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ArmがIoTデバイス寄りのプラットフォームMbedを推進

Armは、IoTプラットフォームの「Arm Mbed Platform」を数年前に発表したが、このほどその進化について明らかにした。すでに30万人の開発者コミュニティと80社以上のパートナー企業を持ち、このほどIBMやGMOグローバルサインとも提携、IBMのWatson IoT Platformでもデバイス管理ができるようにし、GMOがMbed Cloudを利用できるように認証した。

このプラットフォームにはデバイスのソフトウエアと、クラウドへ手渡しするデバイス管理のサービスからできており、これまでのIPベンダーとしてのビジネスとは全く異なる。IoTデバイスをクラウドまでつなげ、実際にセンサのデータを可視化、確認するまでのシステムをデバイスメーカーが作ることはそう簡単ではない。IoTデバイスでセルラーネットワークやWi-Fiでインターネットに接続してもクラウドコンピュータをすぐに利用できるわけではない。また、温度や加速度、ジャイロ、圧力、流量などのセンサからのデータを収集して整理・管理するためのソフトウエアがなければクラウドにも送れない。クラウドコンピュータを利用してデータを分析・可視化するIoTシステムは、意外と簡単ではない。だからこそ、IoTビジネスではパートナーが必要なのである。

デバイス側から見ると、クラウドコンピュータに届けた後、自分のスマホやタブレットでセンサデータを見られるようにするまで、パートナーになってもらいたい。システム側からは、データセンターにあるコンピュータ上にセンサデータを扱えるようにしたいが、デバイスのことがよくわからない。IoTデバイスとクラウドをつなぐ人たちが必要なのである。Arm MbedはIoTデバイスとシステムの間を仲介し、セキュリティをしっかり確立させたうえで、クラウドコンピュータを使えるようにするまでをカバーする。

IoTデバイスを制御するためのソフトウエアがArm Mbed OSである。これは、センサからマイコン、トランシーバなどIoTに必要な全ての回路やチップを搭載したIoTデバイスを実現するOSであり、コネクティビティとセキュリティを提供する。IoT開発者は、さまざまな標準規格に準拠した通信機能を活用できるほか、セキュアなIoTを作り上げることができるようになる、と同社IoTサービスグループ部門プレジデントのDipesh Patel氏は語る。

Armは、このほど、Arm Mbed Cloud IoTデバイス管理プラットフォームと、IBM Watson IoTプラットフォームを連携させ、デバイス管理から可視化までセキュリティを確保したうえで、IoTからのデータと分析情報を手元のスマホやタブレット、パソコンでリアルタイムにみられることを狙っている。Mbed Cloud IoTデバイス管理プラットフォームは、IoTデバイスをセキュアに認証・接続して、ソフトウエアのアップデート(SOTA)を行い、デバイスのライフサイクルまで管理するが、分析や可視化はIBM Watson IoTが担う。IBM WatsonはAIでデータを解析するためのコグニティブコンピュータであり、IBM Watson IoTプラットフォームは、データ収集とセキュリティ機能はMbedと重なるが、さらにデータ解析と可視化も担う。そのためにIBMのBluemix クラウドプラットフォームに接続し、クラウドコンピューティングで解析と可視化ができるようにしている。

ArmはこれまでもMbedを進化させてきた。この3月には、Mbed OSがIoTをセルラーネットワークに直接接続できるNB(Narrow Band)-IoTや、移動中のIoTデバイスを対象とするCat-M1にも対応するなど、中身を充実させてきた。昨年10月末にはゲートウェイに対応したMbed Edgeを発表、IoTデバイスとクラウドとの接続や、IoTデバイスを制御するアプリケーションを実行できる機能を設けている。

また、対外的なパートナーとも協調し、例えばGMOグローバルサインは、Arm Mbedの電子認証を行い、自社のIoTプラットフォームイン加えた。また、村田製作所はIoTプラットフォームであるNAONA CloudとArm Mbed Cloudとをつなぐ通信モジュールをリリースしている。

これらのArm Mbedビジネスは、これまでのIPベンダーという別のビジネスモデルであり、ユーザーからサブスクリプションベースの料金を設定しているという。このため顧客は、これまでのようなIPユーザーすなわち半導体メーカーではなく、ICユーザー、システムベンダー、サービスプロバイダなど極めて多岐にわたる。


図1 ArmのMbedビジネスのパートナー企業の例 出典:Arm


こういった新しいビジネスモデルを推進して行くためにソフトバンクによる買収は有効だった、とArmのあるマネージャーは昨年のArm Technology Conferenceで述べている。それまでの株主の元では1〜2年先のことしか開発できなく、長期的な目で開発することを許されなかったという。ソフトバンクの孫正義会長もArmを長期的な目で見ており、システムと半導体の両面からこれからの未来を攻めていくと述べている。例えば、孫会長はSIMカードをチップ内の1回路に集積するIPコア、iSIMを5月9日の決算報告会で明らかにしている。

(2018/05/15)

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