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CEATEC 2013(2)〜センサとパワー、空間ディスプレイの展示に注目

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電子部品メーカーがさまざまなセンサを展示するだけではなく、そのセンサで何ができるかというソリューション提案が活発だったこともCEATEC 2013の特徴だろう。その他、大小はあるが電力を扱う製品もあり、何もない空間に画像映像を映し出すアスカネットの新型ディスプレイは実応用に一歩近づいた。

図1 京セラの振動スピーカー

図1 京セラの振動スピーカー


京セラは、細長い板状の圧電素子をテーブルやガラスなど広い平面に張り付けることで音を出すスピーカーを開発した(図1)。展示した試作品はピエゾアクチュエータに電極を付けたもの。張り付けたガラスなどの表面を垂直に振動させることで、音を出す。京セラは利用シーンとして、リビングルームやお風呂場、会議室などにあるテーブルやガラスなどを想定している。薄い平面さえあれば何でもスピーカーに早変わりする。

NECトーキンは、圧電素子を薄いメンブレンに張り付け、重りも加えて慣性力を増した、ピエゾアクチュエータを開発、これとスマホにギターのアプリを加え、音を出すと共に音の振動を手にも伝わるようにした。手に振動が感じることから、ハプティクス(触覚学)・アクチュエータと呼んでいる。円筒状の新しいゴミ箱の底につけると、京セラの圧電アクチュエータと同様、スピーカーとして音を出すことができる。静電容量は1kHzの交流を加えた時に960nFである。

スピーカーの逆に、振動素子をセンサにするとマイクロフォンになる。MEMSマイクの大手として世界的に知られるKnowles(ノウルズ)社は、感度のバラつき(公差)が±1dB以下というMEMSマイクを展示した(図2)。最近のスマホやタブレットは、音響の良さだけではなく、ノイズキャンセラとして2個以上のマイクを使うケースが増えている。これは周囲の騒音を打ち消すことで音声認識率を上げるためだ。これまではMEMSマイクの特性バラつきが大きいため、選別して感度の揃ったチップを選んできた。これではコストが上がってしまう。この製品は選別せずに実力値としてバラつきが少ないため、安く作れるというメリットがある。


図2 KnowlesのMEMSマイクは感度バラつきが小さい 写真左下のグラフが公差の少なさを示している

図2 KnowlesのMEMSマイクは感度バラつきが小さい 写真左下のグラフが公差の少なさを示している


ミツミはMEMS圧力センサを利用して気圧を測定、高度差わずか17cmという分解能の高度計を実現した。GPSと組み合わせると、どのビルの何階にいるという高さの情報がわかる。スマートフォンの新機能として、圧力センサをGPSに組み込むことで、2次元的な平面情報だけではなく高さも計測できるという応用が次世代機に搭載されることが海外で噂されている。

CEATECでは、他にも村田製作所のMEMS利用の流量センサで0~10m/秒の流量計として呼吸器や麻酔器の制御に使えると提案した。アルプス電気は、2.45GHzの電波を発射して患者の体に反射してくる電波を検出して、患者が寝返りを打ったり、起き上がったり、あるいは抜け出したりする様子をチェックするシステムを提案中だ。超音波診断装置のセンサ部分を開発してきた日本電波工業(NDK)は、超音波センサで筋肉・脂肪の量を計測するというシステムを提案している。


パワー分野でも進展
パワー半導体ではロームが、SiC MOSFETを使ったインバータは同じ容量のSi IGBTによるインバータの1/4の体積で作製できることを示した(図3)。MOSFETの方がオンからオフにスイッチするときの少数キャリヤの蓄積時間がない分、高速スイッチングができることにより、インダクタンスやキャパシタンスが小さくて済むというメリットによる。


図3 ロームが展示したSiCパワーMOSFETを使ったインバータ(左の箱) 従来のSi IGBTを使ったインバータ(右の箱)の1/4の大きさ

図3 ロームが展示したSiCパワーMOSFETを使ったインバータ(左の箱) 従来のSi IGBTを使ったインバータ(右の箱)の1/4の大きさ


ロームは安全性の高い燃料電池を開発した。燃料電池は電気を溜める電池ではなく、水素と酸素の反応により電気を作る発電機である。ロームは、固体に水素を閉じ込める水吸蔵樹脂を独自に開発した。この水素吸蔵樹脂は、水と反応すると水素を発生する粉末を多孔質の樹脂で固めたもの(図4の右)。この樹脂をシート状に加工し、安全な容器(図4の左)に入れておく。この樹脂を水と反応させ発生した水素を燃料電池に送り込むことで、発電する。ガスボンベの大きさの容器でスマホなら40回フル充電可能だという。


図4 ロームが開発した水素吸蔵樹脂(右)とそれを入れた容器(左のボンベ)

図4 ロームが開発した水素吸蔵樹脂(右)とそれを入れた容器(左のボンベ)


ミツミは、ワイヤレス給電システムも作り提案した。今回試作したワイヤレス充電器は独自仕様だが、標準規格となっているQi(チー)では、スマホや携帯電話に位置がわずかずれると充電できない、という問題があったとミツミはいう。このため置く自由度をもっと広げたい問の思いで、今回の充電器の仕様を標準化するため、他のメーカーと話し合いを始めているという。

トヨタもワイヤレス充電機を作り展示した。自動車の充電では、家庭用の50Hz、60Hzの交流をそのまま使うのでは体積が大きくなるため、共に85kHzという高周波に変換し、1次コイルから2次コイルへと磁界を共有することで電力を伝送する。この周波数コンバータ方式を世界標準規格に向けて、海外メーカーと一緒に規格作りを始めているという。トヨタの担当者は「CHAdeMO(日本独自の充電方式)の二の舞にはなりたくない」と海外メーカーとの共同作業を重視する。


図5 トヨタが提案するワイヤレス給電装置 クルマの後ろにあるブルーがワイヤレス充電器で、右側柱に設置された濃いブルーの箱が周波数変換器

図5 トヨタが提案するワイヤレス給電装置 クルマの後ろにあるブルーがワイヤレス充電器で、右側柱に設置された濃いブルーの箱が周波数変換器]


その他、アスカネットは空間結像ディスプレイ(参考資料1)を使った入力デバイスを試作した(図6)。このディスプレイは細かい格子状のミラーを積み重ねて構成したもので、空間に像を結ぶことができる。今回は動画やアニメを表示し、入力ボードを空間に映し出すデモを行った。昨年とは違い、人だかりは多かった。


図6 アスカネットが提案する空間表示入力パネル 画面は空間に表示されており、筆者が右側のテンキーを1,2,3と押す(物理的にはどこにも触れていない)と、左に数字が入力された

図6 アスカネットが提案する空間表示入力パネル 画面は空間に表示されており、筆者が右側のテンキーを1,2,3と押す(物理的にはどこにも触れていない)と、左に数字が入力された

今回の部品メーカーの提案型展示を紹介したが、逆に、ただ単に部品を展示しているだけのシーズ型の企業は、もはや時代に置いて行かれるかもしれない。


参考資料
1. 広島市のアスカネット、CEATECで空間に映像・画像を映し出す (2012/10/10)

(2013/10/08)

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