つほか、生体認証用の3Dレーダーや3Dイメージマッピング向けのToF(Time of Flight)センサ、磁気・電流センサなどを持つ。通信系ではIoTや5G向けのRFチップがある。さらに頭脳となるマイコンでは機能安全を集積したものがあり、セキュリティ向けに複数の暗号を集積したTPM(Trusted Platform Module)チップもある。

センサからマイコン、アクチュエータに至る製品のポートフォリオは、Cypressとの合併によって充実した。例えば、テナントが閉店時間になるとシャッターを閉めるが、それをセンサで検出し、さらにBMS(ビル管理システム)を通して、データをクラウドへ上げ、保存・管理する。システムインテグレータやクラウドプロバイダー、ビル建設会社、ビル管理会社などとエコシステムはそのためにある。図4にあるように最終的にビル管理会社を通じて、快適なオフィスや居住空間ができているか、に関するフィードバックをもらい、センサからアクチュエータに至る半導体チップを改良していく。


図4 半導体メーカーのInfineonはシステムインテグレータ(Klika Tech)やクラウドベンダー(AWS)と手を組み、エコシステムを構築、スマートビルをどんどん進化させていく 出典:Infineon Technologies

図4 半導体メーカーのInfineonはシステムインテグレータ(Klika Tech)やクラウドベンダー(AWS)と手を組み、エコシステムを構築、スマートビルをどんどん進化させていく 出典:Infineon Technologies


LED照明ではLEDドライバや照度センサ、パワーソリューション、空調では流量センサやモーター駆動のパワー半導体などを揃えているが、Infineonの得意な現製品を提供するだけではない。スマートビルでは複雑になりがちな電力線を簡単にするためEthernetラインに電力供給ラインを共存させたPoE(Power over Ethernet)を用いる。また各種のセンサをベースとする自律運転も目指す。さらにビル運転中の空調機や照明器具、電力設備などにIoTセンサを配置して予知保全を目指す。ビルはますます賢くなり(スマート化)故障前に修理できるようなIndustry 4.0そのものに変化していく。半導体メーカーとしても部品を供給するだけではなく、メンテナンスも組み込んだ従量制ビジネスモデルの可能性が出てくる。

(2020/06/02)

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