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クルマのトレンドはACESで:カーエレ展2019(後編)

国際カーエレクトロニクス技術展からのレポート第2弾では、赤色LEDリアランプにメッセージ性を持たせる提案や、電気自動車、電気を多用するプラグインハイブリッドなどによる多様な電源IC(DC-DCコンバータ)、運転手に伝えるハプティクスの提案、動作データ収集・処理・解析・可視化ツールなどを紹介する。

図1 テールランプを連続的に点灯してメッセージ性を持たせる ON Semiconductorが提案

図1 テールランプを連続的に点灯してメッセージ性を持たせる ON Semiconductorが提案


ON Semiconductorは、リアランプで新しい交通のコミュニケーションを提案している。通路を譲ると、「ありがとう」を意味するハザードランプを1〜2回点滅させることが国内では暗黙のルールとして行われてきた。ただし、世界では通用しない。LEDリアランプは、小さなランプを集めた形状を持つが、多数のLEDを並べていることを利用して、メッセージを後ろのクルマに伝えられないだろうか。ON Semiはこう考え、LEDランプを例えば左から右へ(あるいはその逆)光が流れるように順番に点灯させる(図1)とか、簡単なメッセージを示すデモを行った。

LEDリアランプは多数のLED素子を順番に点灯させたり、点滅させたり、いろいろなパターンを描くことができる。何種類もの複雑なパターンは運転手を困らせるだろうが、「ありがとう」、「お先にどうぞ」程度のメッセージなら可能だろう。ON Semiはメッセージパターンを世界的に標準化したいという。

電源、DC-DCコンの需要も大きい

EVのエンジンとなる駆動モーターに使う電池は、300V前後まで昇圧することが多いが、回生ブレーキシステムをはじめとするマイルドハイブリッド車は48Vで駆動する。ただし、多数のECU電子回路は5Vや3.3Vで動作するICを使っているため、48Vから12V(従来の鉛蓄電池)あるいはECUの5V/3.3Vに落とすためのDC-DCコンバータが必要となる。電源用ICに求められる要求は、高効率だったり、小型化だったりとさまざまだ。

Analog Devicesは48Vから12Vまで20Aという大電流負荷でも効率が97.2%と高い降圧コンバータを開発した。従来のバック(buck)コンバータだけではオンタイムが大きくなってしまうため、今回はチャージポンプ回路とバックコンバータの2段階の降圧回路を用いた。チャージポンプで48Vから24Vまで落としても効率は99%、24Vから12Vに落とすのにバックコンバータで98.5%くらいに落ちるが、合計でも97.5%近くは維持できるという。このIC「LTC7821」は500kHzのスイッチング周波数でコイルを内蔵した大電流用パッケージを用いた。

ADIは、このDC-DCコンバータを用いた電源回路で、出力電圧11.36V、電流35.16Aの約400Wを提供できるデモを行っていた(図2)。


図2 Analog Devicesの48Vから12Vまで400Wを97%以上の効率で提供できる電源IC

図2 Analog Devicesの48Vから12Vまで400Wを97%以上の効率で提供できる電源IC


電源用ICを手掛けるリコー電子デバイスは、効率が85%程度とADIの製品よりは低いものの、48Vから3.3V/5Vへ直接降圧するDC-DCコンバータ「R1260シリーズ」、「R1560/R1561シリーズ」などを展示した。R1260シリーズの電流は5A程度、R1560シリーズは100mAまでだが、48V電源からマイコンを直接駆動するのに向く。

コイルを内蔵したDC-DCコンバータでは、トレックスセミコンダクターが小電流ながら展示していた(図3)。このXDL600シリーズは、本来外付けのコイルをICパッケージ内に集積したため、外付け部品がコンデンサだけで済むため電源回路を小さくできる。入力電圧は2.7〜5.5V、3.0〜18V、3.0〜36Vの3種類で、出力電流は1.5A、500mA、600mAとそれほど大きくはない。3種類とも制御方式がPWMとPWM/PFMの2種類あり、合計6品種ある。


図3 コイルを内蔵した小型パッケージ 出典:トレックスセミコンダクター

図3 コイルを内蔵した小型パッケージ 出典:トレックスセミコンダクター


トレックスやローム、新日本無線(NJR)などが、QFNパッケージの下面にわずかな切込みを付けて、ハンダの濡れ性を改善したウェッタブルフランク構造(図4)を採用している。特に今回の展示会では一つの大きな流れとなった。これは、小さな切込みによってハンダが表面張力で金属端子全面に接着できるようになる技術。このため自動外観検査で簡単に良否をチェックできるようになる。


図4 ハンダの濡れ性を改善したウェッタブルフランク構造が主流に 出典:トレックスセミコンダクター

図4 ハンダの濡れ性を改善したウェッタブルフランク構造が主流に 出典:トレックスセミコンダクター


また、運転中にハンドルから手を放してダッシュボードを操作することは望ましくない。このため、スマートフォンで培われたハプティクスをユーザーインターフェースに使う例が出てきた。すでに大手スマホメーカーにも納入実績のある日本電産は、ドライバシートに振動するハプティクスデバイスを仕掛け、例えばクルマが白線を逸脱すると太ももの下がブルブルと震えるというデモを見せた(図5)。


図5 ハプティクスデバイスでアラートを知らせる日本電産のデモ

図5 ハプティクスデバイスでアラートを知らせる日本電産のデモ


自動車はすでに、大量のデータを生み出すマシンとなっている。しかし、そのデータを活用できているだろうか。アクセルやブレーキを踏む回数、踏む力、その時のハンドルの回転角度やエンジンの回転数、タイヤの回転数や速度、燃費などさまざまなデータを活用するためのツールが登場した。

2006年12月に創業したアプトポッドは、さまざまな車両データやアナログ、デジタルのセンサの同期を取りながらデータを収集するためのCANトランシーバ製品「Synchronized CAN Transceiver」(図6)や、社内のスマホでデータを収集するためのアプリケーションソフト「Visual M2M Motion」、さらにユーザーが自分で、機械学習やデータ解析などの処理を実装できるソフトウエア開発ツール「Python SDK for intdash Analytics Service」をリリース、展示会でそれらを使ったデモを行った。


図6 クルマのデータを収集するCANトランシーバ オプトポッド社製

図6 クルマのデータを収集するCANトランシーバ オプトポッド社製


アプトポッドは、これまでIoTのプラットフォーム「intdash」を製品化してきた。セルラーネットワークを用いて、遠隔制御に必要な双方向のリアルタイムでのデータのやり取りや、データ収集・解析などを行うツールや、データ解析した結果を可視化するアプリ、自動車向けのクラウドサービスパッケージなどを手掛けてきた。会場で見せたデモは、5台のクルマがサーキット内を走り、クルマのデータ(ここでは速度)を、それぞれ同期を取りながら、可視化したスクリーンである(図7)。これらのデータをクラウドに上げているため、個人のスマホからでも同じデータを見ることができる。


図7 複数のクルマの速度を、同期を取りながら遠隔制御できるアプトポッドのシステム

図7 複数のクルマの速度を、同期を取りながら遠隔制御できるアプトポッドのシステム


ACESのカーシェアリングをモニターするサービス会社(米Uberや中国の滴滴など)や、自動車メーカーの新車開発などに生かせそうだ。

参考資料
1. クルマのトレンドはACESで:カーエレ展2019(前編) (2019/01/22)

(2019/01/23)

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