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Maxim、カーエレクトロニクスのアナログ市場を取りに行く

Maxim Integratedがカーエレクトロニクスに力を入れ始めた。これまで同社の高集積化指向(参考資料1)をクルマにも適用しようとしている。自動車市場ではMaximが得意なアナログ/ミクストシグナル半導体を使うべき分野は広い。9日には、SerDesチップを発表した。

図1 Maximオートモーティブソリューションズ部門マネージングディレクタのKen Robinett氏

図1 Maximオートモーティブソリューションズ部門マネージングディレクタのKen Robinett氏


Maximはアナログ/ミクストシグナル半導体メーカーとして、「7年前から、アナログを中心に製品を定義することを含めて、カーエレクトロニクスに進出することを真剣に検討してきた」と同社オートモーティブソリューションズ部門マネージングディレクタのKen Robinett氏(図1)は意気込みを語る。これから強化する自動車向け半導体をイメージするため、自動車の5年後の姿を捉え、それに必要な半導体を提案していく。特に力を入れる分野は次の三つだ。

1. CDプレイヤーに代わり、インターネット音楽を含めスマートフォンの音楽を聴くシステムになるインフォタインメントシステム
2. 高級車の代名詞になり、安全性も強化されるLED照明
3. 事故への心理的な不安を半減させるADAS(先進ドライバ支援システム)。全てのクルマに搭載され2018年までにバックモニターカメラが要求される

クルマ産業もモバイル産業に追いつきデジタル化されるとして、モバイルで実現できたことをクルマにも持ち込む。カーステレオやラジオはデジタル方式になり、ダッシュボードは液晶表示のメータに代わる。パワートレイン部分では、内燃エンジンからハイブリッドカーやEV、燃料電池車が増えていく。クルマに搭載されるECU(電子制御システム)モジュールは高級車では120個にもなるという(図2)。自動車の品質を高めるモチベーションは、家族や子供など人々の安全にある。


図2 クルマに搭載されるECU、それに必要な半導体は増加の一途をたどる 出典:Maxim Integrated

図2 クルマに搭載されるECU、それに必要な半導体は増加の一途をたどる 出典:Maxim Integrated


1のインフォタインメントシステムでは例えば、表示用大電流のDC-DCコンバータや、モバイルデバイスの充電用のUSBチャージャー、急速充電チャージャーなどのPM(power management)ICがある。2のLEDランプはテールライトからフロントライト、液晶パネルのバックライトなどに渡るLEDドライバの応用がある。将来のシステムとしてアダプティブな(adaptive)ハイビームとロービームの連続的な切り替えシステムなども考えられている。

3のADASに欠かせない、クルマの内外とのコネクティビティに関しては、映像やラジオは地域ごとに周波数帯や変復調方式の違いがあるため、ソフトウエア無線(SDR: software defined radio)によって、一つの半導体モデムをソフトウエアの交換だけで世界各地の放送に対応できるようになる。これに備えて、SDRチップそのものではなく、広帯域のRFとA-DコンバータとフィルタからなるRFチップ「MAX2173」を今年から量産化した。キーレスエントリ向けの送受信機、マイコン、イモビライザーなどを組み込んだキー側と送受信機と解読器、マイコンを搭載したクルマ側の機器に向けたターンキーソリューションを提供する。


図3 Maximは4台のカメラを模型のクルマに取り付け、画像処理ボード、AR(仮想現実)による車体を利用して、サラウンドビューを実現

図3 Maximは4台のカメラを模型のクルマに取り付け、画像処理ボード、AR(仮想現実)による車体を利用して、サラウンドビューを実現


車内の配線や伝送システムに使う、GMSL(gigabit multimedia serial link)SerDes(シリアル-パラレル変換IC)チップセットを4月9日に発表した。これからのクルマでは、クルマの上の視点から見るサラウンドビューモニター(図3)や、フロント/リアのカメラ、さらには中央のディスプレイ、映像音楽用の小さなディスプレイなど映像を伝送するシステムが増大する。少なくともチップやECUから外の伝送はできるだけ少ない数の配線を配置したい。重量を減らすためだ。このため、クルマの中でSerDesチップセットは多数使われることになる(図4)。


図4 複数のカメラとディスプレイでクルマは多数の高速シリアル伝送するようになる 出典:Maxim Integrated

図4 複数のカメラとディスプレイでクルマは多数の高速シリアル伝送するようになる 出典:Maxim Integrated


今回発表されたチップセットは、従来のシールドされたツイステッドペア配線と、これからの同軸ケーブルの両方を使うことができる。今後は重量が半減する同軸ケーブルになるという。ケーブル長は最大15mまで対応できる。さらにギガビット伝送できるため、24ビットのフルカラーで1920×720画素のディスプレイを駆動できる。この結果、見やすい画像で安全確認できるようになる。シリアライザには拡散スペクトル方式を使っているためEMIノイズの発生を抑えられる。

まだ、Maximのカーエレ市場のシェアは小さいが、カーエレには同社の得意な技術を活かせる分野が多く、今後の成長に期待している。

参考資料
1. マキシム、アナログの高集積化で成長を加速 (2012/09/25)

(2014/04/09)

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