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MRAMはマイコンやプロセッサへの集積化で超低消費電力の威力を発揮

東北大学CIES主催のテクノロジーフォーラム(図1)が今年も開催され、STT-MRAM技術の位置づけがより明確になってきた。マイコンやロジックへの組み込みメモリ(RAM)としての位置づけである。ReRAMやPCRAMのような書き換え回数に制限のあるデバイスは、不揮発性メモリROMに近い使い方に留まる。

図1 CIES Technology Symposiumの意義と概要を講演するセンター長の遠藤哲郎教授

図1 CIES Technology Symposiumの意義と概要を講演するセンター長の遠藤哲郎教授


東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES: Center for Innovative Integrated Electronic Systems)主催の5th CIES Technology Forumが東京で開催された。初日は、Intel、Samsung、TSMCなどSTT-MRAM製造を手掛ける企業が講演し、午後にはそれを設計に取り入れるQualcommが講演した。前回は、SamsungとGlobalFoundriesが組み込み応用でのeMRAMへの道を示したが、今回はTSMCも22nmプロセスのeMRAMの検討を始めたと述べた。2019年2月のISSCCでIntelもeMRAMの量産化の準備ができていると発表した。

MRAMの集積度は実はDRAMほどは高くない。今のところ256Mビットの製品しかないためDRAMと競争するのではなく、不揮発性を利用した超低消費電力RAMという位置づけになる。同じ不揮発性でもNANDフラッシュは、プログラム用途であれ、データ格納用途であれ、ROM的な動作しかできない。しかしMRAMは、書き換え回数がほぼ10の10乗以上あるため、DRAMやSRAMと同様、RAM動作が可能である。

そうすると、汎用のプロセッサやロジックでは、内部のレジスタやバッファにSRAMを使うため、このSRAMをMRAMで置き換えることで、面積は小さくなり、消費電力は大きく削減される。これまでのNANDフラッシュはあくまでもデータ格納やプログラムROMという使い方しかできなかった。MRAMは集積度が高くないことからプロセッサのSRAM部分を置き換える応用がありうる。広い面積を擁するSRAMをMRAMで置き換えると、メモリセル部分が3次元構造になっているため面積は半分になり、しかも不揮発性であるから電源を切ってもメモリ内容は残るため、低消費電力化が可能になる。

そして、本命の応用として組み込みフラッシュのようなマイコンやSoCのフラッシュメモリを置き換えることができる。マイコンやSoCの内部で動作させない時間のあいだ、MRAMの電源を切っていくことができる。つまり、フラッシュメモリよりも低電力にできる上、RAM動作も可能である。すなわちマイコンやSoCのメモリやレジスタ、バッファの消費電力を下げることができる。

さらに、最近ではディープラーニングが使われるようになってきた。いわゆるAIチップでは、1ニューロンを演算する場合には、多入力のデータ×重みの演算をそれぞれ足して(すなわちMAC(積和)演算)、シグモイド関数で1か0を出力することでニューロン1個の演算を行う。機械学習やディープラーニングでは、ニューロンが並列に数百、数千個をモデルとして採り入れているため並列に演算する。1ニューロンごとに演算した結果をメモリに格納し、次のニューロンに向けてデータとして保存し、重みのデータもメモリに格納しておく。次のニューロンの演算でも同様に、MACで重みとデータを掛け算し全ての入力を足し算し、出力する。その出力データをさらにメモリへ格納する。このようなアーキテクチャであるから、メモリとMAC演算器とはかなり近い場所に置くことになる。

これまでのフォンノイマン型プロセッサだと、メモリに命令とデータを格納しておき、データを足し算ないし引き算を行う。掛け算と割り算はソフトウエアで何度も繰り返すが、ソフトだと時間がかかるため、専用のMAC演算ハードウエア回路(すなわちDSPやGPU)を集積することが多い。このメモリ部分にMRAMを使えば、格納している間の電源をオフにして消費電力を下げることができる。

センター長の遠藤教授は、STT-MRAMを生かせるコンピュータアーキテクチャを考えていきたいとする。2月のISSCC 2019ではエネルギーハーベスティングで動く。MRAM搭載マイコンが発表されたが、従来のTPU(Tensor Processing Unit)の1万分の一という非常に小さな消費電力で動いたという。これまでのようなMRAMを使ってパワーゲーティングするといった低消費電力技術だと1/100程度しか下がらないが、CMOSとMRAMとのハイブリッドプロセスでアーキテクチャの最適化を行うことで達成したものだという。これがMRAMの新しい可能性になる。

MRAMのテスタは、Keysight Technologyからパラメータテストの測定器が販売されているが、アドバンテストからも発売される予定だという。

遠藤教授のCIESでは、MRAMだけではなく、GaN on Siの開発にも力を入れている。GaNデバイスとしてSiを基板に使っているためコスト的には安くなる可能性が高い。最近開発したデバイスは耐圧1200Vで100A流せるGaNデバイスであり、これを使ってDC-DCコンバータを試作したところ、スイッチング周波数2MHzで動作できたという。このプロジェクトは、パナソニックと共同で開発しており、さらに最近ではホンダのティア1サプライヤであるケイヒンとも共同で取り組んでいる。

GaNデバイスは「エネルギー損失がシリコンの1/10と効率が高いため、ヒートシンクが簡単でよい、インダクタLとキャパシタCは小さくてすむため小型にできる、2MHzというスイッチング周波数はAMとFMラジオの間にある周波数帯であるためノイズの影響が少ない」、という三つの特長がある(遠藤教授)。EV(電気自動車)のインバータやオンボードチャージャーなどへの応用だけにとどまらず、400V系のデータセンターや240Vの家電、オフィスなどにも応用が広がる。さらにGaN on Siの特長としてSiとの集積可能というメリットも大きい。

(2019/04/03)

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