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地下街など衛星からの電波が届かない場所の測位実験にCSRが参加

衛星からの電波が届かない屋内や地下にいても歩行者の位置を検出する技術が開発されつつあるが、国土交通省が東京駅周辺でその実証実験を行った。間もなく、その結果が公表される計画である。

図1 SiRFusionを搭載したスマホを持ち八重洲地下街を歩く 出典:CSR

図1 SiRFusionを搭載したスマホを持ち八重洲地下街を歩く 出典:CSR


英国のファブレス半導体で、Bluetooth技術の大手CSR(旧Cambridge Silicon Radio)社は、昨年の11月、Android向けの測位情報を提供するソフトウエア開発キット、SiRFusionを発表したが、このほどそれを使い東京駅での実証実験に参加した。この実証実験は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け高精度な測位情報を活用した様々なサービスを実現するインフラ作りに役立てようとするもの。実証実験では、屋内外のシームレスなナビゲーションや避難誘導などのサービス実現に必要な、電子地図、測位環境、付加情報について15の企業と団体が参加・検証する。

このSiRFusionソフトウエアを組み込んだAndroid機で歩行の軌跡を見ることができる(図1)。実験では、東京駅周辺の地上を始点として、地下街を歩きながら、現在地を確認し、軌跡を描いていく。

GPSや最近のGNSS(全地球航法衛星システム)は、衛星からの信号を受けて、緯度・経度・高さなどを知るシステムであるが、衛星からの電波の届かない場所では測位できない。別の方法で現在地を知ることになる。SiRFusionに組み込まれた方法は、GPSに加えて、Wi-FiやBluetooth LE(low energy)ビーコン、MEMS加速度センサ、ジャイロセンサなどの情報を統合し、測位情報を計算するもの。

例えばWi-FiルータやBluetooth LEデバイスなどを決まった場所に設置しておき、それらにIPアドレスが割り振られていれば、スマホ保持者が今どのWi-Fi機器のそばにいるのかがわかる。それによってスマホの位置を求める。また、最初に地上にいれば、その位置情報からどのくらいの加速度や回転速度で通路を歩いているか、あるいは左右に曲がったかをMEMSセンサで検出する。スマホを持っている者の位置をずっと追跡していれば、GPSからの電波が入らない場所でもある程度、位置を測定できる。一つの情報だけではなく、Wi-Fi情報やBluetoothビーコン情報、MEMSセンサ情報などを総合的に加味して位置を算出する(図2)。実験での誤差は±6m程度だとしている。


図2 GNSS(全地球航法衛星システム)やワイヤレス技術を使った測位技術だけではなく、MEMSによる追跡、推測航法などをフル活用して位置を検出する 出典:CSR

図2 GNSS(全地球航法衛星システム)やワイヤレス技術を使った測位技術だけではなく、MEMSによる追跡、推測航法などをフル活用して位置を検出する 出典:CSR


測位情報を使ったサービスの一つとしてO2O(Online to Offline)がある。これは、インターネット(Online)を利用して実店舗(Offline)の売り上げにつながるサービスの一つ。例えば、スマホを持った客が店に入ると、それを検出し、本日の特別サービス案内やクーポンなどをスマホに配布する。あるいは、スマホ保持者の行動パターンを把握しておき、購買活動に入るまでの店舗の分析に使い、最適なレイアウトや物品の配列などを最適化する。その場合、スマホを検出するのに、Bluetoothビーコンを用いたり、Wi-Fiあるいは超音波(あるいは可聴周波数よりも高い音波周波数)を使ったりする。スマホをNFCでタッチするという手も提案されていたが、能動的にタッチしなければならず、消費者にはひと手間を要求していた。BluetoothビーコンやWi-Fi電波だと、その必要がなく、知らないうちにスマホに情報が届く。O2Oへのサービス応用が有望視されている。

CSRは、GPSシステム用半導体企業のSiRF社を2009年に買収、CSR社の得意なBluetooth技術やデジタルオーディオなどを合わせたソリューションを提案している。このCSRをQualcommが2014年10月に買収提案しており、この夏には決着する予定になっている。

(2015/02/18)

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