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半導体メーカーがこぞって参加したカーエレ展

先週、東京ビッグサイトで開催された「第8回国際カーエレクトロニクス技術展」は久々に大手半導体が集まる展示会となった。Qualcomm、ルネサスエレクトロニクス、STMicroelectronics、Infineon Technologies、Cypress semiconductor、Linear Technology、Xilinx、ON Semiconductor、新日本無線、ローム、ams、Vishayなど、そうそうたるメンバーが集まった。

図1 模型の自動運転車で車庫入れをデモ 出典:ルネサスエレクトロニクス

図1 模型の自動運転車で車庫入れをデモ 出典:ルネサスエレクトロニクス


いくつか紹介する。ルネサスはまるで半導体メーカーからソリューションプロバイダーへ転身しているかのような展示だった。まず、クルマ用の半導体チップよりもそれを使った利用シーンに重きを置いた。まず自動駐車システムだ。ここでは、模型の自律運転車を作り(図1)、自動駐車をデモした。空いている駐車場の情報をクラウドに上げ、その場所の情報をクルマが受け取ると、その駐車場を目指して自動運転で走行する。もちろん、バックで車庫に入れる。これには制御用マイコンと認識・判断機能を持つSoCの両方を使っているが、マイコンのことは強調せずルネサスは自動運転車向けの半導体を持っていることを暗に匂わせている。

もう一つはコックピットにAR(拡張現実)を使ったデモである(図2)。デモでは、霧の濃い状況を走行する場合を想定している。遠くが見えないが、ここにARを導入して遠方に見えるはずの映像を表示する。ARは現実のシーンに仮想的なオブジェクトを重ねる技術である。これらを重ねて、全ての情報をフロントガラスに表示するというヘッドアップディスプレイ(HUD)を利用する。前方のクルマや人、バイクなど衝突対象物をレーダーなどで検出し、それを前方画面に重ねてARで表示するというもの。


図2 ARを利用したルネサスのHUDコックピット

図2 ARを利用したルネサスのHUDコックピット


技術的にもボディやシャシーなどの制御系において、IGBTインバータとドライバ、マイコンによるコントローラの三つのボードをスタックし実装密度を上げたパワーインバータや、インバータ内蔵モータなども展示した。これらは、将来本格化する電気自動車(EV)に向け小型化したモジュールやインバータである。これを支える半導体として、例えばRH850マイコンは、1チップで駆動用のモータと回生用のモータ(ジェネレータ)を同時に制御できる。いわばテクノロジーに裏打ちされたソリューションと言えよう。

ファブレス半導体トップのQualcommは、EVのワイヤレス充電器を展示、充電パワーを従来の3.6kWから7.4kWに上げた充電モジュールを展示した(図3)。Qualcommの無線技術は、PHV(プラグインハイブリッド)やEVを充電するのにも使われる。物理的にプラグを差し込む訳ではないため、ハードウエア形状の標準化は必要ない。日産自動車のEVリーフは国内の統一規格CHAdeMOに沿って充電器が作られているが、ワイヤレス充電は充電器の上にクルマが止まるだけ。クルマ側の充電器(受信パッド)と駐車場の送信パッドとの間の距離は、製品によるが80~250mmの範囲で電力が伝送されるとQualcomm Europeの事業開発&マーケティング担当VPのAnthony Thomson氏は言う。ワイヤレス充電器を取り付けたリーフを展示していた。


図3 Qualcommが開発したダブルコイル方式のワイヤレス充電パッド 写真の下側

図3 Qualcommが開発したダブルコイル方式のワイヤレス充電パッド 写真の下側


Qualcommは2015年の8月にはBMWのEVであるi8スポーツカーに7.2kWのワイヤレス充電を行うと発表したが、今回、カーエレ展で展示した充電器は7.4kWで、リーフに適用した。これは、ダブルコイル技術によって充電パワーを2倍に上げた受信パッド。図3の下の2重コイルが新製品、上が従来の3.6kW品。磁気共鳴技術を使い、X・Y方向のずれをそれぞれ±100mm、Z方向(垂直)には85±20mmまで許容する。共鳴周波数は85kHz。この周波数は、ノイズや高周波特性、入手しやすい部品などを考慮して決められている。

ダブルコイルを使うと、中心の位置で磁束が二つのコイル同士の結合により磁束密度が高まり、縦方向に磁力線が流れ、Z軸方向の距離を稼ぐことができるという。磁力が強まったことで、最初の製品と同じ面積で2倍の電力容量を得ることができた。QualcommはこのQualcomm Halo技術をライセンス供与する。すでにポーランドの伝送メーカーEfacec社やドイツのBrusa社に供与する契約を結んでいる。もちろん、まだ明らかにできない企業とも交渉しているようだ。

ON Semiconductorは、ヘッドライトの単なるオンオフ切り替えではなく、対向車にはライトがまぶしくならないように、対向車に当たる部位だけを暗くする技術をデモした(図4)。これは、これは1.2MピクセルのCMOSイメージセンサから対向車の画素データに合わせて、LEDアレイの中の画素に相当する部分のランプを消す(ショートさせる)という技術。スマートヘッドライトと呼んでいる。イメージセンサのデータとLEDアレイのデータを対応させ、リアルタイムにオンオフ制御するのにプロセッサが必要だが、デモではPCを利用している。


図4 ON Semiconductorのスマートヘッドライティングの試作ボード 対向車の位置をCMOSカメラの画素にマッピングしてその部分だけを暗くする

図4 ON Semiconductorのスマートヘッドライティングの試作ボード 対向車の位置をCMOSカメラの画素にマッピングしてその部分だけを暗くする


半導体メーカーではないが、EDAベンダーのMentor Graphicsは、クルマのエンジンノイズを減らすシステムをデモした(図5)。高級車ではエンジン音を減らすため鉄板で遮蔽しているが、その分重量が増す。このため、遮音版を設けなくても騒音を打ち消し合うようにマイク2台と開発ボードで位相を反転させた。加えて、スピーカーからの音のビームフォーミングによって、運転席で騒音が最も小さくなるようにしている。


図5 エンジン音を模擬してノイズキャンセルをMentor Graphicsがデモ 前方にある1台のスピーカーからエンジン音を出し、運転席のマイクでその音を拾い位相反転でノイズを打ち消し合う。手前の二つのスピーカーは打ち消し合う音とビームフォーミングにより運転席でエンジン音が最小になる


新日本無線も自動車分野に乗り出し、パワー半導体の熱抵抗を減らすための新しいリードフレームを展示した(図6)。PMAP(Power Mold Array Package)と呼ぶこのリードフレームにモールドすると、TO-220やTO-252等のパワートランジスタパッケージと同等の放熱性能を示すとしている。ティア1メーカーに提案しており、最近合格の評価を得たという。来年には量産できると見ている。


図6 新日本無線の新しいパワー半導体用パッケージ 複数のチップを1パッケージに搭載することも可能という

図6 新日本無線の新しいパワー半導体用パッケージ 複数のチップを1パッケージに搭載することも可能という

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