BlackBerry QNX、音響ECUをまとめたソフトウエアプラットフォームを発表
最新のクルマのECU(電子制御ユニット)の増加に対する解として、ECUをいくつかまとめてドメインとするドメインコントローラの考え方が出てきている。このほど、リアルタイムOS(RTOS)のBlackBerry QNXが、音響や音楽などの音に関するECUをひとまとめにして制御する音響管理プラットフォーム3.0を発表した。
図1 BlackBerry Technology Solutions, Sales and Business Development担当のSVP兼共同代表のKaivan Karimi氏
同社が東京で開催したBlackBerry QNX TECHForumで、BlackBerry Technology Solutions, Sales and Business Development担当のSVP兼共同代表のKaivan Karimi氏(図1)が、明らかにした。
最近の高級車はECUが80〜100個も搭載されており、この勢いで行けば極めて複雑になる。ECU間を結ぶ配線がスパゲティ状になったり、どれかがサイバー攻撃を受けたり
するなど新たな問題が浮上する。そこで、ECUをいくつかまとめるドメインという考え方が出てきた。一方マイコンやSoCではマルチコア化が進み、仮想化に対応しやすくなってきた。
こういった技術的な環境が整ってきたことから、ソフトウエアのOS側でもドメインアーキテクチャに適したOSやハイパーバイザの考え方が生まれてきた。今回、BlackBerry QNXが示したのは、音に関するECUを束ねたドメインコントローラに使うソフトウエアプラットフォームだ。通常のオーディオだけではなく、ノイズキャンセラやアラーム音/チャイム音、ウィンカーの音など音響・音に関したECUはこれまでは、それぞれのECUとして設計されてきた。
今回BlackBerry QNXが示した音響管理プラットフォーム(AMP:Audio Management Platform)3.0(図2)は、音声処理、車内のコミュニケーションの改善、エンジン音のノイズキャンセル、カメラや安全上の警告音、音楽を聴くオーディオなどの処理を全てこのソフトウエアプラットフォームで実現する。車内のコミュニケーションの改善とは、例えばドライバーが話をしていても後部座席にいる人には良く聞き取れない場合があるが、マイクを各席の天井に設けて、聞きやすくする機能は大きめのワンボックスカーなどで威力を発揮する。これまでは専用のECUで処理していた。
図2 BlackBerry QNXのAMP3.0の主な機能 出典:BlackBerry QNX
このAMP3.0の最大のメリットは、クルマの配線や音響システムを簡略にすることであり、それは低コストにもつながっている。例えば、音声処理に従来は高価なDSP(Digital Signal Processor)を用いて計算集約的な音響アプリケーションを実装しなくてもすむ。また、基本的なラジオから高級オーディオまでサポートしている。また、音の自動チューニング機能があるため、タイムツーマーケットを短縮できる。
今回はそのための半導体チップも開発した。同社はOEM(自動車メーカー)2社と、半導体関係の企業3社と共同開発し、1チップの音響処理用マルチコアSoCを設計した、とKarimi氏は述べている。ソフトとハード(半導体チップ)が組み合わさってできた新しい音響用のアーキテクチャ(図3)ともいえる。
図3 AMP3.0アーキテクチャ 出典:BlackBerry QNX
このソフトウエアプラットフォームをティア1サプライヤには、早めに利用してもらいフィードバックをもらっているが、音声アシスタント企業が興味を持っているという。今後のクルマでは音声入力で応答する音声認識技術が使われていくからだ。音声をきちんと認識するためのビームフォーミング技術も載せていく。